スーパーで卵のパックを手に取ると、「生食用」「10℃以下で保存することが望ましい」といった小さな文字が並んでいます。読み飛ばしがちな一行ですが、卵かけご飯の店が卵のことをあれこれ書く気持ちは、ここを読むと少し分かる気がします。
材料は卵と炊いたご飯と醤油だけ。足し算のしようがない料理なので、専門店の工夫は卵の産地、米の品種と炊き方、醤油の種類に出ます。店を比べるときの見方は、パックの表示の読み方とつながっています。
店で見るところ
- 卵の情報:産地や飼育の仕方、入荷日が品書きや店内に書いてあるか
- 米:品種、炊きたてかどうか、炊き方(土鍋など)
- 醤油:何種類かから選べるか
- トッピング:海苔、薬味、しらすなど、どこまで足せるか
- 形式:単品か、汁物や副菜のついた定食か
| 店のタイプ | 力の入れどころ | 向いている日 |
|---|---|---|
| 卵で勝負する店 | 産地や飼育の仕方を書き、何種類かを食べ比べられることもある | 卵の味の違いを確かめたい |
| 米と炊き方で勝負する店 | 品種や炊きたてにこだわる | ご飯の甘みや食感を楽しみたい |
| 醤油の選択肢が多い店 | 専用の醤油を何種類か用意 | 組み合わせを試したい |
| トッピングの多い店 | 薬味や具で味を変えられる | 一杯の中で変化がほしい |
| 定食の店 | 汁物や副菜とセット | しっかり一食にしたい |
価格は素材や形式で大きく違うので、各店の品書きで確かめてください。どのタイプがいいかは好みですが、初めての店なら、卵の産地や入荷日をどこまで書いているかを先に見ると、店の力の入れどころが読みやすいです。
パックの小さな文字の意味
食品表示基準(内閣府令)は、生食用の殻付き鶏卵に、「生食用」や「生のまま食べられます」など生食用である旨を示す文字と、「10℃以下で保存することが望ましい」の文言等、それから「賞味期限経過後は、十分に加熱調理する必要があります」の文言等の表示を求めています。
| パックの表示 | 読み方 |
|---|---|
| 「生食用」「生のまま食べられます」 | 生で食べることを前提にした卵 |
| 「10℃以下で保存することが望ましい」 | 冷蔵が前提 |
| 「賞味期限経過後は、十分に加熱調理する必要があります」の文言等 | 期限内は生で食べられ、過ぎたら加熱するという線引き |
三つを並べて読むと、生食用の殻付き卵の賞味期限は「生で食べるならここまで」の線として読めます。期限を過ぎたら十分に加熱する、という表示がついているからです。店が入荷日や保管の仕方を書いているなら、この線引きを意識しているのかもしれません。
家で作るなら、パックに「生食用」とあることと期限を見て、買ったらすぐ冷蔵庫へ。期限を過ぎた卵は十分に加熱してから食べる。賞味期限は、食品表示基準の定義では、定められた方法で保存した場合に品質の保持が十分に可能と認められる期限です。
ちなみに、食品表示基準は第1条のただし書きで、設備を設けて飲食させる場合を一部の規定を除いて適用の外に置いています。店が卵の産地や入荷日を書いているのは、この基準の義務というより、店の判断と考えてよさそうです。書かなくてもいいことを書く店は、それだけ卵に言いたいことがある店だろうと思います。
LとMで何グラム違うか
品書きに「Lサイズの卵を使用」と書く店もあり、このLやMは農林水産省の告示「鶏卵の規格」の別表第一で、重さの区分として決められています。
| 名称 | 1個の重さ |
|---|---|
| LL | 70g以上76g未満 |
| L | 64g以上70g未満 |
| M | 58g以上64g未満 |
| MS | 52g以上58g未満 |
| S | 46g以上52g未満 |
| SS | 40g以上46g未満 |
区分の幅はどれも6gで、LLの上限とSSの下限では1個あたり36gほどの差です。卵かけご飯は卵1個にご飯1杯なので、同じ茶碗でも卵の大きさで濃さが変わるはずです。店がサイズを書くのは、その差を気にする客がいるからでしょう。
同じ告示には、取引用の箱(正味9.5〜10.5kg)の外装に区分の名前を表示するときの決まりもあります。別表第二の品質の基準に合う卵が個数で80%以上入っていて、表示した区分に当たらない卵が10%以下であること、という条件です。箱にLと書いてあっても中の1個1個が必ず64g以上とは限らない余地が、告示の側に残されているわけです。
この告示は取引される鶏卵の規格を定めたもの。スーパーのパックのLやMも同じ呼び方ですが、店で使う卵の大きさが品書きに書いてあるとは限らないので、気になるなら店で聞いてみてください。
東京都区部の家は、卵を買う量が少なめ
総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)で2023年から2025年の平均を見ると、1世帯が1年に買う卵は全国平均で30,572g、支出は13,027円です。東京都区部は26,395gで、対象の52市の中で50位。支出は12,450円で40位でした。
| 地域 | 年間の購入量 | 年間の支出額 |
|---|---|---|
| 全国平均 | 30,572g | 13,027円 |
| 東京都区部 | 26,395g(52市中50位) | 12,450円(52市中40位) |
| 購入量1位 鳥取市 | 36,349g | 15,262円 |
| 支出額1位 高知市 | 32,306g | 15,431円 |
Mサイズを1個60gとして割り算すると、全国平均は年に約510個、東京都区部は約440個です。買った量の統計なので、店で食べる分をどう考えるかは別です。区部の購入量が少ない理由も、この統計からは分かりません。家で卵をあまり買わない街に、外で卵を食べる店がある。それだけ見ると話がつながっているようにも見えますが、統計がそこまで言っているわけではありません。

写真は荻窪の本むら庵の卵とじそばです。卵かけご飯ではありませんが、家で卵を買わなくても外で卵料理を食べる機会はある、という例として載せておきます。
アレルギーがある人は店に直接
先に書いたとおり、設備を設けて飲食させる店の料理は、一部の規定を除いて食品表示基準の適用の外にあります(第1条)。卵を主役にした店なので、卵のアレルギーがある人が利用するのは難しいことが多いはずです。それでも確かめたいことがあれば、来店前に店に直接聞いてください。ここに書いたことは医学的な助言ではありません。
卵かけご飯の店で聞かれそうなこと
卵かけご飯専門店を選ぶとき、一番見るべき点は何ですか
卵の産地や飼育の仕方、入荷日などの情報をどこまで出しているかです。店で出す料理は食品表示基準の適用の外にあることが多いので、どこまで書くかに店の考えが出ます。
卵の賞味期限が過ぎたら食べられませんか
食品表示基準では、生食用の卵に「賞味期限経過後は、十分に加熱調理する必要があります」の文言等の表示が求められています。期限を過ぎたら生では食べず、十分に加熱して食べてください。
卵はどう保存すればよいですか
生食用の卵には「10℃以下で保存することが望ましい」の文言等の表示が求められています。買ったらすぐ冷蔵庫に入れてください。
卵のLサイズとMサイズは何グラム違いますか
農林水産省の告示「鶏卵の規格」では、Lは64g以上70g未満、Mは58g以上64g未満です。区分の幅はどちらも6gです。
醤油はどう選べばよいですか
何種類かある店なら、少しずつ試して卵やご飯との相性を確かめると好みが見つかりやすくなります。一杯目は店が勧める醤油にしておくと、比べる基準ができます。
トッピングはどのくらい足してよいですか
足しすぎると卵の味が分かりにくくなります。何も足さずに食べてから加えていくのがおすすめです。卵の違いが分かりやすくなります。
卵アレルギーがある場合はどうすればよいですか
卵を主役にした料理なので、利用は難しいことが多いはずです。店で出す料理は食品表示基準の適用の外にあることが多いため、確かめたいことがあれば来店前に店に直接聞いてください。
一杯の見え方が変わる
店の工夫がどこにあるかは、卵の産地の書き方、米、醤油、トッピングで分かれます。パックの小さな文字の意味を知っていると、店が入荷日や保管の仕方を書く理由も読めるようになります。それが分かるだけで、同じ一杯が少し違って見えるはずです。
出典
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第1条ただし書き、第2条の賞味期限の定義、別表の鶏の殻付き卵の項(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- 農林水産省告示「畜産物の価格安定に関する法律施行規則の規定に基づく鶏卵の規格」別表第一(重量区分)、箱の外装の表示の基準(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/kokuji_tuti/kokuji/k0000481.html
- 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)」乳卵類 卵(2026年11月3日確認) https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html
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