「ピンの位置が違うと言われ、配達されなかった」。国民生活センターに寄せられた相談の一つです。アプリで料理を選んで支払いまで済ませたのに、届かない。しかも代金は請求される。手軽さの裏で起きるのは、たとえばこの種の行き違いです。
同じ資料には「折り返したのに連絡が取れず、キャンセルになって費用も請求された」という相談もあります。どちらも料理の味とは関係がなく、注文の画面と電話の扱いに関わる話です。防ぎ方は、国民生活センターと厚生労働省の資料にかなり具体的に書かれています。
相談は年600件台で続いている
国民生活センターが2024年11月6日に公表した資料によると、インターネットで注文する食事宅配の相談は2020年度に急増し、その翌年度以降は年600件台で推移しています。公表は2024年なので、それ以降の件数はこの資料からは分かりません。便利に使う人が増える一方で、行き違いも一定数ある、と読むくらいがよさそうです。
資料は、ネットで注文する1回限りの食事宅配を、飲食店が用意したサイトやアプリから頼む形と、フードデリバリー専用のサイトやアプリから頼む形の二つに分けています。このほかに定期コースがあり、こちらは注文の前に、1回で配達される個数や購入回数、注文の変更・解約の条件を確かめるよう勧めています。
| 頼み方 | 注文の入口 | 困ったときの連絡先 |
|---|---|---|
| デリバリー専用のアプリ・サイト | 運営事業者のアプリやサイトから、複数の店の料理を選ぶ | アプリ内の運営事業者の窓口 |
| 飲食店のサイト・アプリ・電話 | 店に直接頼む | 店 |
| 定期コース | 決まった回数で届く契約を結ぶ | 販売事業者。個数・回数・解約条件を先に確かめる |
注文の画面でやること
国民生活センターのアドバイスを、使う順番に並べると次のようになります。
- 住所は、マンション名などの建物名と部屋番号まで正確に入れる
- 建物の外観や入口の場所など、補足を書ける欄があれば書く
- 地図上のピンが住所と合っているか確かめる。ずれていたら必ず直す
- 置き配か対面かを指定して、確定の前にもう一度見直す
ピンの位置は、よく見ないまま進めてしまいがちです。隣の建物や裏の通りに立っていても、画面の上では気づきにくいと思います。冒頭の相談も、このピンの話です。
注文したあとにやること
- 配達員からの電話やメッセージには必ず応じる。出られなかったらすぐ折り返す
- 対面受け取りにしたら、すぐ受け取れるようにして待つ
- 置き配にしたら、到着の知らせに気づける状態にしておく
国民生活センターによると、一定時間内に連絡がつかない、受け取れないといった場合はキャンセルになり、代金も請求されることがあります。電話に出られなかったら、すぐ折り返す。同じ資料が勧めている、いちばん手軽な備えです。
知らない番号からの電話に出ない習慣の人は、注文した日だけは例外にしたほうがいいと思います。配達員の番号は、普段の連絡先には入っていないからです。
届いたらすぐ食べる理由
厚生労働省は、テイクアウトやデリバリーでは調理してから食べるまでの時間が長く、気温の高い時期は特に食中毒のリスクが高まると注意しています。店に向けた呼びかけとして、次の点を挙げています。
| 項目 | 厚生労働省の呼びかけ |
|---|---|
| 菌が増えやすい温度 | 食中毒菌は20〜50℃の温度帯でよく増える |
| 調理後の管理 | 調理した料理は速やかに10℃以下に冷やすか、65℃以上で保つ |
| 提供を控える料理 | 半熟の卵やレアの肉の提供は控える |
| 客への伝え方 | 速やかに食べるよう伝える |
この呼びかけを客の側に引き寄せると、できることは受け取ったらなるべく早く食べること、すぐ食べない分は冷蔵庫に入れることの二つだと思います。置き配を選ぶなら、外に置かれる時間が長くならないよう、到着の通知を見逃さない工夫が要ります。
配達料と税率の見方
アプリでは料理代のほかに配達料やサービス料がかかることがあり、仕組みはサービスごとに違います。注文を確定する前に、合計額の内訳を一度見てください。月額の会員制度があるサービスなら、使う回数と会費を比べて決めることになります。
税率については、国税庁の案内で、テイクアウトや飲食料品の出前・宅配は軽減税率(8%)の対象とされています。酒類は対象外です。外食かテイクアウトかは、飲食料品を提供する時点で客に意思を確かめるなどの方法で判定する、という考え方です。8%で済むのは飲食料品の話なので、配達料やサービス料まで同じだと決めつけず、合計額の内訳で確かめてください。
市場は一度減って、また増えた
外食・中食の市場調査を行うサカーナ・ジャパンによると、2025年のデリバリー(出前)市場規模は8,240億円の見込みで、前年比2.0%増、コロナ前の2019年比では97.0%増でした。外食(イートイン)が成長する中で、デリバリーの売上は2024年に一度減り、2025年に再び増えたとしています。
見込みの数字ですが、2019年の二倍近い規模で推移している、という見方はできそうです。急に増える時期は過ぎて、使う日と使わない日を決めて付き合う段階に入ったのかもしれません。
同じ料理でも、受け取り方で総額が変わることがある
配達料を払ってでも頼む日と、自分で取りに行く日。テイクアウトを選べる店なら、同じ商品でも受け取り方で総額が違うことがあります。比べ方はデリバリーとテイクアウト、どちらが得かに書いてあります。
どの料理を頼むかは自分の基準で
汁物や麺類は運ぶ間に偏ったり、時間がたって食感が変わったりしやすいと感じる人は多いと思います。丼物や弁当のほうが崩れにくそう、揚げ物は届いたらすぐ食べたい、という声もありそうです。ここは好みの話なので、気にしない人は気にしなくていいところです。
ただ、厚生労働省の温度の話は好みと関係がありません。何を頼むにしても、届いたら早く食べる。これだけは共通です。
トラブルのときに知りたいこと
料理が届かないのにキャンセルされ、代金を請求されました
国民生活センターには同じような相談が寄せられています。デリバリー専用アプリで頼んだ場合は、アプリから運営事業者に連絡すると対応が早い可能性があります。解決しなければ、消費者ホットライン188(いやや!)番が相談先です。
注文のときに一番気をつけることは何ですか
住所を建物名と部屋番号まで正確に入れ、地図のピンの位置が合っているかを確かめることです。ずれていたら必ず直してください。
配達員からの電話に出られなかったらどうなりますか
一定時間内に連絡がつかないとキャンセルになり、代金も請求されることがあります。出られなかったらすぐ折り返してください。
注文と違う料理が届いたらどこに連絡しますか
デリバリー専用アプリで頼んだ場合は、アプリから運営事業者に連絡すると対応が早い可能性があります。店に直接頼んだ場合は店に連絡します。
届いた料理を後で食べてもよいですか
厚生労働省は店に向けて、テイクアウトやデリバリーの料理は速やかに食べるよう客に伝えることを呼びかけています。すぐ食べない分は冷蔵庫に入れておくと安心です。
配達料はどう決まりますか
サービスごとに仕組みが違います。注文を確定する前に、合計額の内訳を確かめてください。
配達員へのチップは必要ですか
設定できるサービスがあるとしても、扱いはサービスごとに違います。各サービスの案内を確かめてください。
注文ボタンを押す前に
建物名と部屋番号、ピンの位置、置き配か対面か。確定の前にこの三つを見直して、注文したあとは電話に出る。届いたら早く食べる。困ったらアプリから運営事業者へ、だめなら188。手順はこれだけなので、覚えてしまえばそう難しくありません。
デリバリーだけで営業する店の仕組みは中央線沿線で広がるフードデリバリー専門店という業態に書いてあります。
出典
- 国民生活センター「インターネットで注文する食事宅配に関する消費者トラブル-便利に使うために気を付けたいこと-」(2024年11月6日公表。相談件数の推移、相談事例、アドバイス、定期コースの確認点、消費者ホットライン188。2026年11月3日確認) https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20241106_2.html
- 厚生労働省「テイクアウト・デリバリーにおける食中毒予防」(20〜50℃、10℃以下・65℃以上、半熟卵・レア肉、速やかに食べる呼びかけ。2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00003.html
- サカーナ・ジャパン「2025年のデリバリー市場規模は8240億円の見込み」(2025年12月17日公表。2026年11月3日確認) https://www.npdjapan.com/press-releases/pr_20251217/
- 国税庁 軽減税率制度の案内(出前・宅配は軽減税率の対象、酒類と外食の除外、外食かテイクアウトかの判定。2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0018006-112.pdf
沿線の飲食店の動きを追う記事
家賃や再開発、営業時間の変化など、店の側の事情を扱った記事です。