会食の店を決める役が回ってきたとき、先に見るのは料理の写真ではなくて、個室があるかと、一人いくらで収まるかだと思います。相手に気持ちよく過ごしてもらうための店選びは、味の話より段取りの話のほうが多い。
その段取りの中に、もう一つ数字が入ってきます。国税庁の案内にある、得意先などとの飲食費が一人10,000円以下なら交際費等から除かれる、という線です。2024年4月1日以後の支出からこの額になりました。この線を知っているかどうかで、予約の電話で聞くことが一つ増えます。
予約の電話で聞いておくこと
| 確かめる項目 | 聞き方 | 聞いておく理由 |
|---|---|---|
| 個室の形 | 完全個室か、仕切りで区切る半個室か | 話の内容が隣に聞こえるかどうかが変わる |
| 店内の音 | 音楽や隣の席の声はどの程度か | 込み入った話ができるか |
| コースの時間 | 時間制か、料理の出る間隔はどれくらいか | 終わりの時刻を読めるか |
| 一人あたりの金額 | コースと飲み物を含めていくらか | 予算と税務上の線の両方に関わる |
| 支払いと領収書 | カードが使えるか、領収書に店名と所在地が入るか | 書類に飲食店の名称と所在地を書く必要がある |
| 駅からの道 | 徒歩でどれくらいか、雨の日に案内しやすいか | 相手を迷わせない |
六つ全部を電話で聞いても、長くはかかりません。予約のときに聞いてしまうほうが、当日に慌てるより楽です。店の人がこの手の質問に慣れているかどうかも、そのときの受け答えで分かります。
相手と目的で優先順位が変わる
初めて取引が始まる相手や目上の人を招くなら、個室の形と静かさをいちばん上に置きたい。社内の慰労を兼ねた食事や、気心の知れた相手なら、多少にぎやかでも料理の満足度で選ぶほうが喜ばれることもあります。
相手の食の好みやアレルギー、宗教上の決まりがあるときは、コースの一部を変えてもらえるかを先に相談します。ここで柔軟に応じてくれる店は、当日の細かい頼みにも応じてくれることが多い気がします。
個室は完全個室と、ふすまや仕切りで区切る半個室とで、話せる内容が違います。守秘の要る話をするなら完全個室。顔合わせや懇親が目的なら半個室でも十分です。どちらの形かを予約のときに確かめておかないと、当日に「個室と聞いていたのに」という食い違いが起きます。
立地は、駅からの距離だけで決めないほうがいいと思います。雨の日に傘をさして歩く道か、屋根のある道か。帰りにタクシーを拾いやすい通りか。相手を案内する側の目で一度歩いてみると、地図では見えないことが分かります。
予算は一人あたりで先に決める
総額から入ると、人数が変わったときに計算し直すことになります。一人いくらまでと決めて、その範囲でコースを組める店を探すほうが実務的です。飲み物の量で総額は大きく動くので、飲み放題をつけるか、飲み物は都度頼むかもこのときに決めておきます。
予算を店に伝えると、コースの中身を相談しやすくなります。遠慮して伝えないまま進めるより、最初に数字を出してしまうほうが、店も提案しやすいはずです。
一人10,000円の線
国税庁のタックスアンサーNo.5265によると、得意先などとの飲食費のうち、支出する金額を飲食に参加した人の数で割った金額が10,000円以下のものは、交際費等から除かれます。令和6年(2024年)3月31日以前に支出した飲食費については、この基準額は5,000円以下でした。
| 支出の時期 | 一人あたりの基準額 |
|---|---|
| 2024年3月31日以前 | 5,000円以下 |
| 2024年4月1日以後 | 10,000円以下 |
ただし、専らその法人の役員や従業員、その親族のための接待は、この除外の対象から外れています。社内だけの食事会にこの線は使えません。
もう一つ、この除外は次の事項を書いた書類を保存している場合に限って適用されます。
- 飲食のあった年月日
- 参加した得意先などの氏名または名称と、自社との関係
- 参加者の数
- 費用の額、飲食店の名称と所在地
- その他必要な事項
10,000円の判定と交際費等の額の計算は、法人が税抜経理方式と税込経理方式のどちらを採っているかによって算定した価額で行います。同じ会計の金額でも、会社の経理方式しだいで線のどちら側になるかが変わることがあるので、経理の担当者に先に聞いておくのが安全です。
予約のときに聞く数字が一つ増える
コースと飲み物を含めた一人あたりの金額を予約時に確かめ、領収書に店の名称と所在地が入るかも聞いておくと、あとで書類を作る手間が減ります。
資本金1億円以下の法人の交際費
租税特別措置法第61条の4は、法人が平成26年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に開始する各事業年度に支出する交際費等について定めています。事業年度末の資本金が1億円以下の法人は(資本金5億円以上の法人の100%子法人などは除かれます)、損金不算入額を次のどちらかにすることができます。
- 交際費等の額のうち、接待飲食費の額の50%に相当する金額を超える部分
- 定額控除限度額(800万円に事業年度の月数を乗じて12で割った額)を超える部分
どちらが有利かは、その年の交際費の総額と、そのうち飲食費がいくらかで変わります。会社の数字を見ないと決められないので、ここは税理士や所轄の税務署に確かめる話です。店を選ぶ側でできるのは、一人あたりの金額をつかんで、書類の五項目がそろうようにしておくところまでです。会社ごとの条件や個別の判断は、税理士か税務署に確かめてください。
当日に困る例
- 個室と聞いていたら仕切りだけの半個室で、隣の声が聞こえた。予約のときに形を確かめる
- 時間制のコースで、話が盛り上がったところで退店を促された。時間制かどうかを先に聞く
- 飲み物を都度頼んだら、一人あたりの金額が予算を超えた。飲み放題か都度かを決めておく
- 領収書に店の所在地が入っておらず、書類を作るときに調べ直した。領収書の記載を予約時に聞く
- 雨の日に駅からの道が分かりにくく、相手を待たせた。道順を前もって共有する
予約の前に引っかかること
接待の店は何日前に予約すべきか
個室の数は限られるので、日程が決まったらすぐに予約して、個室の確保を優先するのがよいです。人数と、完全個室か半個室かの希望も、その時点で伝えておきます。
予算はどのくらいを目安にすればよいか
相手と会の重さで決めるものです。税務上は、2024年4月1日以後の支出なら一人あたり10,000円以下の飲食費が、書類を保存することで交際費等から除かれます。この線を一つの目安に、コースと飲み物を含めた一人あたりの金額で考えると組み立てやすいです。
個室がない店でも接待に使えるか
気心の知れた相手なら、奥まった席や半個室のある店でも十分です。守秘の要る話をする予定があるなら、完全個室のある店を優先したほうが安心です。
領収書はどの店でも発行してもらえるか
宛名や但し書きの書き方は店によって違います。交際費等から除くための書類には飲食店の名称と所在地が要るので、領収書に店名と住所が入るかを予約のときに確かめておくと手間が減ります。適格請求書が必要な場合の要件は、会社の経理か税理士に聞いてください。
大人数の接待に向いた業態はあるか
大きな卓を囲める店や、宴会用の広い個室を持つ店は大人数に対応しやすいです。人数が多いときは、貸切ができるかどうかも合わせて聞いておくと選びやすくなります。
雨の日でも案内しやすい店を選ぶコツは
駅から近く、地下や屋根のある道で行ける店を候補に入れておくと、天気に左右されにくくなります。道順を前もって相手に共有しておくと、当日の連絡が減ります。
アルコールが苦手な相手がいる場合はどうすればよいか
ノンアルコールの飲み物やソフトドリンクの品数が多い店を選ぶと、相手に気を遣わせずにすみます。予約のときに相談しておくと、当日の対応が早いです。
接待に不向きな店の特徴は
席の間隔が狭くて隣の声が届く店や、ほかの客と肩が触れるほど近いカウンターの店は、込み入った話をする場面では避けたほうが無難です。にぎやかさが持ち味の店は、懇親の会に取っておくのがよいと思います。
二次会を設定する場合はどう考えればよいか
一次会の店から歩ける距離で、落ち着いて話せる店を一つ押さえておくと、移動の負担が少なくてすみます。行くかどうかは当日の流れで決めればよいので、予約は人数の融通が利く店が向いています。
電話をかける前に
個室の形、音、コースの時間、一人あたりの金額、領収書、道。予約の電話で聞くのはこの六つで、そこに一人10,000円という線と、書類の五項目を重ねておく。あとは相手の顔を思い浮かべながら、静かな店がいいのか、にぎやかでも楽しい店がいいのかを決めるだけです。店選びの正解は相手の数だけあるので、迷ったら段取りの側を固めておくと、当日に余裕が残ります。
出典
- 国税庁 タックスアンサーNo.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(令和8年4月1日現在法令等。飲食費の一人10,000円以下の基準と令和6年3月31日以前の5,000円以下、保存する書類の記載事項、役員・従業員等のみの接待の除外、税抜経理・税込経理による判定)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
- 租税特別措置法 第61条の4第1項、第2項(平成26年4月1日から令和9年3月31日までに開始する各事業年度の交際費等、接待飲食費の50%、資本金1億円以下の法人の定額控除限度額800万円と除外される法人)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026
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女子会、子連れ、カフェでの仕事、個室、宴会と、同行者や目的ごとに店を探す記事です。