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日本酒が飲める店の選び方|銘柄の入れ替えと保管、特定名称酒の基礎知識

日本酒の品書きが一枚に収まらない店があります。銘柄の名前がずらりと並んで、どれを頼めばいいのか分からなくなる。あの圧倒される感じは嫌いではないのですが、店を選ぶ手がかりとしては、銘柄の数よりも先に見ておきたいところが二つあります。品書きがどのくらい入れ替わるかと、酒がどこに置いてあるかです。

そのうえでラベルの言葉が少し読めると、知らない銘柄でも方向の見当がつくようになります。国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で決まっている言葉と、そうでない言葉の区別がつくだけで、品書きの眺め方はだいぶ変わります。

品書きの動きと酒の置き場所を見る

力の入れ方が見えやすいのは、品書きが動いているかどうかです。季節の酒が入ったときに品書きが書き換わる店と、何か月も同じ顔ぶれの店では、酒の回り方が違います。どちらが悪いという話ではなくて、新しいものを追いかけたい日には前者が向いている、というだけのことです。

聞いてしまうのがいちばん早い
「今月のおすすめは」「季節のものは入っていますか」と一言たずねてみてください。答えが具体的な店なら、産地や造り方まで話を聞けることがあります。答えが出てこない店が悪いわけではありませんが、相談しながら選びたい日には物足りないかもしれません。

置き場所のほうは、目で確かめられます。カウンター越しに冷蔵ケースが見える店なら、どんな瓶がどう並んでいるかが分かるはずです。奥の見えないところから出てくる店でも、頼んだ酒が冷えて出てくるか、燗の器で出てくるかで、店の考え方が少し見えることもあります。

西荻窪の田毎のカウンターに置かれた小瓶の日本酒とグラス
西荻窪の田毎の日本酒

上の写真は西荻窪の田毎の日本酒です。カウンターに置かれた小瓶のラベルに店の名前が入っていて、小さなグラスが添えてあります。品書きの銘柄から選んで注いでもらう店もあれば、こうして瓶のまま出てくる形もあるわけです。出し方は店ごとに違うので、これはあくまで一例として見てください。

店の形で使い分ける

型 こんな店 向いていそうな日
銘柄を多くそろえる店 品書きが長く、入れ替えも多い 知らない酒に出会いたい日
燗を得意にする店 温度を変えて出してくれる 寒い日、ゆっくり飲みたい日
料理が主役の店 酒は料理に合わせて数種類 食事をしっかり取りたい日
立ち飲み・小さなカウンター 一杯ずつ頼んで短く済ませる 仕事帰りの一杯

一つの店が二つの型を兼ねることは普通にあるので、きっちり分けるより「どちら寄りか」で見れば十分です。初めての店なら、飲み比べのセットがあるかどうかも先に見ておくと、少量で何種類か試せて好みの見当がつきます。純米と吟醸と本醸造を並べて出す店なら、次の節の違いを舌で確かめる練習にもなります。

ラベルの言葉には決まりがある

純米、吟醸、本醸造。この言葉は国税庁の「清酒の製法品質表示基準」で定められた特定名称で、要件を満たした清酒にだけ表示できます。特定名称は原料や製造方法の違いで8種類に分かれていて、見分けるときに目が行くのは、醸造アルコールを使うかどうかと精米歩合の二つです。吟醸造りかどうかや香味の要件も、下の表のとおり分かれ目になります。

精米歩合は、白米のその玄米に対する重量の割合のことです。国税庁の説明では、精米歩合60%というときには玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。数字が小さいほど多く削っている、と覚えておくと読みやすいです。

特定名称 使用原料 精米歩合 香味等の要件
吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
大吟醸酒 米、米こうじ、醸造アルコール 50%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
純米酒 米、米こうじ 規定なし 香味、色沢が良好
純米吟醸酒 米、米こうじ 60%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が良好
純米大吟醸酒 米、米こうじ 50%以下 吟醸造り、固有の香味、色沢が特に良好
特別純米酒 米、米こうじ 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好
本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 70%以下 香味、色沢が良好
特別本醸造酒 米、米こうじ、醸造アルコール 60%以下または特別な製造方法(要説明表示) 香味、色沢が特に良好

8種類に共通する条件もあります。こうじ米の使用割合が15%以上であること。使う白米は、農産物検査法で3等以上に格付けされた玄米か、これに相当する玄米を精米したものに限られること。醸造アルコールのほうは、吟醸酒や本醸造酒に使える量が白米の重量の10%以下に制限されています。国税庁の説明では、もろみにアルコールを適量添加すると香りが高く「スッキリした味」になるとされています。

表の「吟醸造り」は、国税庁の言い方だと、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することです。吟醸の文字は、香りを立てることを狙った造り方の印として読めます。

特定名称を表示する清酒には、原材料名の表示と近接する場所に精米歩合を併せて表示することが義務づけられています。品書きにラベルの情報を写している店なら、精米歩合の数字からどのくらい削った米かが読めます。そこから味を想像してみて、外れるのもまた面白いところです。

ラベルで見かけるほかの言葉

特定名称のほかに、要件を満たしたときに表示できる言葉があります。ざっと並べておきます。

  • 原酒。製成後、水を加えてアルコール分などを調整しない清酒。仕込みごとの差をそろえるための、アルコール分1%未満の範囲内の加水は差し支えないとされています
  • 生酒。製成後、一切加熱処理をしない清酒。保存または飲用上の注意事項を容器などに記載します
  • 生貯蔵酒。製成後、加熱処理をしないで貯蔵し、出荷の際に加熱処理した清酒
  • 生一本。ひとつの製造場だけで醸造した純米酒
  • 樽酒。木製の樽で貯蔵し、木香の付いた清酒。販売時に木の容器に入っているかは問いません
  • 貯蔵年数。1年以上貯蔵した清酒に、1年未満の端数を切り捨てた年数を表示できます

生酒と生貯蔵酒以外の清酒は、通常、製成後に貯蔵する前と出荷する前の2回、加熱処理をしています。生酒の文字があれば、製成後に一度も火を入れていない酒だということです。

製造時期は、清酒を販売する目的で容器に充填し密封した時期です。令和5年1月1日から、必要記載事項ではなく任意記載事項になりました。書いていない瓶があっても、決まりに反しているわけではありません。

「日本酒」の文字にも条件があります。原料の米に国内産米のみを使い、かつ日本国内で製造された清酒に限って、「日本酒」と表示してよいことになっています。

書いてはいけない言葉、比べてはいけない言葉

逆に、容器や包装に表示してはいけない言葉も決まっています。製法や品質が業界で「最高」「第一」「代表」といった最上級を意味する用語。品評会等で受賞したものであるかのように誤認させる用語や、官公庁が推奨しているかのように誤認させる用語。受賞と官公庁の二つは令和4年の改正で表示禁止事項に加わり、令和5年1月1日から施行されています。

「極上」「優良」「高級」のような言葉は、自社に同じ種別や銘柄の清酒が複数ある場合に、品質が優れているものへ表示できます。使用原材料などから客観的に説明できる場合に限られ、自社の清酒のランク付けとして使えるもので、他社の清酒と比較するためには使えません。ある蔵の「極上」と別の蔵の普通の酒を、言葉だけで比べても意味がないわけです。

もう一つ。特定名称酒以外の清酒には、特定名称に類似する用語を表示できません。例外は、近くに特定名称の清酒に該当しないことが明確に分かる説明表示がある場合です。「米だけの酒」のような言い方を見たら、そばに説明が添えてあるはずなので、そこまで読むと中身が分かります。

温度と料理は店に聞く

同じ銘柄でも、燗にするか冷やすかで印象は変わります。香りの立つ吟醸系は冷やして、米の味がしっかりした純米や本醸造は燗で、という分け方をよく見かけますが、向く温度は銘柄ごとに別です。迷ったら店の人に聞くのが早いですし、燗を得意にする店なら温度まで提案してくれることもあります。

料理との組み合わせに正解はないと思っていますが、料理の味の濃さと酒の味の濃さを近づけておくと大きく外しにくい、という考え方は使いやすいです。あっさりした料理には軽い酒、濃い味付けにはコクのある酒。ここから少しずつずらして、自分の好みを探すのが楽しいところです。

こうなると少しもったいない

  • 精米歩合の数字だけで酒の良し悪しを決めてしまう。数字は造り方の目安で、好みの保証ではありません
  • 一杯目から一合を頼んで、二杯目に進めない。飲み比べセットや小さな量から入ると、何種類か試せます
  • 「極上」「高級」の文字を蔵どうしの比較だと受け取る。あの言葉は自社の中のランク付けです
  • 燗が飲みたい日に、何も言わずに頼む。温度の希望は先に伝えておくと、店も銘柄を合わせやすくなります
  • 品書きの銘柄数だけで店を選ぶ。入れ替えの頻度や酒の置き場所も一緒に見ると、店の姿が見えやすくなります

品書きの前で引っかかること

ラベルの製造時期は何を表していますか

清酒を販売する目的で容器に充填し密封した時期です。令和5年1月1日から任意記載事項になったので、表示のない瓶もあります。

「原酒」はどういう酒ですか

製成後、水を加えてアルコール分などを調整しない清酒に表示できる言葉です。仕込みごとに少し違うアルコール分をそろえるため、1%未満の範囲内で加水調整することは差し支えないとされています。

「生酒」と普通の日本酒は何が違いますか

生酒と生貯蔵酒以外の清酒は、通常、製成後に貯蔵する前と出荷する前の2回、加熱処理をしています。生酒は製成後に一切加熱処理をしない清酒で、保存または飲用上の注意事項を表示することになっています。加熱せずに貯蔵し、出荷の際に加熱したものは生貯蔵酒です。

純米酒と純米吟醸酒はどちらが上ですか

上下の話ではありません。純米吟醸酒は精米歩合60%以下で吟醸造りという要件があり、純米酒には精米歩合の規定がありません。造り方の違いであって、好みや値段は銘柄ごとに別です。

「極上」「高級」と書かれた酒は、ほかの蔵の酒より上ということですか

違います。これらの用語は、自社に同じ種別や銘柄の清酒が複数ある場合のランク付けとして使えるもので、他社の清酒と比較するためには使えないと定められています。

熟成させた日本酒(古酒)はラベルでどう分かりますか

表示基準では、1年以上貯蔵した清酒に、1年未満の端数を切り捨てた貯蔵年数を表示できます。年数の表示があれば、その年数は貯蔵していると読めます。色や香りの出方は銘柄ごとに違うので、店で聞いてから頼むのが確実です。

品書きを開く前に覚えておきたいこと

品書きが動いているか、酒がどこに置いてあるか。この二つを見てから、ラベルの言葉を読む。特定名称は8種類で、精米歩合や醸造アルコールの有無などで分かれている。生酒は製成後に火を入れていない。「極上」は蔵の中の話。これだけ頭に入れておけば、長い品書きの前で固まることは減ると思います。あとは気に入った一本の銘柄と蔵の名前を一つ覚えて帰るくらいで、十分です。

出典

  • 国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要(特定名称8種類の要件、精米歩合の定義、こうじ米15%以上、醸造アルコール10%以下、吟醸造りの定義、精米歩合の表示義務、生酒・生貯蔵酒・原酒・貯蔵年数・生一本・樽酒の任意記載事項、「極上」等の用語とその条件、表示禁止事項、製造時期表示の任意化(令和5年1月1日施行)、「日本酒」の表示条件)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/seishu/gaiyo/02.htm
  • 特定名称酒の表示基準の確認先として:日本酒造組合中央会公式サイト、国税庁(2026年11月3日確認)

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