ワインバーの看板や品書きでよく見かける「自然派」と「日本ワイン」。似たような手がかりに見えて、この二つはまったく性格の違う言葉です。片方は国税庁の告示で表示の条件が決まっていて、もう片方はその告示のどこにも出てきません。
カウンター越しに造り手の話をしてくれるワインバーなら、なおさらです。言葉の違いを知ってから店に入ると、品書きの読み方が少し変わります。
店の形は四つに分けると見やすい
| 型 | 特徴 | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| 立ち飲みスタンド | 回転が早く、一人でも入りやすい | 仕事帰りの1〜2杯 |
| カウンター中心 | 店の人と話しながら選べる | 好みを伝えて相談したいとき |
| ペアリングコース | 料理に合わせてワインが順に出てくる | 記念日や会食 |
| ボトルショップ併設 | 気に入った1本をその場で買える | 手土産探し、家で飲み直す |
一つの店が二つの型を兼ねていることもあるので、きっちり分けるより「この店はどちら寄りか」くらいの見方で十分です。
少しずつ何種類も試したい日はグラスの品数が多い店。ワインの言葉に自信がない日はカウンターで相談できる店。どちらにしても、グラスとボトルの値段が品書きにはっきり書いてあるかは先に見ておきたいところです。値段の書き方が親切な店は、説明のほうも親切なことが多い気がします。
「自然派」は店の人に聞いて中身を確かめる言葉
自然派、ナチュール、ヴァン・ナチュール。呼び方はいろいろありますが、国税庁の「果実酒等の製法品質表示基準」には、こうした言葉は出てきません。少なくともこの基準の中で条件が定められた言葉ではない、というところまでは言えます。
では何を指しているのかというと、造り手や店によって使い方が違います。同じ「自然派」の棚に並んでいても、どこまで手を加えないのかは一本ずつ別です。
中身は造り手と店の説明で確かめる
「自然派です」の一言で終わる店より、どの造り手の、どんな造り方のワインかを話してくれる店のほうが、言葉ではなく中身で選ばせてくれます。聞けば答えてくれるかどうかは、店に入って一杯目を頼むときに分かります。
同じ銘柄を頼んでも、前回と印象が違うことがあるかもしれません。そのとき「外れた」と思うか「今日はこういう日か」と思えるかで、この手の店の楽しさはだいぶ変わる気がします。
「日本ワイン」の表示は告示で決まっている
こちらは逆に、はっきりした決まりがあります。国税庁の「果実酒等の製法品質表示基準」(平成27年国税庁告示第18号)は、平成30年10月30日以後に製造場から移出し、または保税地域から引き取るものなどに適用されています。いちばん新しい改正は令和8年10月1日施行の国税庁告示第24号で、発泡性を有する果実酒等の表示の区分を、アルコール分10度未満から11度未満に改めたものです。ここで触れる日本ワインの定義や85パーセントの条件は、この改正の対象になっていません。
「日本ワイン」と表示できるのは、国内で収穫されたぶどうのみを原料にして、国内で製造されたワインです。国産ぶどうだけを使い、国内で造る。この二つがそろって初めて「日本ワイン」になります。
| 告示上の区分 | 中身 |
|---|---|
| 日本ワイン | 国内製造ワインのうち、国内で収穫されたぶどうのみを原料とする果実酒(原料に水を使ったものを除くなどの条件がある) |
| 国内製造ワイン | 国内で製造したもの(輸入ワインを除く)。原材料に濃縮果汁や輸入ワインを使ったものには、「濃縮果汁使用」「輸入ワイン使用」などの表示の定めがある |
| 輸入ワイン | 保税地域から引き取るもの(引き取った後に詰め替えて販売するものを含む) |
輸入ワインを「海外で瓶詰めしたもの」と説明している文章を見かけますが、告示の言い方は「保税地域から引き取る果実酒等」です。引き取った後に詰め替えて売るものも輸入ワインに含まれるので、瓶詰めの場所で分けているわけではありません。言葉は告示に合わせておいたほうが安全です。
国内製造ワインのラベルには、もう一段の決まりがあります。
- ぶどうの品種名は、表示する品種の使用量の合計が85パーセント以上を占める場合に限って表示できる。一括表示の欄の外に書けるのは日本ワインだけ
- 収穫年は、表示する年に収穫したぶどうの使用量が85パーセント以上を占める日本ワインに限って表示できる
- 地名を表示できるのは日本ワインに限られ、同じ収穫地で収穫したぶどうを85パーセント以上使った場合の収穫地を含む地名か、醸造地を含む地名のどちらか。醸造地の場合は、ぶどうの収穫地を含む地名ではないことが分かる表示も要る
国内で造られたワインのラベルに品種や収穫年があれば、中身の大半はその品種、その年のぶどうです。地名は醸造地を指している場合もあるので、「○○産ぶどう使用」のような書き方かどうかまで見ると確かです。この85パーセントの決まりは国内製造ワインについてのものなので、輸入ワインの棚では同じ読み方はできません。畑まで話してくれる店かどうかは店ごとに違うので、気になったら聞いてしまうのが早いです。
初めての店で頼むときの順番
- 一杯目は「白・赤・泡・オレンジのどれか」と「軽め・しっかりのどちらか」の二つだけ伝える
- 予算はグラス一杯あたりの上限で伝える。ボトルで頼むなら総額で
- 出てきたワインの造り手と産地を聞いて、気に入ったら覚えておく
- 二杯目は「さっきより酸味を強く」「もう少し果実味を」と、一杯目との違いで頼む
- 料理と合わせるなら、料理を先に決めてから合うワインを選んでもらう
好みを言葉にするのが難しくても、一杯目との比較で伝えれば十分に通じます。味の表現を知らないことを気にする必要はなくて、「さっきのより軽いのを」で店の人は分かってくれます。
気に入ったワインの造り手を覚えておくと、ボトルショップ併設の店や酒販店で、同じ造り手の別のワインを探す楽しみも出てきます。ワインの名前は長くて覚えにくいので、造り手の名前で覚えるほうが続きます。
午前0時を回っても開いている店のこと
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)は、午前0時から午前6時までを「深夜」と定めています(第13条第1項)。バーや酒場など酒類を提供して営む飲食店(営業の常態として主食と認められる食事を出すものを除く)をこの時間に営もうとするときは、営業所ごとに公安委員会への届出が必要です(第2条第13項第4号、第33条第1項)。都道府県は条例で地域を定めて、深夜の酒類提供飲食店営業を禁止することもできます(第33条第4項)。
主食を常に出す店でなければ、午前0時を過ぎて開けるワインバーにはこの届出が求められます。個々の店が届け出ているかどうかは、外からは分かりません。終電まで飲める店かどうかは店の営業時間の案内で確かめてください。同じ法律は、飲食店営業を営む人が営業所で20歳未満の人に酒類を提供することも禁じています(第32条第3項が準用する第22条第1項第6号)。飲むほうの禁止は、二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律の第1条第1項にあります。
深夜まで開いている店は、仕事帰りの一杯には便利です。ただ、遅い時間ほど店の人と話す余裕があるかどうかは、その日の混み具合しだいです。
つまずきやすいところ
- グラスの値段を確かめずに頼み続けて、会計が思った額を超える。品書きの値段を最初に見るか、予算を伝えて選んでもらう
- 同じ銘柄なら同じ味だと思い込む。造り手や店の説明を聞いて、一本ごとの違いも含めて楽しむ
- ペアリングコースの店に予約なしで行く。予約が要るかどうかは店の案内で確かめる
- 「自然派」の一言だけで店を決める。言葉の使い方は店ごとに違うので、造り手や造り方を聞いてから判断する
ワインバーで迷いがちなこと
自然派ワインに決まった定義はありますか
国税庁の「果実酒等の製法品質表示基準」には「自然派」「ナチュール」という言葉は出てきません。造り手や店によって言葉の使い方が違うので、どの造り手のどんな造り方のワインかを店で聞くのが確実です。
「日本ワイン」と「国内製造ワイン」は何が違いますか
国税庁の告示により、国内で収穫されたぶどうのみを原料とし、国内で製造した果実酒だけが「日本ワイン」です(原料に水を使ったものを除くなどの条件があります)。国内製造ワインは、国内で製造したワインのうち輸入ワインを除いたもので、濃縮果汁や輸入ワインを原材料に使ったものには、その旨の表示の定めがあります。
ラベルの品種名や収穫年はどこまで信じてよいですか
国内製造ワインの品種名は、表示する品種の使用量の合計が85パーセント以上の場合に限って表示できます。収穫年は、その年に収穫したぶどうの使用量が85パーセント以上の日本ワインに限られます。地名は日本ワインに限り、同じ収穫地のぶどうを85パーセント以上使った場合の収穫地か、醸造地を含む地名です。
ワインに詳しくなくても楽しめますか
カウンター中心の店なら、好きな味や予算を伝えて選んでもらえます。一杯目との違いで二杯目を頼めば、味の言葉を知らなくても通じます。
一人でも入りやすいですか
立ち飲みスタンドやカウンター中心の店は、一人で使いやすい形です。席の数が少ない店もあるので、混む時間を避けると落ち着いて飲めます。
深夜0時を過ぎても営業している店があるのはなぜですか
風営法は、バーや酒場など酒類を提供して営む飲食店(主食を常に出すものを除く)を午前0時から午前6時までの深夜に営もうとする人に、営業所ごとの公安委員会への届出を求めています(第33条第1項)。届出の仕組みがあるので、深夜も開いている店があるわけです。条例で地域を定めて禁止できる場合もあります(第33条第4項)。
グラスを置く前に
「日本ワイン」には告示の決まりがあり、「自然派」は店で聞いて確かめる言葉。この区別さえ頭にあれば、品書きのどこを信じてどこを質問すればいいかが見えてきます。あとは一杯目を頼んで、造り手の名前を一つ覚えて帰るくらいの気楽さで十分だと思います。
出典
- 国税庁「果実酒等の製法品質表示基準」(平成27年国税庁告示第18号、平成30年10月30日以後の移出・引取り等に適用。日本ワイン・国内製造ワイン・輸入ワインの定義、濃縮果汁等の表示、品種名・収穫年・地名の表示条件)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/kajitsushu/kokuji151030/index.htm
- 国税庁告示第24号「果実酒等の製法品質表示基準を定める件の一部を改正する件」(令和8年10月1日施行)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/law/kokuji/r0810/01.htm
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第13条第1項(深夜の定義)、第2条第13項第4号(酒類提供飲食店営業の定義)、第32条第3項が準用する第22条第1項第6号(20歳未満への酒類提供の禁止)、第33条(届出、条例による禁止)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律 第1条第1項(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC1000000020
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