業界・制度動向

中央線沿線でヴィーガン・ベジタリアン対応店を探すコツ

「ベジタリアン対応」と書いてある店に入って、出てきた料理のだしが魚だった。そういう行き違いは、店が悪いというより言葉の幅が広すぎることから起きます。卵はよいのか、乳製品はどうか、はちみつは。人によって線の引き方が違うのに、看板の一語でそれを全部くくってしまっているわけです。

線の引き方を自分の言葉で説明するのは案外むずかしい。そこで使えるのが、農林水産大臣が制定した飲食店向けの日本農林規格です。料理を四つに分けていて、それぞれに使ってよい動物由来のものが書いてあります。この区分を借りて店に伝えると、短い言葉で通じやすくなります。

国の規格は料理を四つに分けている

農林水産省の日本農林規格「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法」(JAS 0026)は、2022年9月6日に制定されました。加工食品向けには別に「ベジタリアン又はヴィーガンに適した加工食品」(JAS 0025)があります。飲食店のほうの規格は、料理を次の四つに分けています。

区分(JAS 0026) 使ってよい動物由来のもの
卵及び乳製品を摂食するベジタリアンに適した料理 卵とその加工食品、乳とその加工食品、蜂蜜と蜜蜂製品、ラノリンを含む羊毛脂
卵を摂食するベジタリアンに適した料理 卵とその加工食品、蜂蜜と蜜蜂製品、ラノリンを含む羊毛脂
乳製品を摂食するベジタリアンに適した料理 乳とその加工食品、蜂蜜と蜜蜂製品、ラノリンを含む羊毛脂
ヴィーガンに適した料理 動物由来の1次原料も2次原料も使わない(2次原料の加工助剤のうち、動物の骨炭と甲殻類から得られるキトサンは例外)

この表で目を引くのは、はちみつが卵や乳と同じ側に並んでいることです。はちみつを気にしない人は多いと思いますが、規格の上ではヴィーガン向けの料理に使えない動物由来のものです。

もう一つ、規格は店が直接使う食材(1次原料)に加えて、その食材を作るときに使われた原材料(2次原料)まで見ています。たとえば調味料の中に何が入っているか、というところまで含めて管理する決まりです。表の加工助剤の例外(骨炭とキトサン)は、四つの区分に共通しています。

適用範囲には、人の健康、地球環境保全、社会経済的配慮(フェアトレードやアニマルウェルフェアなど)、宗教的信条に基づいた要求事項は規定していない、とも書かれています。宗教上の理由で避けたいものがある人は、この規格の区分だけでは足りないことがある、ということです。

四つの区分を借りて、食材の名前で言う
店に伝えるときは「ベジタリアンです」で止めずに、卵は食べる、乳製品は食べない、はちみつは避けたい、魚のだしは避けたいのように、上の表の区分に自分を当てはめて食材の名前で言うと、行き違いを減らせます。

人数で見ると、小さな話ではない

農林水産省の概要資料によると、主要100か国・地域のベジタリアン・ヴィーガン人口は、感染拡大前の2018年に約6.5億人で、欧米諸国を中心に毎年約1%近く増加傾向にあるとされています。日本では人口比率の約4%がベジタリアン及びヴィーガンだ、というのが同じ資料の数字です。

100人の町に4人。駅前の店にとって無視できる数ではないと思います。もっとも、これは全国の比率で、沿線に限った数字ではありません。

揚げ油と器具の共用は、書いてあれば使ってよい

JAS 0026は、適さない食材や添加物の混入を防ぐために、調理場、調理器具、食器の洗浄を徹底することを店(規格の言葉では調理責任者)に求めています。

揚げ油については少し違う書き方です。適さない食材を揚げた油を使わずに調理するのが原則ですが、その揚げ油を使っている旨をメニュー表や広告などに明記して情報提供する場合には、その油で調理してよいとしています。

情報提供の表示の項では、こうした情報を店に入る前にも客が確認できるように提供しなければならない、と定めています。適さない食材と調理器具を共用する場合はメニュー表などにその旨を明記する。揚げ油についてはメニュー表や広告の見やすい箇所に明記する。記載の例として「揚げ油は、動物性食品の調理と共用しています。」という文も挙がっています。

つまり、規格に沿う店にとって揚げ油の共用は隠す話というより、先に書いておく話です。逆に言えば、何も書いていない店の揚げ油がどうなっているかは、聞かないと分かりません。共用のフライヤーや鍋をどこまで気にするかは人それぞれなので、自分の線を店に伝えておくのが早いです。

料理のジャンルごとに聞いておきたいこと

ジャンル 動物性を使わない料理を探す手がかり 店に聞いておきたいこと
インド料理の店 豆や野菜のカレー バターやギー、ヨーグルトを使っているか
タイや中東の料理の店 野菜と豆を中心にした一皿 魚醤やだしに魚介を使っているか
カフェ 豆乳や植物性ミルクへの変更 焼き菓子に卵や乳製品が入っているか
一般的な洋食や和食の店 相談してのメニュー調整 だしや調味料に動物性の成分が入っているか

表の右の列は、答えがどちらでも店を責める話ではありません。聞いて答えてくれるかどうか、それ自体が店を見る目安になります。

見落としやすいのは、見えないところ

聞く項目 こういうところに入っていることがある
だし かつお節、煮干し、鶏がら
調味料 魚醤、オイスターソース、白だし
油 動物性の揚げ油、共用のフライヤー
麺や皮 卵を練り込んだ麺、ラードを使った皮

皿の上に肉や魚が乗っていないことと、動物性のものを使っていないことは別です。見えないところほど、こちらから聞かないと出てきません。規格が2次原料まで見ているのも、こういう部分があるからでしょう。

席で食べる料理に表示が付かないことがある理由

食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の第3条が横断的な表示を義務づけているのは、容器包装に入れられた加工食品です。条文には、設備を設けて飲食させる場合を除く、という断りがあります。店の席で食べる料理に原材料やアレルギーの表示が付いていなくても不思議ではないのは、この除外があるからです。

袋入りの食品のような表示を店の料理に期待できない以上、注文の前にどこまで対応できるかを店に聞くのが確実です。JASのような規格による認証もありますが、受けるかどうかは店しだいで、受けていない店の「ベジタリアン対応」が規格と同じ意味だとは限りません。

伝え方の順番

  1. 自分がJAS 0026の四つの区分のどれに近いかを決める
  2. 避けたいものを、料理名ではなく食材の名前にしておく(卵、乳製品、はちみつ、魚介のだし、など)
  3. 混まない時間に電話かメッセージで伝え、できることとできないことを聞く
  4. 揚げ油と調理器具の共用をどこまで気にするかを、自分の側から言う
  5. 当日は注文のときにもう一度、短く確かめる

五つ全部やるのは大げさだと感じる人もいると思います。二番だけでも違う。「かつおのだしは避けたい」と食材の名前で言えば、店の人は厨房に聞きに行けます。「ベジタリアンです」だけだと、何を聞きに行けばいいのか店の側も困ります。

一人で気軽に済ませるなら、植物性ミルクに変えてくれるカフェが使いやすいはずです。制限のない友人と行くなら、インド料理やタイ料理のように両方の品書きがそろいやすい店のほうが、お互いに気を使わずに済みます。タイ料理の店の見分け方はタイ料理・ベトナム料理店の記事に書いています。

こじれやすいところ

  • ヴィーガン表示を見て安心していたら、だしに魚介が入っていた。だしと調味料は別に聞く
  • 混む時間に細かい調整を頼んで、店を困らせた。落ち着いた時間に相談する
  • 個人の店で、前回できた対応が今回はできなかった。その日の仕入れで変わることがあるので、毎回ひと言聞く
  • ベジタリアンとヴィーガンの違いを説明しないまま注文した。四つの区分のどれかを先に言う
  • 小麦も避けたいのに、ヴィーガンだとしか伝えなかった。小麦の話は別の条件なので、別に伝える

店に伝える前に知っておきたいこと

ヴィーガンとベジタリアンの違いは何ですか

農林水産省のJAS 0026は、ベジタリアン向けの料理を卵と乳製品のどちらを食べるかで三つに分け、ヴィーガン向けの料理は動物由来の1次原料も2次原料も使わないものとしています(加工助剤の一部に例外があります)。蜂蜜や蜜蜂製品は、ベジタリアン向けの三つの区分では使ってよいものに入っています。店にはどの区分に近いかを食材の名前で伝えてください。

事前予約は必要ですか

食材の調整を頼むなら、混まない時間に電話かメッセージで先に相談しておくと、当日のやり取りが短く済みます。

完全対応の専門店以外でも食事はできますか

一部のメニューを調整してもらえる店もあります。避けたい食材を名前で伝えて相談すれば、専門店以外にも選べる店は広がります。

出汁の確認はどのように伝えればよいですか

「かつお節や煮干しのだしを避けたい」のように、食材の名前を挙げて伝えてください。店の人が厨房に確かめやすくなります。

JAS認証を受けた店でないと安心できませんか

認証を受けるかどうかは店しだいで、受けていなくても丁寧に対応している店はあります。認証の有無にかかわらず、避けたい食材を具体的に伝えて確かめるのが確実です。

カフェでも安心して利用できますか

植物性ミルクに変えてくれる店はありますが、焼き菓子に卵や乳製品が入っていることはよくあります。飲み物と一緒に軽食のことも聞いてください。

グルテンフリーにも対応してもらえますか

ヴィーガン対応と小麦を避けることは別の条件です。小麦を避けたいなら、そのことも別に伝えて、できるかどうかを店に確かめてください。

ひと言添えて席に着く

四つの区分のどれに近いかを決めて、避けたいものを食材の名前で言う。これだけで、店とのやり取りはだいぶ楽になります。揚げ油や器具の共用は、規格に沿う店なら先に書いてある話なので、書いていなければ聞く。席で食べる料理に袋入りの食品のような表示の義務がない以上、聞くことを面倒がらないのが結局いちばんの近道だと思います。

出典

  • 農林水産省 日本農林規格 JAS 0026「ベジタリアン又はヴィーガン料理を提供する飲食店等の管理方法」(2022年9月6日制定。箇条1の適用範囲、箇条3の1次原料と2次原料、4.2〜4.5の四つの区分、5.5.2の混入防止と揚げ油、5.6.3の情報提供の表示)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-221.pdf
  • 農林水産省 ベジタリアン・ヴィーガン関連JASの概要資料(2018年の世界の人口約6.5億人、日本の人口比率約4%)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-296.pdf
  • 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条(容器包装に入れられた加工食品の表示、設備を設けて飲食させる場合の除外)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010

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