業界・制度動向

飲食店のカロリー・栄養成分表示とは?義務化されない理由と広がる任意表示

一日の食塩は9.6グラム。厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査で出た、20歳以上の平均の値です。健康日本21(第三次)が置いている目標は7グラムなので、平均でまだ2.6グラムほど上にいます。

こういう数字を見ると、外で食べる一皿の塩分が気になってきます。ところが飲食店の品書きには、コンビニのおにぎりの裏にあるような栄養成分の表示がない店も珍しくありません。あれは店の手抜きではなく、決まりの作りがそうなっているからです。

栄養成分表示の義務・推奨・任意の項目と、外食が対象外であることを示した図
栄養成分表示の区分(本文の説明をもとに作成した図)

容器に入った食品には表示の義務がある

消費者庁の案内によると、容器包装に入れられた一般用の加工食品と添加物には、食品表示基準に基づいて栄養成分の量と熱量の表示が義務づけられています。義務の項目は熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウムの五つ。ナトリウムは食塩相当量で表示されるので、袋の裏に「食塩相当量」とあるのはこのためです。

五つのほかに、飽和脂肪酸と食物繊維は表示が推奨されている成分です。さらに任意で表示される栄養成分もあります。栄養成分の量や熱量について強調表示をする場合には、含有量が一定の基準を満たすことが必要とされています。量の多さや少なさをうたう言葉を袋に書くには、それなりの裏づけが要るということです。

区分 栄養成分
義務 熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)
推奨 飽和脂肪酸、食物繊維
任意 糖質、糖類、ミネラル、ビタミンなど

小規模の事業者が販売した食品などは、栄養成分表示が省略されていることがあります。小さな店の手作りの菓子に表示がなくても、それだけで不備とは限りません。

食品表示基準の附則第4条には、令和2年3月31日までに製造、加工、輸入された一般用の加工食品の表示は従前の例によることができる、という経過措置がありました。いま袋の裏で見る表示は、この期間が終わったあとの姿です。

店で出す料理が対象の外にある理由

食品表示基準は第1条のただし書きで、加工食品や生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第40条(生食用牛肉の注意喚起)を除いて適用しない、としています。第3条の表示の決まりも、食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品を販売する際、と書かれていて、設備を設けて飲食させる場合は除かれています。

席があって、そこで食べてもらう。この形が、基準の適用の外にあるわけです。消費者庁のQ&Aは、レストラン、食堂、喫茶店などの外食事業者による提供がこれに当たり、店で出す状態のものを自宅へ届ける出前も含むと説明しています。定食屋の品書きに熱量が書いていなくても、義務の対象になっていないので違反にはあたりません。

持ち帰りの弁当は少し線引きが細かくなります。消費者庁の食品表示基準Q&Aによると、客の注文に応じてその場で容器に詰める弁当や惣菜は、容器包装に入れられた加工食品の販売に当たらず、基準の表示は要りません(生食用牛肉の注意喚起を除く)。対面販売で、繁忙時に備えてその日の見込み量を先に詰めておく場合も同じ扱いです。

弁当や惣菜の売り方 Q&Aの扱い
注文に応じてその場で容器に詰める 基準の表示は不要
対面販売で、繁忙時に備えその日の見込み量を先に詰めておく 同じく不要
店内や同じ敷地で調理し、容器包装に入れて売る 栄養成分の量と熱量を含む一部の表示は不要
別の場所のセントラルキッチンから届いたものを売る 基準第3条と第4条の表示が必要

棚に包んで並んでいる弁当でも、どこで作ったかで扱いが変わるわけです。細かい判断はQ&Aの原文で確かめてください。

アレルギーのある人にとっては、表示の有無は塩分よりも切実です。店の選び方と聞き方は中央線沿線でアレルギー対応メニューを用意する店の見つけ方にあります。

それでも数字を出す店がある背景

義務でないのに、品書きに熱量や食塩相当量を載せる店があります。理由は店ごとでしょうが、関わりがありそうなのが国の健康づくり運動の健康日本21です。厚生労働省の健康づくりサポートネットによると、第三次は2024(令和6)年度から2035(令和17)年度にかけて行う国民健康づくり運動で、計画期間は12年間。国民健康・栄養調査の概要には、その目標として食塩摂取量の平均値7グラム、野菜摂取量の平均値350グラムが載っています。

外で食べる機会が多い人ほど、家の食事だけで目標に近づけるのは難しい。店が数字を出してくれれば、一日の量を自分で考えやすくなります。店の側から見ても、健康を気にする客に向けた分かりやすい案内になります。

住んでいる自治体が飲食店の表示をどう後押ししているかは、区市町村や都道府県の健康づくり担当のページで確かめられます。やり方は土地ごとに違うはずです。

平均の数字と目標の差

令和6年国民健康・栄養調査の概要から、20歳以上の平均値を並べます。

項目 平均値 男性 女性
食塩摂取量 9.6グラム 10.5グラム 8.9グラム
野菜摂取量 258.7グラム 268.6グラム 250.3グラム
果物摂取量 78.1グラム 70.4グラム 84.7グラム

健康日本21(第三次)の目標値は、食塩摂取量の平均値が7グラム、野菜摂取量の平均値が350グラムです。食塩は目標より2.6グラム多く、野菜は目標より91グラムほど少ない。男女で見ると、食塩は男性のほうが多く、野菜も男性のほうが多く、果物は女性のほうが多い。食塩を減らして野菜を増やす、という方向が平均の数字からはっきり見えます。

外食で食塩や野菜の量の目安が分かれば、家の食事と合わせて一日の量を考えやすくなります。表示のある店では、熱量の数字だけでなく食塩相当量の欄も見ておきたいところです。

表示があると何が変わるか

立場 変わること
食べる人 体重や塩分を気にするときの目安になる。食事に制限がある人が品を選ぶ手がかりになる
店 健康を気にする客に、言葉で説明しなくても情報が届く
海外からの客 数字は言葉の壁を越えやすい。英語の表記を添えればなお伝わる

来店前に公式サイトで栄養成分を公開している店があれば、家で見比べてから店を決める、という使い方もできます。品書きに何をどう書くかという話では、税込の総額表示のように法律で決まっている項目もあります。価格の表示の決まりは飲食店の値上げと価格表示とは?総額表示義務と物価上昇のなかでの伝え方にあります。

店の数字をどう読むか

外で出る料理は、日替わりや季節の品だと食材も量も日によって変わります。盛り付けの手加減でも変わります。だから店が出す数字は、ある日のある一皿をはかったものというより、標準の作り方から出した目安と受け取るのが自然です。

これは店の数字が当てにならないという話ではありません。袋入りの食品の表示にしても、手元の一袋そのものをはかった値とは限りません。目安として使い、厳密な管理が要る人は専門家に相談する。それで十分です。

小さな店にとっては、計算や分析の手間と費用が重いという事情もあります。表示がない店を責める気にはなれませんし、聞けば味付けの濃さを教えてくれる店もあります。

特定の食事療法や健康管理を勧める話ではありません。持病があって食事に制限が要る人は、医師や管理栄養士に相談してください。

席に着いてから確かめること

  • 品書きや卓上の案内に栄養成分の表示があるかを見る
  • 公式サイトやアプリで品ごとの栄養成分を出している店なら、注文の前に見ておく
  • 個人の店で表示がなくても、店で食べる料理は基準の対象の外なので不備ではない
  • 気になるときは、注文のときに量や味付けの濃さを聞いてみる

表示がない店で量を整える

数字がなくても、品書きの組み立てから大まかな傾向はつかめます。一般に、揚げ物や炒め物より、蒸し物や煮物、刺身を中心にした品のほうが脂質は控えめになりやすい。定食なら、ご飯の量を変えられるか、副菜を野菜のものに替えられるかを聞いてみる。丼やパスタのように一皿で完結する品は炭水化物に寄りやすいので、サラダや汁物を足して品数で補う手もあります。

小盛りや薄味の品を置く店の傾向は中央線沿線でシニア向けメニューを用意する店の広がりで取り上げています。年齢に関係なく、量と味付けを選べる店は使いやすいです。

品書きの前で浮かぶ疑問

飲食店に栄養成分表示がないのは違法ですか

食品表示基準は第1条のただし書きで、設備を設けて飲食させる場合を適用の外に置いていて、第3条の表示の決まりも同じ場合を除いています。店で食べる料理はそもそも義務の対象になっていないので、この基準の違反にはあたりません。

テイクアウトやデリバリーの弁当も表示義務はないのですか

消費者庁の食品表示基準Q&Aでは、外食事業者が店で出す状態のものを届ける出前は基準の適用の外、注文に応じてその場で詰める弁当は表示不要です。店内で調理して容器包装に入れて売る場合も、栄養成分の量と熱量の表示は要りません。別の場所のセントラルキッチンから届いたものを売る場合は表示が必要です。義務のない形でも、任意で表示している店はあります。

自治体が飲食店の栄養成分表示を後押しすることがあるのはなぜですか

理由を一つに言い切れる資料は確かめられていません。背景として考えられるのは、国の健康づくり運動の健康日本21(第三次)です。2024年度から2035年度までの12年間の計画で、食塩7グラム、野菜350グラムといった目標値が置かれています。後押しのやり方は自治体ごとに違うので、住んでいる区市町村の健康づくり担当のページで確かめてください。

栄養成分表示があるかどうかはどこで確認できますか

店の品書きや卓上の案内、公式サイトやアプリに載っていることがあります。見当たらなければ、注文のときに店の人に聞くのがいちばん早いです。

カロリーだけでなく塩分も表示している店はありますか

加工食品の義務の項目ではナトリウムを食塩相当量で表示する決まりなので、同じ形で載せる店なら熱量と並んで食塩相当量の欄があります。載せるかどうかは店ごとに違うので、品書きで確かめてください。

表示されている数値はどのくらい正確ですか

日によって食材や盛り付けの量が変わるので、店の数字は目安として読むのが無難です。厳密な管理が必要なら、医師や管理栄養士に相談するのが確実です。

塩の数字を持ち帰る

平均9.6グラムと目標7グラム。この差を縮めるとき、外食の一皿に数字がついているかどうかは小さくない手がかりです。店で食べる料理が表示の義務の外にあることを知ったうえで、数字を出す店があればありがたく使う。ない店では品の組み合わせと一言の質問で整える。それくらいの構えで十分だと思います。

出典

  • 消費者庁「栄養成分表示について」(義務表示の5項目、ナトリウムは食塩相当量で表示、推奨表示、任意表示、強調表示の基準、小規模の事業者の省略)(2026年11月3日確認) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/nutrient_declearation
  • 消費者庁「小規模の事業者における栄養成分表示の省略」リーフレット(PDF)(省略の条件の確認先)(2026年11月3日確認)
  • 消費者庁「食品表示基準Q&A」表紙と目次(PDF)、第1章 総則(総則-4、外食事業者と出前) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_260401_17.pdf 、別添 弁当・惣菜に係る表示(弁当-16、17、18) https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_230629_14.pdf (2026年11月3日確認)
  • 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第1条ただし書き、第3条、第40条、附則第4条(加工食品の経過措置)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
  • 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」(食塩摂取量、野菜摂取量、果物摂取量、健康日本21(第三次)の目標値)(2026年11月3日確認) PDF
  • 厚生労働省 健康づくりサポートネット「健康日本21(第三次)」(2024年度から2035年度までの12年間)(2026年11月3日確認) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/policy/21_3rd.html

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