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喫茶店とカフェの違いを知っていますか

「喫茶」と書いた看板と「カフェ」と書いた看板。どちらに入るかで、その後の一時間の過ごし方がけっこう変わります。ただ、この二つの言葉の違いを聞かれて、すらすら答えられる人はあまりいないはずです。

制度のほうから見ると、答えは意外にあっさりしています。今の食品衛生法施行令に、喫茶店とカフェを分ける区分はありません。

今の施行令にある営業の区分

食品衛生法施行令の第35条は、都道府県が施設の基準を定めるべき営業を並べた条文です。その先頭にあるのが「飲食店営業」で、次に「調理の機能を有する自動販売機」が続きます。第3号から第32号までは、食肉販売業や菓子製造業といった販売や製造の営業です。全部で32号ありますが、喫茶店営業という区分は出てきません。

現行の施行令第35条 内容
第1号 飲食店営業 食品を調理し、または設備を設けて客に飲食させる営業(第34条の2第2号の定義)
第2号 調理の機能を有する自動販売機 その自動販売機で食品を調理して売る営業(直接触れる部分を自動で洗う装置などがあるものを除く)
第3号から第32号 食肉販売業、魚介類販売業、菓子製造業、そうざい製造業などの販売や製造の営業

飲食店営業の定義は「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」です。コーヒーをいれて席で出す店も、ナポリタンを調理して出す店も、この定義の中に入ります。

この形になったのは、食品衛生法等の一部を改正する法律に伴う施行令の改正で、令和3年6月1日から施行されています。それより前の施行令には喫茶店営業という区分があり、「喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業」と書かれていました。浜松市の案内の言い方では、これが飲食店営業に統合された形です。今の施行令の営業の区分には、喫茶店とカフェを分ける線がありません。

だから看板の言葉は、制度上の種類ではなく、店が自分で選んだ名乗りです。ここを押さえておくと、店を見る目が少し変わります。法令の読み方で迷う点があれば、保健所など管轄の窓口で確かめてください。

では何が違うのか

区別が法令にないなら、違いは店の姿勢に残っている、と考えるのが自然です。喫茶と名乗る店はコーヒーと居場所を前に出し、カフェと名乗る店は食事やスイーツまで含めた滞在を組み立てている。そういう傾向を感じることはありますが、店ごとの差のほうが大きいので、看板で決めつけるのはやめたほうが外れません。

見るところは四つです。

  • 注文の形。席で注文を取るか、カウンターで先に払うか
  • 品書き。飲み物中心か、軽食や甘いものが厚いか
  • 席。一人で長くいられる席があるか、電源や無線が使えるか
  • 時間帯。朝の品書き(モーニング)があるか、夜まで開いているか

この四つは看板の言葉より、店の入口の品書きと中の席を見たほうが早く分かります。

朝の品書きという入口

喫茶店の使い方で分かりやすいのが、朝の品書きです。トーストと飲み物を組み合わせたモーニングは、看板が喫茶でもカフェでも出している店があります。

西荻窪の純喫茶それいゆのモーニングセット。トーストとアイスコーヒー
西荻窪の純喫茶、それいゆのモーニングセット

上の写真は西荻窪の純喫茶のモーニングセットで、トーストにアイスコーヒーの組み合わせ。朝の品書きの形として、こういう一皿を思い浮かべておくと店を探すときの目安になります。

提供時間は店ごとに違います。朝に使いたい日は、店の案内で何時までかを見てから向かってください。

喫茶代は街で差がある

総務省統計局の家計調査に、二人以上の世帯が一年に喫茶代としていくら使ったかの集計があります。2023年から2025年の平均で、全国は10,261円。都道府県庁所在市と政令指定都市の並びでは、名古屋市、東京都区部、岐阜市の順でした。

喫茶代(二人以上の世帯、2023〜2025年平均) 年額
全国 10,261円
1位 名古屋市 16,431円
2位 東京都区部 16,270円
3位 岐阜市 14,663円

東京都区部は全国平均の1.5倍を超えます。この集計は喫茶店とカフェを分けていないので、どちらの店に使ったかまでは分かりません。ただ、東京都区部の世帯が喫茶代に全国平均よりかなり多く払っていることは、数字で見えます。

その日の目的で店を変える

読みたい本が一冊あって、二時間ひとりで座りたい日。打ち合わせで三人、資料を広げたい日。駅で待ち合わせまで二十分つぶしたい日。同じコーヒー一杯でも、求めている席は違います。

その日の用事 先に見ること
ひとりで長くいたい 一人席やカウンターがあるか、長居を断る案内が出ていないか
作業や打ち合わせ 電源と無線、テーブルの広さ、混む時間
短い待ち合わせ 駅からの近さ、先払いで早く出られるか
朝ごはん代わり モーニングの有無と提供時間

平日と休日で分けるのも手です。平日の朝や昼は先払いの店で短く済ませ、休日は席で注文を取ってもらう店でゆっくりする。看板が喫茶かカフェかは、この分け方にはあまり関係がありません。

長居できるかは店に聞くのがいちばん早い
パソコンを開いてよいか、一杯で何時間いてよいか。店によって考え方が違うので、入口の案内か店の人にひとこと聞くだけで気まずさが消えます。聞きにくい雰囲気の店は、そもそも長居向きではないのかもしれません。

こういう日は残念

  • 看板の「カフェ」の字だけで作業向きと思い込んで入ったら、電源がなかった。席と電源は入る前に見る
  • モーニングを目当てに昼前に行ったら、提供時間が終わっていた。朝の品書きの時間は店の案内で確かめる
  • 打ち合わせに使ったら、隣との距離が近くて話しにくかった。人数と用事に合う席かを先に見る
  • 「喫茶」の字で古い店を想像して入ったら、まったく違う方向の店だった。名乗りは店の選んだ言葉で、制度上の種類ではない

喫茶店とカフェで迷うこと

喫茶店とカフェ、法律上の違いはありますか。

今の食品衛生法施行令第35条は飲食店営業から始まる32の営業を挙げていて、喫茶店営業の区分はありません。令和3年6月1日施行の改正で喫茶店営業は飲食店営業に統合されたので、現在は呼び方の違いが中心です。

喫茶店でパソコン作業をしてもよいですか。

店によって方針が違います。入口の案内に書いてある店もあるので、長く作業したい日は先に見るか、店の人に聞いてから開くと安心です。

カフェは全てセルフサービスですか。

先払いの店も、席で注文を取る店もあります。名乗りで決まるものではないので、入口の品書きやレジの位置を見て判断してください。

モーニングメニューがあるのはどちらが多いですか。

喫茶でもカフェでも出す店はあり、名乗りで数えた割合は分かりません。朝に使いたいときは、店の案内で提供時間を確かめるのが確実です。

一人で長時間滞在しやすいのはどちらですか。

看板より席の作りで決まります。一人席やカウンターがあり、長居を断る案内が出ていない店なら、どちらの名乗りでも落ち着いて過ごせます。

カフェと喫茶店、価格帯に差はありますか。

名乗りで決まる差はなく、品書きの内容と立地で変わります。家計調査では喫茶代の年額が全国平均10,261円に対して東京都区部は16,270円ですが、これは店の種類を分けた数字ではありません。

デートや友人との会話向きなのはどちらですか。

どちらも使えます。隣の席との距離と、店内の音の大きさで選ぶほうが外れません。静かに話したい日は、席の間隔が広い店を選んでください。

サイフォンコーヒーはどちらで飲めることが多いですか。

抽出の方法は店ごとの選択で、名乗りとは結びつきません。品書きや店頭に抽出方法を書いている店を選ぶと確実です。

看板の字より中を見る

法令の区分はなく、違いは店ごとの選び方に残っている。それだけ分かっていれば、看板の言葉に引っ張られずに済みます。注文の形、品書き、席、時間帯。この四つを入口で見て、その日の用事に合う店に入る。コーヒー一杯の時間は、そのほうが長く楽しめると思います。

出典

  • 食品衛生法施行令(昭和28年政令第229号)第34条の2第2号(飲食店営業の定義)、第35条(営業の指定)、附則(令和3年6月1日施行)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/328CO0000000229
  • 食品衛生法施行令 2020年6月1日施行版(次の改正の施行まで適用された版)第34条の2第2号(喫茶店営業の定義)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/328CO0000000229/20200601_501CO0000000122
  • 浜松市「営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設について」(「喫茶店営業」は「飲食店営業」に統合)(2026年11月3日確認) https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/seiei/food/safy/kyokakaisei.html
  • 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)」外食の喫茶代(全国、名古屋市、東京都区部、岐阜市)(2026年11月3日確認) https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html 、表 https://www.stat.go.jp/data/kakei/zuhyou/rank13.xlsx

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