料理ジャンル別

中央線沿線のカレー専門店の傾向

カレー屋の品書きには、同じ「カレー」なのに違う言葉が並びます。スパイスカレー、欧風カレー、バターチキン、ミールス。中央線の沿線でも、このうちのいくつかには出会えるはずです。

呼び名が違うのは、作り方の系統が違うからです。どの系統の店か見当をつけてから暖簾をくぐると、その日の気分に合わない一皿を引く確率は下がります。

カレーの店は統計では「その他」に入る

総務省の日本標準産業分類(令和5年7月改定)を開くと、専門料理店の細分類の中に「その他の専門料理店」(7629)があって、その例としてフランス料理店、イタリア料理店、スパゲティ店、朝鮮料理店、印度料理店、カレー料理店、エスニック料理店、無国籍料理店が並んでいます。

日本料理店やラーメン店、焼肉店のように独立した番号をもらっているわけではなく、カレー料理店は印度料理店と肩を並べて「その他」の中です。統計の世界では、カレー専門店とインド料理店はご近所さんということになります。品書きの上では別物に見えても分類では分けられていないあたりが、この料理の立ち位置をよく表している気がします。

店の形もいろいろです。カウンターだけの店もあれば、喫茶店のようにゆっくりできる店もある。昼だけ開ける店や、仕込んだ分がなくなれば閉める店もあるので、営業の形は店の案内で確かめてから出かけるのが安全です。

品書きの呼び名と、だいたいの違い

呼び名 味と口当たりの傾向 一緒に出てくる主食
欧風カレー とろみがあって、煮込んだコクを前に出す店が多い 白いご飯。バターライスの店も
スパイスカレー とろみは控えめで、香りの重なりを聞かせる店が多い。二種類を一皿に盛る合いがけも ご飯と副菜を一皿に盛ったプレート
北インド・ネパール系 バターや乳製品を使った、なめらかで濃いグレービーが看板になりやすい ナン、バスマティライス
南インド系 さらりとして酸味のある料理が多い。小さな器を並べるミールス ご飯が中心
スープカレー スープ状のカレーに大きめの具 ご飯は別皿で、浸しながら
タイカレー ココナッツミルクとハーブの香り ジャスミンライス

この表はあくまで目安です。欧風カレーを名乗りながらさらりと仕上げる店もあるでしょうし、スパイスカレーの店が小麦粉のとろみを使うこともあります。看板の言葉より、品書きの説明や写真を見たほうが早いことが多いです。

迷いどころは合いがけの店です。二種類のルーを一皿で楽しめるのは得なようでいて、一種類ずつの量は当然減ります。初めての店で看板の一皿を味わいたいなら、合いがけより単品のほうが店の狙いがはっきり伝わる気がします。二回目から合いがけ、くらいがちょうどいいかもしれません。

イギリスを回ってきたカレー粉

日本のカレーの手前にはイギリスがあります。ハウス食品の「カレーの世界史」によると、1747年にイギリスの料理本に初めてカレー料理が登場し、1772年には東インド会社に勤めていたウォーレン・ヘースティングズがインドから混合スパイスと米を持ち帰りました。翌1773年、ヘースティングズは初代ベンガル総督になっています。

カレー粉のほうはエスビー食品の「カレーの世界史」に出てきます。クロス・アンド・ブラックウェル社(C&B)がカレー粉を商品化し、これが世界初のカレー粉と言われている。正確な発売年は不明で、1870年頃にC&B社のカレー粉が日本に入ってきたそうです。

スパイスを一つずつそろえなくても、缶を一つ開ければカレーの味になる。カレー粉というのはそういう発明で、小麦粉でとろみをつける洋食のカレーの土台でもあります。

伝わりはじめたのは1859年の開港から、本に載ったのは1872年

日本側はハウス食品の「カレーの日本史」が追っています。1859年(安政6年)の横浜開港を機に、修好国の商人たちが横浜に館を構えはじめ、使用人や出入りの日本人を通して、ほかの西洋料理とともにカレーが日本人に伝わりはじめました。

そこから13年たった1872年(明治5年)に、料理書『西洋料理通』(仮名垣魯文)と『西洋料理指南』(敬学堂主人)が刊行されます。『西洋料理通』のレシピには「カリーの粉」と「小麦の粉」を匙で量る手順が書かれていて、カレー粉と小麦粉という組み合わせがこの時点で紙に残っています。

「日本のカレーの最初は1872年」と一つにくくられることがありますが、1872年は作り方が本に載った年です。伝わりはじめたのはその前、1859年の開港から。人づてに広まった時期と本に書かれた時期は別なので、どこかで年号の食い違いを見ても慌てなくて大丈夫です。

1870年頃にC&B社のカレー粉が日本に入り、1872年に小麦粉と合わせるレシピが本に載る。カレー粉の到着と料理書の刊行がほぼ同じ時期に重なっているのが、日本のカレーの始まりの面白いところです。

インドの料理を出す店も系統が分かれる

沿線にはインド亜大陸の料理を出す店もあります。看板に「インド・ネパール料理」とある店はナンと一緒に出すグレービーが中心のことがあって、バターチキンのようにクリームやバターを使った濃い味が目立ちます。

南インド系は食べ口がかなり違います。ご飯を真ん中に、サンバルやラッサムと呼ばれる汁物や副菜を小さな器で並べ、混ぜながら食べるミールスという形がよく知られています。さらりとして酸味のある料理が多いので、こってりしたルーを想像して入ると少し驚くかもしれません。

同じ「インド料理」でも、ナンの店かミールスの店かで食後の感じ方は変わりそうです。昼に食べて午後も動くなら南インド、夜にゆっくりなら北インド、という分け方もひとつの手かもしれません。

辛さの数字は店ごとの物差し

辛さを段階で選べる店でも、その数字は店ごとの物差しです。同じ「3辛」でも店が違えば別物だと思っておくのが無難で、初めての店では標準か一段下から頼んで、次に来たときに上げるくらいでちょうどいいです。

辛さを上げれば香りも増すかというと、そうとも限りません。辛さと香りは別の方向の話なので、香りを楽しみたい日に辛さだけ上げてもあまり得をしないことがあります。このあたりは店によって考え方が違うので、迷ったら「香りを楽しむならどの辛さがいいか」と店の人に聞いてしまうのが早いです。

頼む前に見ておきたいこと
合いがけができるか、ルーを何種類まで選べるか。ライスの量を変えられるか。辛さの段階の目安はどこか。小麦や乳のアレルギーがあるなら、ルーに使っているかどうかを店に直接聞くのがいちばん確かです。

看板のルーが早く売り切れる店もあります。目当てがあるなら、開店に近い時間を狙うほうが悔しい思いをしにくいです。

持ち帰ったカレーを翌日に回すとき

厚生労働省の広報誌「厚生労働」に、ウエルシュ菌の話が載っています。この菌は熱に強い芽胞をつくり、カレーやシチュー、煮魚、麺のつけ汁など、大量に調理されてそのまま室温で冷まされた食品で食中毒が起きている、という説明です。

予防として挙がっているのは、加熱した食品は小分けにしてすばやく冷やし、室温に長く置かないこと。保存は10℃以下または55℃以上で、再加熱するときは十分に加熱したうえで早めに食べること。

「カレーは一晩寝かせるとおいしい」という言い方がありますが、鍋ごと室温に置いておく寝かせ方は、この説明と正面からぶつかります。寝かせるなら冷蔵庫で。テイクアウトしたカレーも、帰ってすぐ食べない分は小分けにして冷蔵に回したいところです。

カレー屋の前で迷いがちなこと

スパイスカレーと欧風カレーはどちらが辛いですか

系統だけでは決まりません。どちらの系統にも辛い店と穏やかな店があって、辛さと香りは別の話です。気になるときは注文のときに段階を聞くのが確実です。

ランチだけ営業しているカレー店は多いですか

昼だけの店も、夜まで開ける店もあります。仕込んだ分が売り切れた時点で閉める店もあるので、店の公式サイトやSNSで当日の営業を見てから向かうと空振りしません。

辛いものが苦手でも楽しめますか

辛さを選べる店なら、抑えた注文ができます。段階の数字は店ごとの物差しなので、初めての店では標準か一段下から頼むと外しにくいです。

南インドカレーはどんな料理ですか

ご飯を中心に、汁物や副菜を小さな器で少しずつ並べたミールスという形がよく知られています。さらりとして酸味のある料理が多く、ナンと濃いグレービーの北インド系とは食べ口が違います。

テイクアウトに対応している店はありますか

対応は店ごとに違うので、店の案内で確かめてください。持ち帰ったカレーは室温に長く置かず、すぐ食べない分は小分けにして冷蔵し、食べる前に十分に温め直します。厚生労働省は、大量に調理して室温で冷ましたカレーなどでウエルシュ菌による食中毒が起きていると注意を呼びかけています。

予約はしたほうがよいですか

席の少ない店で、混む時間に行くなら、予約を受けている店かどうかを先に見ておくと待ち時間を減らせます。予約を受けない店もあるので、その場合は時間をずらすのが現実的です。

子ども連れでも利用しやすいですか

辛さを下げられる店や甘口のルーがある店なら使いやすいです。席の作りや子ども向けの対応は店ごとに違うので、出かける前に店の案内か電話で聞いておくと安心です。

辛さを決める前に

欧風、スパイス、北インド、南インド。作り方の系統が分かれば、その日に食べたい一皿へ近道できます。カレーは1859年の開港を機に日本人へ伝わりはじめ、1872年にはもう小麦粉と合わせる作り方が本に載っていました。歴史を知ったからといって味が変わるわけではないのですが、品書きの言葉の読み方は少し変わります。辛さは店の物差しで、初めてなら標準から。それだけ覚えておけば十分です。

出典

スパイスカレーだけを掘り下げた記事

香りの重なりで選ぶ店の見方は、中央線沿線のスパイスカレー専門店、人気の理由と選び方に書いてあります。合いがけの店を探す人はそちらもどうぞ。

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