総務省の家計調査に、二人以上の世帯が外で飲むのに払う「飲酒代」を都市別に並べたランキングがあります。2023年から2025年の平均で、東京都区部は年36,241円。全国の18,073円のおよそ2倍で、並んだ都市の中でいちばん上です。高円寺でどれだけ使われているかまでは分かりませんが、東京で外で飲むのは珍しくない、という背景にはなります。
高円寺の名前から古着屋やライブハウスを連想する人は多いはずで、居酒屋にもその空気が流れ込んでいます。店主の趣味がそのまま壁や棚に出ている店。看板の字が小さくて、入口を見つけるのに一瞬迷う店。チェーンの居酒屋とは入り方の勝手が違う店もあるので、どこを見て決めるかを先に押さえておくと、通りを行ったり来たりする時間が減ります。
見比べるときの四つの軸
- 内装の趣味。雑貨やレコードがぎっしりの雑然とした店か、すっきり整えた店か
- テーマの強さ。音楽や映画など、何かひとつに振り切っているか
- 一人で入りやすいか。カウンターがあるか、常連との距離がどのくらいか
- 何人で入れるか。座敷や個室、大皿や飲み放題があるか
四つ全部を満たす店を探すより、その日の目的で一つか二つに絞るほうが早いです。一人でぼんやり飲みたい夜と、同じ趣味の仲間と盛り上がりたい夜では、合う店がまるで違います。
三つの型に分けて眺める
| 型 | 内装と雰囲気 | 合いそうな人 | 合いそうな場面 |
|---|---|---|---|
| サブカル濃厚型 | レコードやポスター、雑貨が所狭しと並ぶ | 空間そのものを楽しみたい人 | 一人でじっくり、話の種を拾いたい夜 |
| テーマ特化型 | 音楽や映画など一つのジャンルに寄せた内装とBGM | その趣味を分かち合える相手がいる人 | 同じ趣味の仲間との飲み会 |
| 隠れ家・少人数型 | 控えめな看板、短いカウンター、落とした照明 | 静かに話したい人 | デート、二人か三人の集まり |
この分け方は目安で、実際には二つの型が混ざった店のほうが多いかもしれません。それでも看板の主張の強さと、外から見える内装の密度で、どの型に近いかはある程度見当がつきます。
型で決めかねたら、窓越しに見える棚の本やレコードの背表紙を眺めてみてください。店主の好みが少しでも分かれば、入ったあとの会話の糸口にもなります。
一人向けか、何人かで来る向けか
同じ「個性派」でも、カウンターだけの小さな店と、奥に座敷のある店とでは居心地の作り方が違います。
カウンター中心の店は、店主との距離が近いところがあって、常連と店主の会話に自然と混ざれることもあります。逆に言えば、常連の輪ができあがっている時間に入ると、少し外から眺める形になるかもしれません。
座敷やテーブルのある店は、何人かで来る使い方に向いています。大皿や飲み放題を用意している店もあります。どちらが上という話ではなくて、座席の形で向き不向きが変わるだけです。入る前に席の形を外から確かめておくと、外れが減ります。
初めての店は開店直後がいい
常連の多い小さな店は、混んでいる時間に初めて入ると店の流儀が分かりにくいことがあります。お通しがあるのか、注文はどうするのか、何を頼めばいいのか。
開店してすぐの空いている時間なら、店の人と話す余裕があって、その店の決まりも聞きやすいです。常連の輪に入るというより、店主と一対一で話せる時間を先に作っておく感じです。二度目に混んだ時間に入っても、顔を覚えていてもらえれば少し気が楽です。
会計の見当をつけておく
値段は店ごとにばらばらで、お通しやチャージの有無でも変わります。日本フードサービス協会の2025年の年間調査では、居酒屋の客単価は前年比102.4%でした。値上げの波は居酒屋にも来ていて、品書きの値段とチャージの有無は入る前に見ておくほうが、会計で驚かずに済みます。
個性の強い店ほど、値段の話がしにくい空気があるかもしれません。それでも品書きが外に出ていない店に入るときは、最初の一杯を頼むときに「お通しはありますか」と聞いてしまうのが早いです。聞いて嫌な顔をする店は少ないと思います。
居酒屋をめぐる二つの数字
個性派の店が集まる街の先行きを考えるとき、業界全体の数字を二つ並べて見ると面白いです。一つは日本フードサービス協会の2025年の年間調査、もう一つは東京商工リサーチが集計した同じ年の飲食業の倒産です。
| 2025年(前年比) | 売上 | 店舗数 | 客数 | 客単価 |
|---|---|---|---|---|
| 外食全体 | 107.3% | 100.7% | 102.9% | 104.3% |
| 居酒屋 | 104.4% | 99.8% | 101.9% | 102.4% |
外食全体は売上も客数も店舗数も前年を上回りました。居酒屋も売上と客数は伸びていますが、店舗数だけは99.8%と、わずかに減っています。とはいえ大きな減り方ではなく、協会の報告もパブ・居酒屋の店舗数には下げ止まりの傾向が見えるとしています。
東京商工リサーチの集計(負債1,000万円以上)では、2025年の飲食業の倒産は1,002件(前年比1.0%増)で、1996年以降の30年間で初めて1,000件を超えました。このうち資本金1千万円未満の小さな会社が886件で、全体の88.4%。地区別で最も多いのは近畿の341件で、関東はその次の292件、前年より6.1%増えています。
小さな店ほど数字に出やすい
倒産の9割近くが資本金1千万円未満という内訳を見ると、規模の小さな店ほど厳しい年だったのだろうと読めます。協会の報告によれば、客単価の上昇は価格改定が続いたことによるものです。値上げが通るかどうかは店ごとに違うはずで、個性で通われている店は値段以外の理由を持っている分、言い出しやすいのかもしれません。もっとも、これを数字で確かめる方法はありません。
東京商工リサーチは民間の調査会社、日本フードサービス協会は業界団体です。数字の出どころが違うので、並べるときはその点だけ頭に置いておいてください。
ありがちなつまずき
- 内装に惹かれて入ったものの、料理の値段と中身を見ないまま注文してしまう。品書きは最初に一通り目を通す
- 席の少ない隠れ家型に予約なしで行って満席。二人でも電話を一本入れておく
- サブカル濃厚型に初見で入って、常連の会話の輪に戸惑う。開店直後に入り直すと印象が変わることがある
- テーマ特化型に、そのテーマに興味のない人を連れて行く。同行者の好みを先に聞く
- お通しやチャージを確かめずに飲み続けて、会計が思ったより多い。最初の注文のときに聞く
店に入る前に気になりそうなこと
一人でも入りやすい個性派居酒屋はありますか。
カウンター席が中心の小さな店は一人で使いやすい形です。外観や窓越しの様子で、店主との距離感はある程度見当がつきます。
グループでの利用に向いている店の見分け方はありますか。
座敷やテーブル席があるか、大皿料理や飲み放題の案内が出ているかを見ると判断しやすいです。人数が多いときは、席の形を電話で聞いておくと確実です。
初めて高円寺で個性派居酒屋を試すならどう選べばいいですか。
内装の趣味が自分に合いそうな店を、外からの雰囲気で選んでみてください。空いている時間に一人か二人で入ると、店の様子をつかみやすいです。
コンセプトが強い店は料理も期待できますか。
内装の力の入れ方と料理の力の入れ方は別のものなので、店によって差があります。料理を重く見る日は、口コミなどで料理の評判も見ておくと安心です。
予約は必要ですか。
席数が少ない店は満席になりやすいので、少人数でも先に確かめておくと安心です。予約を受けない店もあるので、その場合は混む時間を外して行くのが現実的です。
個性派居酒屋は価格が高めなのでしょうか。
店によって違います。チャージやお通しがある店もあるので、品書きの値段とあわせて入る前か最初の注文のときに確かめておくと、会計で驚かずに済みます。
開店直後の店と長く続いている店、どちらが入りやすいですか。
どちらが入りやすいかは店しだいです。長く続いている店は常連の輪ができていることが多いので、初めてなら混む時間を避けて入ると落ち着いて過ごせます。
高円寺で店を決めるときの順番
- 一人で行くか、何人かで行くかを決める
- その日の気分で型を一つ選ぶ
- 外から看板と内装の密度を見て、型に合う店を二、三軒に絞る
- 席が少なそうなら電話を入れる
- 最初の一杯のときに、お通しとチャージの有無を聞く
ここまで決めておけば、あとは店主の趣味に乗ってみるだけです。一度目で居心地がつかめなくても、二度目に同じ店へ行くと見え方が変わることがあります。高円寺の居酒屋は、その二度目のために一度目があるような店が多い気がします。
出典
- 総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年〜2025年平均)」外食の表の飲酒代(東京都区部36,241円、全国18,073円)(2026年11月3日確認) https://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html 表のファイル https://www.stat.go.jp/data/kakei/zuhyou/rank13.xlsx
- 東京商工リサーチ「2025年「飲食業」倒産 初の 1,000件超」(2026年1月13日)(2026年11月3日確認) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202301_1527.html
- 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告」(令和8年1月26日。外食全体と居酒屋の売上・店舗数・客数・客単価の前年比)(2026年11月3日確認) https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf
居酒屋とお酒の記事をもう少し
一人飲み、クラフトビール、ノンアルコール、隠れ家バーの記事です。