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中央線沿線でクラフトビールを楽しめる店の選び方

品書きに「発泡酒」と書かれたクラフトビールを見て、安いほうの飲み物かと思ってしまう。そういう見方をしていると、果実をたっぷり使った一杯や、スパイスの効いた一杯を素通りすることになります。あの表示は味の上下ではなく、酒税法の区分です。

区分の線がどこに引いてあるかは、公開されている法令と国税庁の資料で読めます。

「発泡酒」の字は税法の区分

酒税法の「ビール」は、アルコール分20度未満で、麦芽、ホップ、水を原料に発酵させたものが基本です。麦や米などの副原料を加えるときは、麦芽の重さがホップと水以外の原料の合計の50%以上であることが条件で、果実やコリアンダーなどの香味料は麦芽の重さの5%までという枠があります。この線を越えると、同じように造っても税法上はビールと呼べません。

果実や香辛料をたっぷり使った銘柄が発泡酒の区分になるのは、この枠を超えることがあるからです。酒類の容器には「品目」の表示が義務づけられていて、「発泡酒」はその品目の名前。味の良しあしとは別の話だと考えてよいと思います。

醸造所を併設した店でも同じことが言えます。酒税法第7条第2項は、酒類の製造免許を受けるのに1年間の製造見込み数量が一定以上であることを求めていて、その量はビールが60キロリットル、発泡酒が6キロリットルです。同じ建物で造った同じような液体でも、原料の配合しだいで品書きのどちらの欄に載るかが変わり、造るための免許も別々です。

2018年の改正で線が動いた

クラフトビールの幅を考えるときに外せないのが、2018年4月に施行された酒税法の改正です。国税庁のQ&Aによると、それまでビールの原料として使う麦芽の重さはホップと水以外の原料の重さに対して67%以上必要でしたが、これが50%以上に引き下げられました。あわせて、麦芽の重さの100分の5の範囲内で、「果実」や「コリアンダー等の香味料」が副原料として新たに加わっています。

時期 ビールの要件
2018年の改正前 麦芽比率67%以上。副原料の範囲も限られていた
2018年の改正後 麦芽比率50%以上。麦芽の重さの5%の範囲で果実やコリアンダー等の香味料も使える

それまで発泡酒だったものの一部は、この改正で品目がビールに変わりました。品書きで「ビール」と「発泡酒」が混ざって並んでいても、それは配合の違いなので、どちらの欄にも気になる銘柄があるなら両方頼んでみるほうが楽しいです。

2026年10月に税率は一本になった

税率のほうにも動きがありました。財務省の資料によると、ビール、発泡酒、新ジャンルのビール系飲料の税率は、2020年10月から3段階で動かして、2026年10月に1キロリットルあたり155,000円(350ミリリットル換算で54.25円)に一本化されました。チューハイなどその他の発泡性酒類の税率は、同じ2026年10月に1キロリットルあたり100,000円へ引き上げられています。

現行の酒税法でも、第23条第1項第1号が発泡性酒類の税率を1キロリットルあたり155,000円、同条第2項がその他の発泡性酒類を100,000円と定めています。

区分で税率が変わらなくなった
ビール系の中で、ビールか発泡酒かで税率の差はなくなりました。税の面からは、配合を区分に合わせる理由が小さくなったと言えそうです。品書きの区分の字から税の高い安いを推し量る意味も、もうありません。

店を見るときの三つの軸

クラフトビールの店を選ぶときは、タップの本数と入れ替えの頻度、テイスティングセットの有無、料理との合わせ方の提案があるか。この三つを見ると判断しやすくなります。

タップが多くて入れ替えが早い店は、来るたびに違う銘柄が飲めます。初めての店ならテイスティングセットのある店が使いやすい。料理との組み合わせを品書きに書いている店は、ビールの説明も丁寧なことが多い気がします。

醸造所の直営店から個人のバーまで規模の幅があるので、雰囲気が合うかどうかも店選びの一部です。カウンターの短い店は一人で入りやすく、テーブルの多い店は人数の融通が利きます。

タイプで味の方向が分かれる

クラフトビールは系統ごとに味の方向がはっきり違います。代表的なものを並べます。

タイプ 味の方向 楽しみ方
IPA系 ホップの苦味と香りが前に出る 苦味の強さを比べながら好みの系統を探す
サワーエール・フルーツ系 酸味や果実の甘みが感じられる 食後の一杯や軽めの一杯に
スタウト・黒ビール系 麦芽の香ばしさとコク チョコレート系のデザートや肉料理と合わせる
ピルスナー系 すっきりした喉ごし 食事の最初の一杯に

IPAは苦味と香りの強さを比べると、自分の好みの系統が見えてきます。フルーツ系やサワーエールは、ビールが苦手だと思っていた人が気に入ることもある系統です。スタウトは料理と合わせて楽しむ人も多いと思います。どの系統も銘柄ごとの差が大きいので、表はあくまで入り口と考えてください。

初めての店での頼み方

  1. テイスティングセットか小さいグラスがあるか聞く
  2. 一杯目は「苦いのが好きか、酸っぱいのが好きか、香ばしいのが好きか」の一つだけ伝える
  3. 二杯目は一杯目との違いで頼む。「さっきより苦くないのを」のような言い方で伝わる
  4. 度数はメニューに出ていればそれを見る。出ていなければ店の人に聞く
  5. 料理と合わせるなら、料理を先に決めてビールを選んでもらう

銘柄の名前を覚える必要はありません。気に入った一杯の醸造所の名前を覚えておくと、別の店や酒販店で同じ造り手の別の銘柄を探せます。

度数の高い銘柄を続けて飲むと回りが早いので、間に水を挟むのが無難です。車での来店は避けて、電車で行く前提で計画してください。

価格は店と銘柄で幅がある

一杯の値段は、容量と度数と原料で変わります。限定醸造や輸入の銘柄は通常の品より高いことがあるので、気になる銘柄は値段を見てから頼むと安心です。小さいグラスで何種類か試せる店なら、予算の中で好みを探せます。

持ち帰り用の缶や瓶を売っている店もあります。店で気に入った銘柄を家でもう一度、という楽しみ方をしたいなら、取り扱いがあるか聞いてみてください。

誰と行くかで店が変わる

ビール好きが集まる日なら、タップの多い店で飲み比べると会話が続きます。落ち着いた雰囲気がほしい日は、照明と席の配置が静かな店。一人でふらっと寄るなら、カウンターのある店が居心地よく過ごせることが多いです。

ここは好みが分かれるところですが、一人のときほど店の人と話せる小さな店のほうが、ビールの話が聞けて得だと思います。

こういう日は残念

  • テイスティングセットがあると思って行ったら、その店にはなかった。店のサイトやSNSで先に見る
  • 「発泡酒」の字を見て避けていた銘柄が、果実をたっぷり使った看板商品だった。区分は税法の話と割り切る
  • 度数を見ずに濃い銘柄を続けて、早く酔ってしまった。度数を見て水を挟む
  • 週末に席の少ない店へ予約なしで行って入れなかった。小さい店は予約を考える
  • 限定銘柄の値段を見ずに頼んで会計で驚いた。気になる銘柄は値段を先に見る

注文の前に引っかかること

アルコールに弱くても楽しめますか。

小さいグラスやテイスティングセットのある店なら、少量ずつ何種類か試せます。度数はメニューか店の人に聞いてから選んでください。

IPAとピルスナーはどちらが飲みやすいですか。

銘柄によりますが、ピルスナー系は苦味が控えめですっきりした方向のものが多く、IPAはホップの苦味と香りが前に出る系統です。飲みやすさは人で変わるので、少量で両方試すのが早いです。

フードは頼んだ方がよいですか。

系統ごとに合う料理が変わるので、合わせて頼むと楽しみが増えます。合わせ方は店の人に聞くと早いです。

醸造所直営店と個人経営のバーはどう違いますか。

直営店は自社の銘柄が中心で、バーは店主が選んだ銘柄が並ぶ、という違いになりやすいです。どちらも店ごとの個性が大きいので、品書きを見て決めてください。

予約は必要ですか。

予約なしで入れる店もありますが、席の少ない店や週末は予約があると安心です。店の案内で確かめてください。

季節によっておすすめの銘柄は変わりますか。

季節限定の銘柄を出す醸造所もあります。暑い時期はすっきりした系統、寒い時期はコクのある黒ビール系と、気分で選んでかまいません。限定品は店の発信で確かめてください。

テイスティングセットはどの店でも頼めますか。

全部の店にあるわけではなく、品書きの組み方は店ごとに違います。店のサイトやSNSで先に見ておくと、当日の期待とのずれが減ります。

度数の高いビールはどのくらいありますか。

銘柄で幅があります。度数をメニューに出している店ならそれを見て、出ていなければ店の人に聞いてください。高い銘柄を続けるなら、間に水を挟むと安心です。

お土産用に購入できますか。

缶や瓶で売っている店もあります。気に入った銘柄を持ち帰りたいなら、取り扱いがあるか聞いてみてください。

最初の一杯を頼む前に

「発泡酒」の字は税法の区分で、2026年10月からはビール系の中で税率の差もなくなりました。品書きの区分より、タップの本数と入れ替え、テイスティングセット、料理との合わせ方で店を見て、一杯目は好みを一つだけ伝える。それで十分です。

出典

  • e-Gov法令検索「酒税法」(昭和28年法律第6号)第3条第12号(ビールの定義)、第7条第2項(製造免許の最低製造数量。ビール60キロリットル、発泡酒6キロリットル)、第23条第1項第1号、第2項(発泡性酒類の税率1キロリットルあたり155,000円、その他の発泡性酒類100,000円)(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000006
  • 財務省「酒税に関する資料」のうち「酒税改正(平成29年度改正)について」(ビール系飲料の税率を2026年10月に1キロリットルあたり155,000円(350ミリリットル換算54.25円)に一本化、2020年10月から3段階で実施。その他の発泡性酒類は2026年10月に1キロリットルあたり100,000円)(2026年11月3日確認) https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d07_0.pdf
  • 国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」(令和5年8月。令和8年10月に1キロリットルあたり155,000円に一本化、350ミリリットル換算54.25円)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0023008-027.pdf
  • 国税庁「平成29年度税制改正によるビールの定義の改正に関するQ&A」(平成30年3月、令和元年9月改訂。麦芽比率67%以上から50%以上へ、麦芽の重さの100分の5の範囲で果実やコリアンダー等の香味料を追加、平成30年4月の品目変更、容器への品目表示の義務)(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0018004-031_01.pdf

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