鍋の店を選ぶとき、最初に見るのはスープの種類だと思います。醤油か、味噌か、塩か、白湯か。たしかに大事なのですが、もつ鍋に限っては、もう一つ先に知っておきたいことがあります。
内臓肉には、中心まで火を通して食べる理由がある、ということです。牛のレバーと豚の肉や内臓は、食品衛生法にもとづいて生食用の販売・提供が禁止されています。そのほかの肉や内臓についても、厚生労働省は必要な加熱をするよう情報提供しています。店の案内の読み方にも関わってくる話です。
メニュー表で並べて見る六つの項目
もつ鍋や鍋料理の店は、メニュー表や予約ページで事前に分かることが多いです。比べるときは次の項目を並べてみてください。
- スープのベース(醤油・味噌・塩・白湯など)
- もつの部位を書き分けているか(小腸・大腸・ハツ・ミノなど)
- 野菜や薬味の追加ができるか
- 〆(麺・雑炊など)の選択肢
- コースと単品のどちらで頼めるか、一人前から注文できるか
- 個室・座敷・カウンターなど座席の形
部位を書き分けている店は、それだけ中身の説明に手をかけていると言えます。書いていない店が悪いわけではありませんが、選ぶときの手がかりは多いほうが助かります。
| スープの系統 | 味の方向 | 組み合わせの例 |
|---|---|---|
| 醤油ベース | すっきりしていて具材の味が出やすい | ちゃんぽん麺 |
| 味噌ベース | コクがあり濃いめ | 雑炊・麺 |
| 塩ベース | 素材の風味がそのまま出る | うどん・麺 |
| 白湯・鶏白湯 | まろやかで濃厚 | 麺・雑炊 |
組み合わせは店によって違うので、あくまで目安です。〆が選べる店なら、スープとの相性で決めるより、同席する人のお腹の空き具合で決めたほうが満足度は高い気がします。
生食の禁止と、加熱の目安
食品衛生法にもとづく規格基準で、牛のレバーと、豚の肉・内臓は、生食用の販売・提供が禁止されています。
| 対象 | 生食用の販売・提供が禁止された時期 | 厚生労働省が挙げる主なリスク |
|---|---|---|
| 牛の肝臓(レバー) | 2012年(平成24年)7月から | 腸管出血性大腸菌 |
| 豚の肉・内臓 | 2015年(平成27年)6月12日から | E型肝炎ウイルス、サルモネラ属菌、カンピロバクターなど |
厚生労働省のページによると、牛レバーは内部からも腸管出血性大腸菌が検出されたことが報告されていて、2〜9個の菌の摂取で食中毒が発生した事例も報告されています。どちらのページにも「新鮮」かどうかは関係ないと書かれています。
加熱の目安
厚生労働省は、牛レバーや豚の肉・内臓を調理するときの加熱について中心部の温度が63℃で30分間以上もしくは75℃で1分間以上などと示しています。鍋なら、もつに十分火が通ったのを確かめてから食べてください。
東京都保健医療局の解説では、規格基準でいう豚の食肉には内臓が含まれ、豚の食肉は「加熱用」として販売・提供しなければならず、販売・提供するときには中心部まで十分な加熱が必要だという情報を提供しなければならないとされています。客が自分で加熱することを前提に出す場合も、中心部まで十分な加熱を要するといった情報提供が必要です。卓上で火を通す鍋に豚のもつを使う店なら、店が加熱についてひとこと添えるのは、この決まりにかなっています。
もつ鍋のもつが牛か豚かは店によって違います。牛の小腸のように、生食の禁止の対象に名前が出ていない部位でも、油断はできません。厚生労働省は、牛の肝臓に限らず、獣畜や家きんの肉や内臓について必要な加熱を行うよう情報提供するとしています。ここに書いたのは公的機関の公表内容で、体調や持病に関する個別の判断は医療機関に相談してください。
鍋にこだわらない夜もある
内臓肉を煮込んで食べる料理は、鍋だけに限りません。店の厨房で煮込んで出す一皿なら、加熱は店の側で済んでいます。

ねぎがたっぷりのったもつ煮込みです。鍋を囲む人数が集まらない日でも、一皿で内臓肉を楽しめる形です。

おでんの盛り合わせも、だしで煮る料理という意味では鍋に近い一皿です。大人数で鍋を囲むほどではない夜に、煮込みやおでんを選ぶ、という使い分けがあってもいいと思います。
コースにするか、単品で組むか
鍋料理の店には、コースと単品の両方を用意しているところもあります。コースは前菜から〆まで流れが決まっているので、初めての店で注文に迷いにくいです。単品はもつや野菜の追加で量を調整しやすい。飲み放題付きのコースにするかどうかは、滞在時間と人数で考えてください。
価格は店ごと、時期ごとに変わります。各店の公式サイトや予約ページの最新の表示で確かめてください。
初めてもつ鍋を食べる場合
スタンダードなコースがある店で、すっきりした醤油ベースから試すと全体像がつかみやすいです。もつの香りが気になるなら、下処理の方法を説明している店を選ぶ手があります。
食べ慣れている場合
その日の気分で塩や味噌、白湯と系統を変えてみる、部位を指定して追加するなど、単品の組み立てで楽しむ方法があります。
予約の電話で聞いておくこと
コースの中身と一人前の量は先に確かめておくと、量の過不足が起きにくいです。食物アレルギーや苦手な食材がある場合は、予約時に店へ伝えてください。
食品表示基準の表示義務は容器包装に入れられた加工食品が対象で、設備を設けて飲食させる場合は除かれています。店で出す料理には表示の義務がないので、店に直接確かめることになります。表示義務のある特定原材料は、えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の9品目です。
もつ鍋を前にして出る質問
もつ鍋は夏でも食べられますか
通年でメニューに載せている店もあります。提供の有無は季節で変わることもあるので、各店の公式案内で確かめてください。
もつは新鮮なら少し生でも大丈夫ですか
いいえ。厚生労働省は牛レバーや豚の肉・内臓について、新鮮かどうかは関係なく中心部まで十分に加熱するよう求めています。目安は中心部63℃で30分以上、もしくは75℃で1分以上などです。ほかの肉や内臓についても、必要な加熱をするよう情報提供しています。
一人でも入れますか
カウンター席や一人前から頼めるメニューがある店もあります。対応は店ごとに違うので、先に確かめておくと安心です。
〆は必ず頼むものですか
コースに含まれている店もあれば、単品で追加する店もあります。量の配分を考えて決めてください。
もつ鍋以外の鍋も選べますか
すき焼きやしゃぶしゃぶ、水炊きなど複数の鍋を扱う店もあります。しゃぶしゃぶ・すき焼き専門店の違いはしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店の選び方に書いてあります。
子連れでも利用できますか
個室や座敷がある店なら利用しやすいことがあります。座席の形と、子どもの分の注文方法を予約時に確かめてください。
煮えるまで待つのも料理のうち
もつ鍋の店を選ぶときは、スープの系統、もつの部位の書き分け、〆とコースの構成、座席の形を並べて比べると決めやすくなります。内臓肉は鮮度にかかわらず中心まで火を通すもの、と覚えておいてください。
煮えるのを待つ時間も、鍋の楽しみのうちです。価格や営業時間は各店の公式案内で最新のものを確かめてから出かけてください。
出典
- 厚生労働省「牛レバーを生食するのは、やめましょう(「レバ刺し」等)」(2012年7月からの禁止、内部からの菌の検出、2〜9個の菌での食中毒事例、加熱の目安)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syouhisya/110720/index.html
- 厚生労働省「豚のお肉や内臓を生食するのは、やめましょう」(2015年6月12日からの禁止、リスク、獣畜・家きんの肉や内臓への情報提供)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syouhisya/121004/
- 東京都保健医療局「豚の食肉の規格基準」(豚の食肉に内臓が含まれること、加熱用としての販売・提供、情報提供の義務)(2026年11月3日確認) https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/namashoku/butaniku.html
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第1条、第3条、別表第十四(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認)
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