料理が決まって、飲み物の品書きを渡された瞬間が、いちばん迷う時間だと思います。魚だから白、肉だから赤、と決めてしまえば早いのですが、それで本当にいいのかと毎回少し引っかかる。
相性は好みで決まる部分が大きいので、正解を探すより、迷わないための物差しを二つ持っておくほうが役に立ちます。ラベルの読み方と、酒の値段に関わる税の事情も、知っておくと品書きが読みやすくなります。
そろえるか、ぶつけるか
合わせ方の考え方は、大きく二つに分けると見通しがよくなります。料理と飲み物に共通する風味をそろえて一体感を出す「同調」と、脂の多い料理に炭酸や酸味をぶつけて口の中を切り替える「対比」です。
焼き鳥のたれに熟成感のある日本酒を重ねるのは同調。揚げ物にビールを流し込むのは対比。同じ皿でも、狙いによって選ぶ飲み物は変わります。どちらが正しいという話ではありません。
うまくいかないときは、どちらかの風味が強すぎて、もう片方を消してしまっていることがあります。濃い料理には輪郭のはっきりした飲み物を、繊細な料理には香りの穏やかなものを。強さをそろえるだけでも外れは減ります。
ワインは何が前に出るかで決める
ワインは酸味、渋み、甘み、度数の組み合わせで印象が変わります。白は酸が前に出るものが多く、魚介やあっさりした料理と合わせやすい。赤は渋みとコクがあって、肉や脂を含む料理に向く。泡は炭酸のぶん、揚げ物から前菜まで守備範囲が広い。ざっくりこのくらいの見当で、あとは店の人に聞くのが早いです。
自然派を置く店の見方はワインバーと自然派ワインの記事に分けて書いてあります。
日本酒はラベルの名称が手がかり
日本酒で合わせるとき、いちばん頼りになるのがラベルの名称です。吟醸酒、純米酒、本醸造酒といった呼び方は、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」(平成元年11月の国税庁告示第8号、平成2年4月から適用)で要件が決まっていて、満たした酒だけがその名称を表示できます。特定名称は次の8種類です。
| 特定名称 | 使用原料 | 精米歩合 |
|---|---|---|
| 吟醸酒 | 米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下 |
| 大吟醸酒 | 米、米こうじ、醸造アルコール | 50%以下 |
| 純米酒 | 米、米こうじ | 要件なし |
| 純米吟醸酒 | 米、米こうじ | 60%以下 |
| 純米大吟醸酒 | 米、米こうじ | 50%以下 |
| 特別純米酒 | 米、米こうじ | 60%以下または特別な製造方法 |
| 本醸造酒 | 米、米こうじ、醸造アルコール | 70%以下 |
| 特別本醸造酒 | 米、米こうじ、醸造アルコール | 60%以下または特別な製造方法 |
どれもこうじ米の使用割合15%以上が条件で、吟醸酒、大吟醸酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒には吟醸造りで固有の香味があることも求められます。吟醸造りとは、吟味して醸造すること。国税庁の説明では、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有の芳香(吟香)を持たせる醸造を指します。
精米歩合60%は、玄米の表層部を40%削り取ったという意味です。特定名称を表示する酒には、原材料名の近くに精米歩合を書くことが義務づけられています。この義務は平成16年1月1日施行の改正で入ったもので、同じ改正で純米酒の要件から「精米歩合70%以下」が外れました。表の純米酒が「要件なし」なのはそのためです。
もう一つ、令和5年1月1日施行の改正で、製造時期の表示は必要記載事項から任意になっています。ラベルに製造時期がなくても、それだけで古い酒ということにはなりません。
ラベルで分かるのは造り、味は店で聞く
香りの華やかな吟醸系は塩や刺身のような軽い料理と、米のうまみが前に出やすい純米系は煮物や味の濃い料理と。合わせ方の入口はラベルの名称で決めて、二杯目から店の人に寄せていくのが、失敗の少ない順番だと思います。
店の選び方は日本酒が飲める店の選び方にも書いてあります。
ビールは脂を切る役
ビールの炭酸と苦味は、揚げ物や脂ののった肉の後味を切り替える役目を担います。柑橘やハーブの香りを持つクラフトビールなら、香辛料を使った料理と香りを重ねる同調も試せます。銘柄ごとの差が大きいので、料理の味の濃さとそろえるのが基本です。
沿線でクラフトビールの店を探すならクラフトビールを楽しめる店の選び方を見てください。
小皿と温度で試す
チーズやナッツのような小皿は、組み合わせを試す題材として手軽です。クセの少ないフレッシュタイプのチーズは白ワインや軽いビールと、青カビのように塩気の強いチーズは甘みのある飲み物と合わせると対比がはっきりします。燻製やナッツの香ばしさは、渋みのある赤や、コクのある日本酒と重なりやすい。
温度も印象を変えます。冷やすと香りは立ちにくくなるかわりに飲み口がすっきりし、温度が上がると香りが開く。日本酒は同じ銘柄を冷やから燗まで温度違いで出せるので、温かい料理には燗、冷たい前菜には冷や、と料理の温度に寄せる選び方ができます。
飲み物ごとの見当
| 飲み物 | 味わいの方向 | 合わせやすい料理 |
|---|---|---|
| 白ワイン | 酸味が前に出る | 魚介やあっさりした料理 |
| 赤ワイン | 渋みとコク | 肉や脂を含む料理 |
| スパークリングワイン | 炭酸の爽快感 | 揚げ物や前菜など幅広く |
| 吟醸系の日本酒 | 香りが華やか(精米歩合60%以下) | 刺身など軽い味付けの和食 |
| 純米系の日本酒 | 米と米こうじだけで造る | 煮物など濃いめの料理 |
| ビール | 炭酸と苦味 | 揚げ物や脂ののった料理 |
表は入口にすぎません。同じ白ワインでも銘柄で酸の強さはまるで違うので、迷ったら店の人に料理名を伝えて選んでもらうほうが早いです。
家でやるなら手順はこれだけ
- 献立を「脂が多いか少ないか」「塩気が強いか弱いか」「香りが強いか穏やかか」の三つで分ける
- それぞれに同調させるか対比させるかを決める
- 同じ料理に二種類の飲み物を少量ずつ用意して、交互に飲む
- 合った組み合わせを書き留めておく
書き留めたものは、外で注文するときの手がかりになります。味の言葉を知らなくても「家でこれと合わせたら良かった」で店の人には通じます。
2026年10月、ビール系の税は一本に
酒の値段には税も関わっています。財務省の資料によると、ビール系飲料の酒税は2020年10月から3段階で見直され、2026年10月に1キロリットルあたり155,000円(350ミリリットル換算54.25円)に一本化されました。チューハイなどその他の発泡性酒類は、同じ2026年10月に1キロリットルあたり100,000円(350ミリリットル換算35円)へ引き上げられています。清酒や果実酒などの醸造酒類は、それより前の2023年10月に1キロリットルあたり100,000円へ一本化済みです。現行の酒税法でも、第23条第1項第1号が発泡性酒類を155,000円、同項第2号が醸造酒類を100,000円、同条第2項がその他の発泡性酒類を100,000円と定めています。
| 分類 | 現在の税率(1キロリットルあたり) | 一本化・引き上げの時期 |
|---|---|---|
| ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル) | 155,000円(350ml換算54.25円) | 2026年10月に一本化 |
| その他の発泡性酒類(チューハイなど) | 100,000円(350ml換算35円) | 2026年10月に引き上げ |
| 醸造酒類(清酒、果実酒など) | 100,000円 | 2023年10月に一本化 |
ビールか発泡酒か新ジャンルかで税率の差はなくなりました。品書きの区分が税の面から値段に響く場面は減るはずで、銘柄は味の相性で考えやすくなったと思います。
酒を出す店に求められていること
合わせ方を売りにする店でも、酒類を出す以上は法律の決まりがあります。「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」の第1条第3項は、酒類を販売または供与する営業者に対し、20歳未満の人が飲むと知りながら販売・供与することを禁じ、同条第4項は年齢の確認その他の必要な措置を講じるよう定めています。第3項に違反すると、第3条第1項により50万円以下の罰金の対象です。店で年齢確認を求められるのは、この規定に沿った対応です。
同じ第1条の第2項には、親権者などが未成年者の飲酒を知ったときは制止すべきという定めもあり、こちらの違反は第3条第2項で科料の対象とされています。家で合わせ方を試すときも、飲むのは20歳以上に限られます。細かい解釈は条文と所管官庁の案内で確かめてください。
合わせ方で引っかかること
フードペアリングに絶対的な正解はありますか。
同調と対比という考え方の型はありますが、最後は好みで決まる部分が大きく、唯一の正解はありません。
初心者はまず何から試すとよいですか。
揚げ物にビールやスパークリングワインを合わせる対比の組み合わせは違いが分かりやすく、最初の一歩に向いています。
辛い料理にはどんな飲み物が合いますか。
度数の高い飲み物だと辛さが強く感じられることがあるので、炭酸のあるビールや、わずかに甘みのある飲み物から試すと合わせやすくなります。
ノンアルコールでもペアリングは楽しめますか。
炭酸水やお茶も酸味や渋みの度合いが違うので、同じ同調と対比の考え方で組み合わせを楽しめます。20歳未満の人が同席する席では、こちらで合わせてください。
「純米」と「吟醸」はどう違いますか。
国税庁の清酒の製法品質表示基準では、純米酒は米と米こうじだけで造る酒、吟醸酒は精米歩合60%以下の米で吟醸造りをした酒です。醸造アルコールを使わない吟醸酒は純米吟醸酒と表示されます。
温度によって相性は変わりますか。
変わります。冷やすと飲み口がすっきりし、温度が上がると香りが開くので、料理の温度に合わせて飲み物の温度を選ぶと組み合わせの幅が広がります。
家で手軽にペアリングを試すコツはありますか。
普段の料理を脂、塩気、香りの強さで分け、少量ずつ二種類の飲み物を用意して交互に飲み比べると、違いがつかみやすくなります。
一杯目を決めるまで
同調か対比かを決めて、風味の強さをそろえる。日本酒ならラベルの特定名称と精米歩合を見る。ビール系は2026年10月の一本化で税率の差がなくなったので、味で選ぶ。これだけ頭に置いて、あとは料理名を伝えて店の人に選んでもらえば、一杯目で迷う時間はだいぶ短くなります。
出典
- 国税庁「『清酒の製法品質表示基準』の概要」(告示の制定と適用、特定名称8種類の要件、こうじ米使用割合、吟醸造りの意味、精米歩合の表示義務と純米酒の精米歩合要件の削除(平成16年1月1日施行)、製造時期の任意記載化(令和5年1月1日施行))(2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/seishu/gaiyo/02.htm
- 財務省「酒税に関する資料」(ビール系飲料の税率を2026年10月に1キロリットルあたり155,000円(350ミリリットル換算54.25円)に一本化、その他の発泡性酒類は2026年10月に100,000円(350ミリリットル換算35円)へ引き上げ、醸造酒類は2023年10月に100,000円へ一本化)(2026年11月3日確認) https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d08.htm
- 財務省「酒税改正(平成29年度改正)について」(PDF、税率の推移の図)(2026年11月3日確認) https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d07_0.pdf
- 酒税法(昭和28年法律第6号)第23条第1項第1号、第2号、第2項(発泡性酒類155,000円、醸造酒類100,000円、その他の発泡性酒類100,000円)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/328AC0000000006
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(大正11年法律第20号)第1条第2項(親権者等の制止)、第3項(営業者の販売・供与の禁止)、第4項(年齢確認その他の必要な措置)、第3条第1項(50万円以下の罰金)、第2項(科料)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC1000000020
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カウンター割烹の使い方、食べ放題に頼らない焼肉店、ジビエや珍味の店。料理の側から店を選ぶ記事です。