辛いものが平気な人と苦手な人が同じテーブルにつくと、タイ料理の店選びは急に難しくなります。パクチーが入っていると手が止まる人がいれば、なおさらです。
ベトナム料理の店なら大丈夫、と思いがちですが、こちらは香草の扱いで好みが分かれます。タイとベトナムは「エスニック」とひとくくりに呼ばれがちなのに、味の組み立てはまるで別物です。タイ政府の認定制度と、日本で暮らすベトナム国籍の人の数は、店を考えるときの材料になります。
辛さを重ねる料理と、だしで食べる料理
| タイ料理 | ベトナム料理 | |
|---|---|---|
| 味の軸 | 辛味、酸味、甘味、塩味を重ねる | だしのスープと生の香草 |
| 看板になりやすい料理 | トムヤムクン、グリーンカレー、ガパオライス | フォー、生春巻き、バインミー |
| 店の個性が出やすいところ | 辛さの段階とハーブの使い方 | スープの味と添える香草の種類 |
| 頼むときの一言 | 辛さの希望、パクチーの要否 | 香草の要否、麺の量 |
大ざっぱな分け方ですが、店を選ぶときはこのくらいの粗さでちょうどいいと思っています。どちらの料理も、日本向けにどこまで調整しているかは店によってまちまちです。辛さとパクチーの好みは注文のときに先に言う。これだけで、初めての店での失敗はかなり減ります。
入口のマークで分かること
タイ料理店の入口や店内に「タイ・セレクト」のマークがあれば、タイ国商務省国際貿易振興局の認定を受けた店です。公式サイトによると、日本にありながら本場のタイ料理を提供する店に与えられる認定マークで、制度は1998年に始まりました。店はその種類、装飾、料理の質、サービスの優秀さ、シェフの技術などで評価され、「カジュアル」「1つ星」「2つ星」「3つ星」の4段階に分かれます。
| 認定の条件(公式サイトの説明から) |
|---|
| 申請の時点で営業開始から6か月以上たっていること |
| メニューの60%以上がタイ料理であること |
| シェフがタイ料理のシェフとして訓練を受け、経験を積んでいること |
| タイ香り米をはじめタイの調味料を使い、本場のタイの味付けを再現した質の高い料理を出していること |
星の数は、公式の説明を読むかぎり店の種類や装飾、サービスまで含めた分類で、料理の順位表ではありません。ふだんの昼ご飯ならカジュアルの店で十分ですし、人を招く日なら星のついた店を候補に入れる、という使い分けになります。
認定がない店が本場の味ではない、という意味でもありません。申請していない店もあるはずで、マークはあくまで初めての街で店を選ぶときの手がかりの一つです。認定店は公式サイトの店舗一覧で探せます。
沿線の認定店は少ない
その店舗一覧では、東京都の認定店は90店です。区ごとの件数を見ると港区15店、新宿区13店、千代田区12店と都心に寄っていて、杉並区と中野区は0店でした。23区の外は4店で、そのうち中央線が通る市では武蔵野市(吉祥寺本町)、三鷹市(井の頭)、立川市に1店ずつ載っています。沿線で、マークだけを頼りに店を選ぶのは難しそうです。
沿線で店を選ぶなら、マークの有無で決めずに、品書きの構成や店の発信を合わせて見るほうが現実的です。後半に挙げた失敗の型が、そのときの手がかりになります。
ベトナム国籍の人が増えている
出入国在留管理庁の発表によると、令和7年(2025年)末の在留外国人数は412万5,395人で、前年末から35万6,418人(9.5%)増えました。過去最高の更新で、初めて400万人を超えています。国籍・地域別では中国が930,428人で1位、ベトナムが681,100人で2位です。
| 国籍・地域 | 2025年末の在留者数 | 前年末からの増加 |
|---|---|---|
| 中国 | 930,428人 | 57,142人 |
| ベトナム | 681,100人 | 46,739人 |
これだけの人が日本で暮らしていれば、現地の味を求める客も、その人たちに向けて料理を出す店もあるはずです。統計から店の数までは分かりませんが、日本人向けの味に寄せた店ばかりではないかもしれない、と想像する材料くらいにはなります。
店を見分ける手がかり
店内の掲示や品書きに現地の言葉が並んでいるかどうかで、その店が誰を客として考えているかの見当がつくことがあります。日本語の品書きと別に現地語の品書きがあれば、客層を考えるヒントです。
料理ごとの見どころ
トムヤムクンとグリーンカレー
タイ料理の看板になりやすい2品です。レモングラスやこぶみかんの葉、唐辛子の効かせ方で、店ごとの違いが出やすいところです。辛さを段階で選べる店なら、最初は真ん中あたりから試すと、次の注文で調整しやすくなります。
フォー
米粉の麺をスープで食べる料理で、添えられた香草やもやし、ライムを足しながら味を変えていく食べ方がよく知られています。スープは店の個性がいちばん出るところなので、最初のひと口は何も足さずに飲んでみることをおすすめします。
バインミー
パンに肉や野菜を挟んだサンドイッチで、持ち帰って食べやすい一品です。食事の時間がずれた日や、席につく時間がない日に使い勝手がいいと思います。
失敗の型と防ぎ方
- 辛さを確かめずに頼み、思ったより刺激が強かった。注文のときに辛さの段階を聞く
- パクチーが苦手なのに伝え忘れた。最初に「パクチー抜き」と頼む
- 昼だけの営業の店に夜行ってしまった。店の公式の発信で営業時間を確かめる
- 本場の味を期待して日本向けの店に入った。タイ・セレクトの認定や現地語の品書きを手がかりにする
四つのうち三つは、注文の前の一言か、出かける前の一度の確認で防げます。残りの一つは、店に入ってみないと分からない部分もあるので、外れたときは次に生かす、くらいの気持ちでいるほうが楽です。
注文の前に知っておきたいこと
辛いものが苦手でもタイ料理は楽しめるか
辛さを段階で選べる店なら、控えめにして頼めます。辛さの希望は注文のときに先に伝えてください。辛くない料理があるかどうかも、店の人に聞くのが早いです。
ベトナム料理はタイ料理より辛くないか
フォーや生春巻きのように、卓上の調味料や香草で自分の好みに寄せていける料理なら、辛さを調整しやすいです。辛さは店や料理によって違うので、心配なら注文のときに聞いてください。
タイ・セレクトとは何か
タイ国商務省国際貿易振興局が、日本にありながら本場のタイ料理を提供する店に与える認定マークです。カジュアル、1つ星、2つ星、3つ星の4段階があり、制度は1998年に始まりました。認定店は公式サイトの店舗一覧で探せます。
パクチーが苦手な場合はどうすればよいか
注文のときに伝えるのが確実です。後からのせる形の料理なら外してもらいやすく、煮込みに入っているものは抜きにくいこともあるので、料理ごとに聞いてください。
本格的な店かどうかはどこで見分ければよいか
タイ料理ならタイ・セレクトの認定、どちらの料理でも現地語が並んだ品書きや掲示が手がかりになります。手がかりであって保証ではないので、品書きの構成も合わせて見てください。
タイ・セレクトの星の数は、料理のおいしさの順位か
公式サイトでは、店の種類、装飾、料理の質、サービスの優秀さ、シェフの技術などに基づいて評価すると説明されています。カジュアルの店も、タイの調味料を使って本場の味付けを再現していることが認定の条件です。
注文の一言から
タイ料理なら辛さ、ベトナム料理なら香草。その一言を先に言えるかどうかで、初めての店の印象はかなり変わります。マークや統計は店を絞るための道具で、席についてからの一言のほうが、その日の食事には効きます。
ほかの国の料理も含めた店の選び方は中央線沿線のエスニック料理店を楽しむコツをどうぞ。
出典
- タイ・セレクト公式サイト「タイ・セレクトとは」(認定の趣旨、評価の観点、4段階、制度開始年、認定の条件。2026年11月3日確認) https://thaiselect.jp/about/
- タイ・セレクト公式サイト 店舗一覧(東京都90店、区ごとの件数、各店の所在地の表示。2026年11月3日確認) https://thaiselect.jp/restaurants/ (トップページ https://thaiselect.jp/)
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(在留外国人数の総数と国籍・地域別の人数。2026年11月3日確認) https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
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