駅前の通りを歩いていて、タイ、ベトナム、ネパール、インドネシア、韓国と、看板に並ぶ国の名前が増えたなと感じる人は多いかもしれません。店の数までは統計で追えませんが、日本で暮らす外国の人の数そのものは確かに増えています。出入国在留管理庁の発表によると、2025年末の在留外国人は412万5,395人。前年末から35万6,418人、率にして9.5%増えて、初めて400万人を超えました。
そのうち東京都は80万1,438人で、全国の19.4%です。この数字が沿線の店の数を示すわけではありません。それでも、新しい国の料理の店を見かける理由の一つとしては想像しやすいと思います。
どの国の人が多く、どの国の人が増えているか
同じ発表から、国籍・地域別の人数を並べておきます。
| 国籍・地域 | 2025年末の在留外国人数 |
|---|---|
| 中国 | 93万428人 |
| ベトナム | 68万1,100人 |
| 韓国 | 40万7,341人 |
| フィリピン | 35万6,579人 |
| ネパール | 30万992人 |
| インドネシア | 26万6,069人 |
人数の多さと、増え方の速さは別の話です。前年末からの増加を上位10か国・地域の中で見ると、ネパールが6万7,949人、インドネシアが6万6,245人、中国が5万7,142人、ミャンマーが4万7,993人、ベトナムが4万6,739人と続きます。韓国とブラジルを除く8か国・地域は前年末より増えていて、スリランカは2024年末の12位から9位に上がりました。
中国や韓国の料理は、前からなじみのある人が多いでしょう。いっぽうネパールやミャンマー、スリランカの店は、ここ数年で目にするようになった、という人もいると思います。同郷の人が通うような店なら日本向けに味を変えていないこともありそうで、そこが面白いところでもあり、初めてだと少し身構えるところでもあります。
現地の味か日本向けか、外からは分からない
同じ国の料理でも、店によって味の寄せ方は違います。現地の味をそのまま出す店もあれば、日本で長く営業するうちに辛さや香りをやわらげた店もあります。どちらが上という話ではなくて、その日の自分や同行者に合うほうを選べばいいだけです。
困るのは、店構えやメニューの写真だけでは、その区別がつかないことです。
だから注文のときに「辛さは本場どおりですか」と一言聞いてしまうのが早いと思います。返ってくる答えで、その店が辛さの相談に慣れているかどうかも見えてくるはずです。慣れている店は、聞かれる前から段階を示してくれることもあります。
国ごとの味の傾向は、一言では言い切れないと思います。同じタイ料理でも地方や店で違いますし、「あっさり」「こってり」の感じ方は食べる人によっても違うからです。看板の国名は入口であって味の保証ではない、くらいに考えておくと気が楽です。
ハラールとベジタリアンは店の方針を読む
観光庁の「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月)は、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリムの人は個人ごとに規範の守り方が違うため、対応している内容をポリシーという形で明示することが重要だとしています。ポリシーは店頭への掲示やSNSなどへの投稿で明示しましょう、という書き方です。
裏を返せば、客の側はその掲示や投稿を探せばいいということになります。「ハラール対応」の一言だけか、どの食材を使い、どこまで対応するのかまで書いてあるか。その差は、店がどれだけ考えて準備しているかの見当をつける材料になります。同じガイドは、ベジタリアン・ヴィーガンとムスリムの両方が楽しめる共通対応メニューを用意できるとも書いています。
誰かを連れて行く立場なら、店に聞く前に本人に聞くほうが順番として自然だと思います。何をどこまで避けたいのかは人それぞれ、というのがガイドの前提でもあります。
対応の中身は掲示とSNSで確かめる
店頭の掲示やSNSの投稿に、対応の範囲が具体的に書かれているかを見ます。書いていなければ、予約の電話で聞くのが確実です。当日に席で聞くと、店の側が困ることもあります。
初めての店で頼む順番
- セットや定食があれば、一度目はそれにする。何を主役にしている店か、店の側が教えてくれる形になります
- 辛さを選べる店なら標準で。選べない店なら「本場の辛さですか」と聞く
- 香草が心配なら、抜けるか減らせるかを注文の前に聞く。出てきてからでは戻せません
- 卓上の調味料は、一口そのまま食べてから足す。最初からかけると、店の味付けが分からなくなります
- 気に入った料理の名前を覚えて帰る。別の店で同じ料理を頼むと、店ごとの違いが見えてきます
この中でいちばん効くのは、たぶん最後の一つです。料理名を一つ覚えるだけで、次の店選びがかなり楽になります。
辛さと香草、注文のときに聞くこと
| 聞きたいこと | 聞き方 | 答えで分かること |
|---|---|---|
| 辛さ | 辛さは選べますか | 段階があるか、固定か |
| 香草 | パクチーは抜けますか | 抜き・減らしに慣れているか |
| 味の方向 | 現地の味に近いですか | 日本向けに調整しているか |
| 食材 | この料理に何が入っていますか | 食材の説明に応じられるか |
「中辛」が何を指すかは、店ごとに違うと考えておいたほうが安全です。別の店の中辛と同じとは限りません。一度目は標準で頼んで、二度目から上げ下げするほうが外れが少ないと思います。
香りについても同じで、香草や発酵調味料の強さは店の方針で決まります。苦手な食材がある人は、材料を聞いてから頼むほうが安心です。忙しい時間帯は手短に聞くのが礼儀かもしれません。
こういうときに困る
- 辛さを聞かずに頼んで、同行者が途中で手を止めた
- パクチー抜きを頼み忘れて、出てきてから気づいた
- ハラール対応と聞いていたのに、対応の範囲が思っていたより狭かった。掲示やSNSで範囲を確かめていなかった
- 夜に行ったら昼だけの営業だった。営業時間は店の案内で確かめる
- 卓上の調味料を最初からかけて、店の味付けが分からなくなった
どれも、注文の前の一言か、出かける前の一度の確認で避けられるものです。
注文の前に気になること
辛いものが苦手でも楽しめますか
辛さを選べる店なら、辛さを抑えて頼めます。選べない店でも、辛味を別添えにできるか聞いてみてください。聞き方は「辛くないものはありますか」で十分です。
パクチーが苦手な場合はどうすればよいですか
注文のときに「パクチー抜きで」と伝えると、応じてくれる店があります。出てきてからでは直せないので、頼むときに言うのが確実です。
一人でも入りやすいですか
カウンター席のある店や、セットメニューのある店は一人でも入りやすいです。昼どきなら一人客も目立ちにくいと思います。
複数の国の料理を一度に楽しめる店はありますか
アジア各国の料理を一つの店で出すところもあります。一度にいくつかの国の味を試せるので、どの国から入るか決めかねているときの入口になります。
予約は必要ですか
席の少ない店では、混む時間帯は予約しておくと待ち時間を減らせます。予約を受けるかどうかは店の案内で確かめてください。
テイクアウトはできますか
持ち帰りに応じる店もあります。持ち帰ったら早めに食べてください。
ベジタリアン向けのメニューはありますか
肉や魚を使わない料理を用意している店もあります。ただしスープの出汁や魚醤に動物性の原料が入ることがあるので、どこまで除けるかを店に確かめてください。観光庁のガイドは、店が対応内容をポリシーとして明示することを勧めています。
一皿目を決めるまで
在留外国人は400万人を超えました。沿線でどの国の料理に出会うかは、これからも変わっていくのかもしれません。看板の国名に引かれて入って、辛さと香草だけ先に聞いて、セットを一つ頼む。それで店の輪郭はつかめます。二度目に何を頼むかは、一度目に覚えた料理名が決めてくれます。
出典
- 出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」(在留外国人数、国籍・地域別の人数と増加数、都道府県別。2026年11月3日確認) https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html
- 観光庁「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」(令和6年4月。ポリシーの明示、掲示やSNSでの表示、共通対応メニュー。2026年11月3日確認)
- NPO法人 日本ハラール協会(言葉の意味を調べる確認先。2026年11月3日確認。店ごとの対応の裏付けではありません)
- 消費者庁「食物アレルギー表示に関する情報」(同じく確認先。2026年11月3日確認)
タイとベトナムの店をもっと詳しく
本格派の見分け方は中央線沿線のタイ料理・ベトナム料理店、本格派の見分け方に書いてあります。