野菜350グラム、果物200グラム。厚生労働省の告示が令和14年度の目標として掲げている、摂取量の平均値です。スムージー一杯でこの数字に近づけるかどうかは別として、スタンドの前で思い出すと少し面白い数字です。
もう一つ。カップに書かれた「ジュース」と、紙パックに書かれた「ジュース」は、言葉の重さが違います。片方には内閣府令の定義があって、もう片方は店が付けた呼び名です。中央線沿線のスタンドで一杯を選ぶとき、この違いを知っていると品書きの見え方が変わります。
店を見るときの五つの手がかり
- 使う野菜や果物の種類と、産地や仕入れ先を示しているか
- 注文を受けてから作るのか、作り置きやボトル詰めを売るのか
- 砂糖やシロップを加えるかどうか。加えない選び方ができるか
- できあがるまでの時間と、持ち帰りのしやすさ
- サイズの種類と、容量ごとの値段
どれも店の案内や品書き、店先の掲示で分かる範囲のことです。値段はサイズで変わるので、比べるなら同じ容量に直して見るほうが実態に近いと思います。五つ全部そろった店を探すより、自分がいちばん気にすることを一つ決めて、そこだけ見るほうが早いです。
作り方で店を四つに分ける
| 型 | こんな店 | 向いていそうな使い方 |
|---|---|---|
| 注文ごとに作る店 | 頼んでからミキサーやジューサーにかける | 出勤前や外出のついで |
| ボトルで売る店 | あらかじめ作って冷蔵ケースに並べる | 何本か買って帰るとき、時間のないとき |
| カフェ併設の店 | 軽食と組み合わせて出す | 休憩を兼ねた一杯 |
| 製法を看板にする店 | 「コールドプレス」などの製法名を前面に出す | 作り方に興味があるとき |
一つの店が二つの型を兼ねていることもあるので、きっちり分けるより「どちら寄りか」で見れば足ります。
ボトルで売る商品は容器包装に入った加工食品なので、食品表示基準の決まりが関わる側です。ただし第5条には特例があって、食品を作った場所でそのまま売る場合は、原材料名などの表示がなくてもよい決まりです。メーカーの商品を並べている店ならラベルで見比べやすく、店で詰めたボトルなら店に聞くほうが早いと思います。製法を看板にする店は、その製法で何がどう変わるのかを店の説明で読むところから始まります。
「果実ジュース」と名乗れる条件
容器包装に入った果実飲料の区分は、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)の別表第三で定義され、名称の書き方は別表第四で決まっています。
| 区分 | 食品表示基準の定義の要点 |
|---|---|
| 果実ジュース | 一種類の果実の搾汁または還元果汁。これに砂糖類、蜂蜜、糖アルコール、同じ種類の果実の果粒を加えたものを含む |
| 果実ミックスジュース | 二種類以上の果実の搾汁または還元果汁を混ぜたもの(砂糖類などを加えたものを含む) |
| 果実・野菜ミックスジュース | 果実の搾汁に野菜の搾汁などを加えたもので、果汁の重量割合が50%を上回るもの |
| 果汁入り飲料 | 還元果汁を水で薄めたものは、糖用屈折計示度が別表第三の表3の基準の10%以上100%未満で、かつ果汁の重量割合が砂糖類、蜂蜜、水以外の原材料を上回るもの。果実の搾汁を水で薄めたものは、搾汁の重量割合が10%以上で、同じく砂糖類、蜂蜜、水以外の原材料を上回るもの |
果汁入り飲料の名称は「○○%△△果汁入り飲料」と、割合を入れて表示します。この○○は、還元果汁を薄めたものなら表3の基準に対する糖用屈折計示度の割合、果実の搾汁を薄めたものなら搾汁の重量割合です。果粒を加えたものは括弧で「果粒入り」、二酸化炭素を圧入したものは「炭酸ガス入り」が付きます(別表第四)。
気をつけたいのは、果汁入り飲料の条件が一つの数字で決まる話ではないことです。糖用屈折計示度はブリックス度とも書かれる糖の濃さの目安で、表3には果実ごとの基準が並んでいます。還元果汁のものはこの数値と重量割合の二段構え、果実の搾汁のものは重量割合で見ます。「○○%」という字面だけで同じものさしだと思わないほうがよさそうです。
紙パックを手に取ったら、名称の欄を読む。果実ジュースなのか、ミックスなのか、果汁入り飲料なのかは、そこに書いてあります。見た目の印象と名称を見比べるだけでも、選び方が少し変わります。
店で作る一杯に表示はあるか
食品表示基準の第1条は、加工食品や生鮮食品を設備を設けて飲食させる場合には、第40条の規定を除いて適用しない、と定めています。第3条の表示義務も、容器包装に入れられた加工食品を販売する際のもので、設備を設けて飲食させる場合は除かれています。
店内の席で飲む分には、この表示の仕組みの外にあるということです。持ち帰りの一杯がどう扱われるかは条文だけでは決められないので、果物の種類や量、甘みを足しているかが気になるなら、店の掲示や品書きを見るか、注文のときに聞く。それが早いです。
法令の読み方で迷ったら、食品表示基準を所管する消費者庁の案内が確認先になります。店の一杯は、ラベルより会話で中身を知る飲み物だと思っておくと気が楽です。
聞くのが気が引ける、という人もいると思います。ただ、材料を聞かれて困る店は少ないはずです。聞いた答えが具体的かどうかで、その店が材料にどれだけ気を配っているかも少し見えます。
告示が掲げる野菜と果物の目標
厚生労働省の「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(令和5年5月31日厚生労働省告示第207号、健康日本21(第三次))は、令和6年4月1日から適用されています。計画期間は令和6年度から令和17年度まで。計画開始後6年の令和11年度を目途に中間評価、10年の令和15年度を目途に最終評価を行う段取りです。
| 項目 | 指標 | 目標値(令和14年度) |
|---|---|---|
| 野菜摂取量の増加 | 野菜摂取量の平均値 | 350g |
| 果物摂取量の改善 | 果物摂取量の平均値 | 200g |
目標は平均値として書かれています。一人ひとりに同じ量を割り当てる読み方は、告示の文言からは出てきません。スムージー一杯に果物や野菜がどれだけ入っているかは店と作り方で違い、糖分も商品によって差があります。持病や食事の制限がある人は、かかりつけの医師や管理栄養士に聞いてください。ここに書いたのは告示の範囲のことで、医学的な助言ではありません。
スムージーを野菜の代わりにするより、果物の一部として楽しむほうが現実に合っている気がします。数字を気にしすぎると、せっかくの一杯がつまらなくなります。
買ってから気づくこと
- 見た目で選んで、甘さが思ったのと違う。甘みを足すかどうかを先に聞く
- 氷の分だけ量が多く見える。果物や野菜の分量は見た目で決めない
- アレルギーがあるのに材料を聞かずに頼む。店で作る一杯は、使っている食材を注文前に店に聞く
- 紙パックの「果汁入り飲料」を果実ジュースと思って買う。名称の欄を読む
- サイズ違いの値段をそのまま比べる。容量あたりに直してから比べる
店先で迷ったときに
スムージーとフレッシュジュースの違いは何ですか
食品表示基準の定義は容器包装に入った果実飲料の話で、店で作る一杯の「スムージー」「ジュース」は店ごとの呼び名と思っておくと無難です。果物を丸ごと使うのか、搾るのか、何を加えるのかは店に聞くのが確実です。
毎日飲んでも問題ありませんか
糖分や量は商品によって差があるので、ボトル商品なら表示、店で作る一杯なら材料の説明を見ながら決めてください。厚生労働省の告示の目標は平均値として書かれたもので、個人の処方ではありません。持病がある場合は医師に相談してください。
子ども連れでも利用できますか
店先の広さや席の有無は店ごとに違います。ベビーカーで寄るなら、店の案内で席の有無や入口の様子を見ておくと安心です。
予約は必要ですか
店の案内に予約の項目があるかどうかで分かります。注文を受けてから作る店なら、できあがるまでの時間を見込んでおくと待ち時間が気になりにくいです。
季節によってメニューは変わりますか
店ごとに違います。旬の果物や野菜を使うかどうかは品書きや店の案内に出ていることが多いので、目当ての素材があるなら先に見ておいてください。
保存はできますか
ボトル商品は表示された期限と保存方法に従ってください。店で作った一杯の持ちは店に聞くのが確実です。
アレルギーがある場合はどうすればよいですか
店で作る一杯は、使っている食材を注文前に店の人に聞いてください。容器包装に入った商品は、表示を読んでから選べます。
一杯の中身を知る近道
容器に入った飲み物は名称の欄を読む。店で作る一杯は店の人に聞く。この二つを使い分けるだけで、沿線のスタンドで迷う時間はかなり減ります。告示の350グラムと200グラムは頭の隅に置いておくくらいでよくて、あとは好きな一杯を選んで、材料の話を一つ聞いて帰るくらいが楽しいと思います。
出典
- e-Gov法令検索「食品表示基準」(平成27年内閣府令第10号)第1条(適用範囲)、第3条(横断的義務表示)、第5条(義務表示の特例)、別表第三(果実飲料の定義)、別表第四(果実飲料の名称表示)(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- 厚生労働省「国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針」(令和5年5月31日厚生労働省告示第207号、健康日本21(第三次)。計画期間、中間評価と最終評価の時期、野菜摂取量と果物摂取量の平均値の目標)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/content/001102474.pdf
食材と表示の話が出てくる記事
米や卵、鍋の素材の見方を書いた記事です。店選びの考え方が重なります。