業界・制度動向

中央線沿線の飲食店におけるキャッシュレス決済比率の変化

入口に「現金のみ」の紙が貼ってある店と、スマートフォンをかざすだけで会計が終わる店。同じ商店街に並んでいても不思議ではありません。

経済産業省の集計では、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%でした。社会全体では半分を超えているのに、店ごとに見るとまちまち。この差がどこから来るのかは、全国の数字と、現金を扱うときの法律の決まりを知っておくと見え方が変わります。

現金を使わずに払う仕組み

キャッシュレス決済は、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QRコードなどのコード決済で代金を払う方法をひとくくりにした呼び方です。店は決済端末やレジの仕組みを入れて、決済事業者と契約することで対応できるようになります。客が払った代金は決済事業者を通って店に入る形で、ここに手数料の話が絡んできます。

手数料の料率や負担の分け方は、店と決済事業者の契約で決まるものです。金額は契約ごとに違うので、外からは分かりません。

全国の数字は58.0%

経済産業省の発表によると、2025年のキャッシュレス決済比率は58.0%、金額にして162.7兆円でした。発表の関連資料の表では、この58.0%は国内指標の数字です。国の目標は、2030年に国内指標で65%、将来的に80%です。

項目 数値
2025年のキャッシュレス決済比率 58.0%(162.7兆円)
2025年の国際比較指標 46.3%
2030年の中間目標 国内指標で65%(国際比較指標では55%)
将来的な目標 国内指標で80%

ここで「国内指標」という言葉が出てきます。経済産業省は国内指標と国際比較指標を並べて使っていて、国際比較指標の分母には持ち家の帰属家賃なども含まれます。中間目標の65%は2024年の実績と将来的な目標の中間値です。国際比較指標の55%は、2020年から2024年までの実績で国内指標のほうが8〜9%程度高いことを考えて設定された、と説明されています。

数字を見比べるときは、どちらの指標の話かを先に見ておいたほうが安全です。2025年の比率は、58.0%と46.3%で11.7ポイントも違います。

8割強はクレジットカード

決済手段 2025年のキャッシュレス決済額に占める割合 金額
クレジットカード 82.7% 134.6兆円
コード決済 10.2% 16.6兆円
電子マネー 3.7% 6.0兆円
デビットカード 3.4% 5.5兆円

店先でよく見かけるコード決済は、金額で見るとまだ1割ほどです。街の印象と数字の差が面白いところで、算出の注によると、クレジットカードを紐付けて使った分やカードからのチャージ分はこの数字から除かれています。少額の買い物で使われることが多いのかもしれませんが、発表にそこまでは書かれていません。

店が入れる理由、入れない理由

入れる側の利点として考えられるのは、釣り銭の用意や売上金の管理の手間が減ること、レジ締めが早く終わること、店に置く現金が減ることです。現金を持ち歩かない客を逃さずに済む面もあります。

見送る側の事情としてまず思い浮かぶのは手数料です。料率は契約で決まるので一概に言えませんが、売上に対してかかる費用である以上、利益の薄い商いほど判断が慎重になるのは自然なことだと思います。

現金のみの店を見かけたら
全国の比率が6割に近づいても、店ごとの判断は別の話です。手数料の条件は店と決済事業者の契約で決まるものなので、客単価や利益率によって重さの感じ方が違います。現金のみの店を見かけても、遅れているというより、その店なりの計算があると受け取っておくのがよさそうです。

沿線の店だけを数えた統計は見当たらないので、全国の数字はあくまで目安です。

同じ種類の硬貨は20枚まで、という決まり

キャッシュレスに慣れると忘れがちですが、現金の扱いにも法律の決まりがあります。日本銀行法第46条第2項は、日本銀行が発行する銀行券は「法貨として無制限に通用する」と定めています。紙幣は何枚でも通用する、ということです。

硬貨は別です。「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第7条は、貨幣は「額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する」と定めています。額面の20倍は、どの額面でも同じ種類の硬貨20枚のこと。小銭をためて一気に使おうとしたとき、同じ種類の硬貨が20枚を超える分は法貨として通用する範囲の外になります。

条文が定めているのは法貨として通用する限度で、それを超える分を店が受け取ってはいけない、という書き方ではありません。迷う場面があれば店に聞くのが早いです。ここに書いたのは条文の要点で、個別の事案についての法的助言ではありません。

逆に、現金を受け付けない店もあります。入口や品書きに案内が出ている店があるので、現金しか持っていない日は店に入る前に見ておくと安心です。

場面ごとに用意しておくもの

場面 用意しておくと楽なもの
大人数の会食 一括で会計して後で精算する方法を決めておく。送金アプリで分ける手もある
初めての個人店 少額の現金。現金のみの店に当たっても困らない
混む時間のランチ 使う決済手段を先に決めておくと会計が早い
高額になりそうな会計 カードやコード決済の上限を手段ごとに確かめておく

店によって対応する手段が違うので、一つに絞らず、クレジットカードとコード決済、交通系ICなど複数を持っておくと困りにくいです。対応状況は店の公式サイトやSNS、予約サイトの決済欄、入口の表示で見当がつきます。

ポイント還元を気にする人も多いと思いますが、その店で使えるかどうかが先です。使えない手段の還元率を比べても仕方がありません。

会計で止まる場面

  • コード決済だけ持って入った店が現金のみだった。少額の現金を財布に残しておく
  • 小銭を数十枚いっぺんに出して、会計が止まった。同じ種類の硬貨は20枚までが法貨として通用する限度
  • 会食の幹事が個別会計を店に頼んで断られた。一括で払って後で精算する段取りを先に決める
  • 高額の会計でカードの枠が足りなかった。上限は手段ごとに違うので先に確かめる

会計のときに迷いがちなこと

すべての店がキャッシュレス対応しているのか

していません。全国の比率は2025年に国内指標で58.0%まで上がりましたが、現金のみの店も残っているので、初めての店では先に確かめておくと安心です。

QRコード決済とクレジットカード決済はどちらが使いやすいか

どちらが上というより、店がどの手段を入れているかで使えるものが決まります。複数の手段を持っておくと困りにくいです。

キャッシュレス対応の店は現金を受け付けないのか

現金とキャッシュレスの両方に対応する店もあれば、現金を受け付けない店もあります。入口や品書きの案内を見てください。

手数料は利用者が負担するのか

決済手数料は店と決済事業者の契約の中で決まるものです。会計の金額に何か上乗せがあるかどうかは店の案内で確かめてください。

小銭だけでたくさん払っても受け取ってもらえるか

硬貨は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」第7条で額面価格の20倍まで(同じ種類の硬貨20枚まで)が法貨として通用します。それを超える枚数を店が受け取ることを禁じる書き方ではないので、実際の扱いは店に聞いてください。

個人店でキャッシュレスが使えるか事前に調べる方法は

店の公式サイトやSNS、予約サイトの決済欄を見るのが近道です。入口に対応する手段の表示を出している店もあります。

キャッシュレス決済に利用上限はあるのか

上限は手段ごと、契約ごとに違います。高額の会計が見込まれるときは、使う予定の手段の上限を先に確かめておいてください。

今後さらにキャッシュレス化は進むのか

国は2030年に国内指標で65%、将来的に80%という目標を掲げています。手数料などの事情から現金のみを続ける店も残ると思われるので、両方に備えておくのが現実的です。

財布に入れておくもの

2025年の比率は国内指標で58.0%、2030年の目標は65%。数字はそちらに向かっていますが、店ごとの判断は数字どおりには動きません。カードかコード決済を一つと、少額の現金。この二つを財布に入れておけば、どちらの店に当たっても会計で止まりにくくなります。

出典

  • 経済産業省「2025年のキャッシュレス決済比率を算出しました」(2026年3月31日発表。2025年の比率58.0%と162.7兆円、決済手段の内訳、国内指標と国際比較指標の併用、国際比較指標の分母、算出の注、2030年の中間目標65%(国際比較指標で55%)、将来的な目標80%)(2026年11月3日確認) https://www.meti.go.jp/press/2025/03/20260331006/20260331006.html
  • 経済産業省 同発表の関連資料「キャッシュレス決済額・比率の内訳の推移(2010〜2025年)」(2025年の国内指標58.0%、国際比較指標46.3%)(2026年11月3日確認) https://www.meti.go.jp/files/000001765.xlsx
  • e-Gov法令検索「日本銀行法」(平成9年法律第89号)第46条第2項(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000089
  • e-Gov法令検索「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年法律第42号)第7条(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/362AC0000000042

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