業界・制度動向

中央線沿線で外国人経営者が営むレストランの広がり

沿線でネパール料理やインド料理の看板を見かけて、どんな人がどんな手続きを経て店を開いているのだろう、と思ったことはないでしょうか。

手がかりになる数字が一つあります。杉並区に住むネパール国籍の人は4,596人、中野区では4,199人で、どちらの区でも中国に次いで2番目に多い国籍です(東京都の統計、2026年7月1日時点)。ただし、住んでいる人の数と、店を開いている人の国籍は別の話です。統計が示すのは前者だけで、後者を数えた資料は見当たりません。

店を開く側の手続きでは、2025年10月に在留資格「経営・管理」の基準が大きく変わりました。利用する側には関係のない話に見えますが、街の顔ぶれを考えるうえでは知っておいて損はありません。

区や市ごとの数字

東京都総務局統計部の「外国人人口」(住民基本台帳による、2026年7月1日時点)から、中央線沿線の主な区市を抜き出しました。上位3は、統計に国名が載る都全体の上位10か国・地域の中での順です。

区市 外国人人口 多い国籍・地域(上位3)
東京都全体 805,382人 中国、韓国、ネパール
新宿区 51,441人 中国、韓国、ネパール
中野区 27,446人 中国、ネパール、韓国
杉並区 26,159人 中国、ネパール、韓国
武蔵野市 4,514人 中国、韓国、ネパール
三鷹市 5,453人 中国、韓国、ネパール
小金井市 4,304人 中国、ネパール、ベトナム
国分寺市 3,828人 中国、ネパール、韓国
立川市 6,849人 中国、ベトナム、韓国

東京都全体では、1年で4万8,961人増えました。杉並区は前年同月から2,206人の増加です。区や市ごとに上位の顔ぶれが少しずつ違っていて、立川市ではベトナムが2位に入ります。

この表を見て「だから沿線に外国料理の店が多い」と言い切るのは、少し飛躍があります。住む人と店を開く人は重なることもあれば、そうでないこともあります。店の経営者がどこの出身で、どんな経緯で店を開いたかは一軒ずつ違います。ひとくくりに語れる話でもありません。

店を開くまでにかかる手続き

飲食店を開くには、国籍に関係なく営業許可が要ります。食品衛生法第55条は、飲食店営業などを営もうとする者は都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています。東京都の案内では、申請は営業所を所管する保健所が窓口です。

在留資格の扱いは、人によって違います。出入国管理及び難民認定法第19条の活動の制限がかかるのは別表第一の在留資格で、永住者や定住者など別表第二の在留資格は対象外です。別表第一の在留資格で自分の事業を経営する場合に代表的なのが「経営・管理」で、出入国在留管理庁はこの許可基準を改正し、2025年10月16日から施行しました。自分の場合にどうなるかは、出入国在留管理庁の案内で確かめてください。

関わるもの 根拠や内容
飲食店営業許可 食品衛生法第55条。営業所を所管する保健所に申請
食品衛生責任者 営業者が定める(食品衛生法施行規則 別表第十七)。東京都の新規申請では資格を証明するものを出す
在留資格(人によって異なる) 出入国管理及び難民認定法第19条。別表第一の在留資格で経営するなら「経営・管理」など
深夜に酒類を提供する飲食店営業の届出 風営法第33条第1項。営業所ごとに公安委員会へ届出。主食を常に出す店は対象外

2025年10月16日からの「経営・管理」の基準

出入国在留管理庁が2025年10月10日に公表した資料(同月30日更新)によると、主な改正の中身は次のとおりです。

項目 改正後の基準
常勤職員 1人以上の雇用が必要。対象は日本人、特別永住者、入管法別表第二の在留資格を持つ人
資本金等 3,000万円以上
日本語能力 申請者か常勤職員のどちらかが、日本語教育の参照枠のB2相当以上(日本語能力試験N2以上の認定など)
経歴 経営管理や事業に必要な分野の博士・修士・専門職の学位(外国で授与された相当する学位を含む)か、事業の経営または管理について3年以上の職歴
事業計画書 中小企業診断士、公認会計士、税理士のいずれかによる確認が必要
事業所 自宅を事業所と兼ねることは原則として認められない

資本金等とは、会社なら資本金の額や出資の総額のことです。個人事業なら、事業所の確保や雇用する職員の1年分の給与、設備投資の経費など、事業を営むために投下されている総額を指すと資料に書かれています。

すでに「経営・管理」で在留している人の更新には別の扱いがあります。施行から3年後の2028年10月16日までの更新申請は、新しい基準に合っていなくても、経営状況や基準に合う見込みなどを踏まえて判断するとされています。

常勤職員の雇用と3,000万円以上の資本金等が両方求められるので、この在留資格で一人で小さな店を始めるのはハードルの高い基準です。ここに書いたのは制度の概要で、法的な助言ではありません。開業を考えるなら、出入国在留管理庁の最新の案内を確かめ、専門家に相談してください。

利用する側から見ると、この改正は直接関係のない話に見えます。ただ、新しく店を開く人の条件が変わったことは、数年後の街の顔ぶれに影響するかもしれません。どう影響するかは、今の時点では分かりません。

初めての店で見ておきたいこと

  1. 料理の地域を確かめる。同じ「インド料理」でも、地域によって主食やカレーの系統に違いがあると言われます。
  2. 辛さや香辛料の強さの説明があるか、調整できるかを見る。
  3. 写真付きのメニューや多言語の表記があると、注文がしやすい。
  4. ハラルやベジタリアンなど食の制限への対応は店ごとに違うので、必要なら先に聞く。
  5. 支払い方法と営業時間は、店の公式SNSや電話で直近の情報を確かめる。

初めての店では、看板の定番料理から頼むと店の個性がつかみやすいです。メニューの端にある見慣れない料理は、二回目の楽しみに取っておくくらいでちょうどいいと思います。

入る前に知りたいこと

中央線沿線に外国籍の人はどれくらい住んでいますか

東京都の統計(2026年7月1日時点)では、杉並区が26,159人、中野区が27,446人、新宿区が51,441人です。武蔵野市、三鷹市、小金井市、国分寺市、立川市はおよそ3,800〜6,900人です。

ネパール料理の店が多いのはなぜですか

理由を直接示す統計は見当たりません。杉並区や中野区では中国に次いでネパール国籍の人が多く住んでいますが、住む人の数と店の数は別のものなので、関係の有無は言い切れません。

外国籍の人が店を開くのに必要なものは何ですか

国籍に関係なく食品衛生法の営業許可が要ります。在留資格の扱いは人によって違い、永住者など別表第二の在留資格には活動の制限がかかりません。「経営・管理」で新しく経営する場合は、2025年10月16日から資本金等3,000万円以上、常勤職員1人以上の雇用などが基準になっています。

日本語は通じますか

店によって違います。写真付きメニューや多言語の表記がある店は注文しやすいです。

ハラルやベジタリアンに対応していますか

対応は店ごとに違います。必要な場合は予約時や来店前に確かめてください。

支払いはキャッシュレスに対応していますか

小規模な店では現金のみのこともあります。来店前に確かめておくと安心です。

数字と店は別々に見る

沿線の区や市には中国、ネパール、韓国、ベトナムなどの国籍の人が多く住んでいます。それが街の店の顔ぶれにどう表れているかは、店ごとに見ていくしかありません。

店を開く人には営業許可が要り、人によっては2025年10月に基準が変わった在留資格も関わります。利用する側は、料理の地域、辛さの説明、食の制限への対応、支払い方法を先に確かめておくと、初めての店でも頼みやすくなります。

出典

  • 東京都総務局統計部「外国人人口 令和8年」7月 第1表 区市町村別国籍・地域別外国人人口(上位10か国・地域)(令和8年7月1日現在)(2026年11月3日確認) https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/2026/ga26gv0100.csv (一覧ページ https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/2026/ga26010000.htm)
  • 出入国在留管理庁「『経営・管理』の許可基準の改正等について」(令和7年10月10日公表、同月30日更新、令和7年10月16日施行)(2026年11月3日確認) https://www.moj.go.jp/isa/content/001448070.pdf
  • 東京都保健医療局「営業許可・届出の概要」(申請窓口は保健所、新規申請の書類)(2026年11月3日確認) https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/kyokatodokede/youshiki.html
  • 食品衛生法 第55条、食品衛生法施行規則 別表第十七、出入国管理及び難民認定法 第19条・別表第二、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 第2条第13項第4号・第33条第1項(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認)

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