業界・制度動向

インバウンドと中央線沿線の飲食店とは?訪日客増加で変わる客層と対応

「なみじゃない、杉並!」。杉並区が中央線あるあるプロジェクトで使っている合言葉です。高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、西荻窪の四つの街を、ホームページやSNS、観光ガイドマップで発信していて、英語版のサイトと英語・繁体字のFacebookも用意されています。

この地域の発信に、ここ数年の訪日客の増え方が重なっています。数字で見ると、2025年は年間4,268万3,600人。全国の数字なので沿線の人出そのものではありませんが、外国からの客を見かける機会が増えたと感じる人がいても不思議ではない伸びです。

2025年は4,268万3,600人で過去最多

日本政府観光局(JNTO)が2026年1月21日に公表した2025年の訪日外客数(推計値)は4,268万3,600人。前年の3,687万148人から15.8パーセント増えて、年間で過去最多になりました。JNTOの発表では、4,200万人を突破したと表現されています。

項目 2024年 2025年 変化
訪日外客数(推計値) 3,687万148人 4,268万3,600人 15.8パーセント増、年間で過去最多
訪日外国人旅行消費額 8兆1,257億円 9兆4,559億円(速報) 前年比16.4パーセント増、暦年として過去最高

国・地域別の上位三つは韓国、中国、台湾。20の市場が年間累計で過去最高を記録しています。

順位 国・地域 2025年の訪日客数
1 韓国 945万9,600人
2 中国 909万6,300人
3 台湾 676万3,400人

消費額のほうは観光庁のインバウンド消費動向調査の数字で、2025年暦年の訪日外国人旅行消費額は9兆4,559億円(速報)。前年比16.4パーセント増で、暦年として過去最高です。人数が増えて、使う額も増えた一年でした。

2026年8月は前年を下回った

JNTOの訪日外客数(2026年8月推計値)は、2026年9月16日の公表で309万8,900人。前年同月比では9.6パーセント減です。一方で、韓国、マレーシア、メキシコなど14の市場では8月として過去最高を記録しています。全体では前年を下回りながら、市場によっては伸びている。JNTOは下回った理由として、東南アジアを中心に訪日需要が落ち着く時期であることや、航空便の減便、台風による欠航などを挙げています。

月ごとの数字は上がり下がりがあるので、一か月分だけを見て増えた減ったと言うのは早いと思います。年の数字と月の数字は分けて見るのが安全です。

使ったお金のうち、飲食は2兆円を超えている

同じ観光庁の調査で、2025年の消費額を費目別に見ると、宿泊費が36.6パーセントでいちばん多く、買物代27.0パーセント、飲食費21.9パーセントの順です。飲食費の額は2兆711億円。調査の本文には、2024年に比べて宿泊費と飲食費の構成比が増えたと書かれています。

費目 構成比(2025年暦年、速報)
宿泊費 36.6パーセント
買物代 27.0パーセント
飲食費 21.9パーセント(2兆711億円)

消費額のおよそ5分の1が食事に向かっている計算です。全国の数字で沿線の店の取り分を示すものではありませんが、飲食が大きな柱の一つなのは確かです。食事を目当てに動く客が増えたのだとしたら沿線にはうれしい話ですが、構成比が上がった理由までは書かれていないので、ここは想像にとどめておきます。

出国のときにかかる税金は3,000円

観光庁の資料によると、国際観光旅客税は令和8年(2026年)7月1日以降、日本からの出国1回につき3,000円です。令和8年6月30日までに発券された一定の航空券等で出国する場合は、引き上げ前の1,000円が適用される経過措置があります。税収は、快適に旅行できる環境の整備、日本の魅力に関する情報を手に入れやすくすること、地域の文化や自然などを活かした観光資源の整備の3つの分野に活用すると資料にあります。

日本から出国する人にかかる税なので、訪日客だけの話ではありません。国際観光旅客税法は出国の確認を受ける日本人も対象に含めていて(第2条第3号イ、第4条)、海外旅行に出るときも関わってきます。2歳未満の乳幼児などは非課税です。

観光地ではない街を観光にする、杉並区の考え方

中央線あるあるプロジェクトは、杉並区の「良さ」「らしさ」を再発見し、都市観光の視点から集客資源として効果的にPRすることで、区への持続的な集客力を高めていく取り組みです。産業団体やNPOなどとともに実行委員会を設けて進めています。ホームページやSNSからの情報発信、観光ガイドマップの発行、高円寺フェスの共催といった活動もその一つです。区のページでは、多彩な食、文学、音楽、アニメ、ファッション、東京高円寺阿波おどりや阿佐谷七夕まつりなどのイベントを「中央線文化」と呼び、英語の案内でも食や音楽、アニメなどを紹介しています。

有名な観光地とは別の、ふだんの暮らしの面白さで街を観光にする。沿線の街には合った考え方だと思います。英語版の「EXPERIENCE SUGINAMI TOKYO」は、外国からの知り合いに沿線を案内するとき、リンクを送るだけで話が始められそうです。

案内する側が先に見ておくと話が早い
英語版のサイトに載っている街や祭りを先に眺めておくと、相手が何に興味を持ちそうかの見当がつきます。食の話なら、そこから店の候補を絞るのが順番としては楽です。

店の側と客の側、それぞれ確かめること

外国からの客が増えたからといって、沿線の店が一斉に変わるとは限りません。対応は店ごとに違うので、確かめるところは次のあたりです。

言葉の壁は、品書きに写真があるかどうかでだいぶ変わります。店の公式サイトに英語の品書きがあれば、入る前に相手へ送っておくだけで注文が楽になります。なければ写真つきの品書きを指して頼む。それで足りる場面もあります。

気になりそうなこと

中央線沿線で外国人観光客が特に多い駅はどこか

どの駅が多いかは、公式の数字では言い切れません。公式のページで分かるのは、杉並区が高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪の四つの街を英語や繁体字でも発信している、というところまでです。

中央線あるあるプロジェクトとは何か

杉並区の「良さ」「らしさ」を都市観光の視点でPRし、区への持続的な集客力を高める取り組みです。産業団体やNPOなどと実行委員会を設けて進めていて、「なみじゃない、杉並!」を合言葉に、高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪・西荻窪エリアの魅力をホームページやSNS、観光ガイドマップで発信しています。英語版サイトと英語・繁体字のFacebookがあります(杉並区公式サイト)。

2025年の訪日外国人数はどれくらいか

JNTOの推計値で4,268万3,600人。前年比15.8パーセント増で、年間過去最多です(2026年1月21日公表)。

中央線沿線の個人店でもキャッシュレス対応は進んでいるか

店ごとに違います。カードやQRコード決済に対応する店もあれば、現金だけの店もあるので、気になるなら店の案内で先に確かめてください。

観光客増加で地元の利用者に影響はあるか

混み方は店と時間帯で違うので、一概には言えません。英語の品書きや支払い方法の選択肢が増えることは、地元の客にとっても使いやすさにつながる面があります。

数字の見方を一つ

年間4,268万3,600人という数字と、2026年8月の9.6パーセント減という数字は、どちらも本当です。年で見れば大きく伸び、月で見れば市場ごとに分かれている。沿線の店で外国からの客を見かける日が増えたとしても、来月も同じとは限らない。その程度の揺れを前提に、店の側は英語の品書きを一枚用意し、客の側は支払い方法を一つ確かめておく。それくらいの構えでちょうどいいと思います。

出典

  • 2025年の訪日外客数(4,268万3,600人、前年比15.8パーセント増、2024年の3,687万148人、20市場で年間過去最高):JNTO「訪日外客数(2025年12月推計値)」(2026年1月21日公表)、国・地域別の数字:JNTO 2025年年表(PDF)、JNTO訪日外客統計(2026年11月3日確認)
  • 2026年8月の訪日外客数(309万8,900人、前年同月比9.6パーセント減、14市場で8月として過去最高):JNTO「訪日外客数(2026年8月推計値)」(2026年9月16日公表、前年を下回った理由の説明も同じ発表。2026年11月3日確認)
  • 2025年暦年の消費額(9兆4,559億円、前年比16.4パーセント増、2024年の8兆1,257億円)と費目別構成比(宿泊費36.6パーセント、買物代27.0パーセント、飲食費21.9パーセント、飲食費2兆711億円、宿泊費と飲食費の構成比の増加):観光庁「インバウンド消費動向調査2025年暦年(速報)」、同 資料(PDF)(2026年11月3日確認)
  • 国際観光旅客税(令和8年7月1日以降3,000円、経過措置1,000円、2歳未満の乳幼児等の非課税、税収の3分野):観光庁資料(PDF)、国際観光旅客税法 第2条第3号イ、第4条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000016 )(2026年11月3日確認)
  • 中央線あるあるプロジェクト(目的、実行委員会、合言葉、四つのエリア、活動、英語版サイトと英語・繁体字のFacebook):杉並区公式サイト、英語版サイト EXPERIENCE SUGINAMI TOKYO(2026年11月3日確認)

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