秋から冬の終わりにかけては狩猟期間で、「ジビエ」という言葉をよく聞くようになった。厚生労働省のウェブマガジンにそう書いてあります。鹿や猪の肉を探して店を選ぶなら、話題にのぼりやすい季節です。
ジビエは、シカやイノシシなど、狩猟や有害鳥獣の捕獲の対象となり食用にする野生の鳥獣や、その肉のこと。馬刺しやくじら、内臓の珍しい部位のような珍味と一緒に語られることが多いのは、ふだんの外食で出会いにくいという一点が共通しているからで、食材としての素性はまるで違います。
数字を見ると、ジビエの流通はここ数年で大きく動いています。店を選ぶ前に、その数字と、加熱についての国の呼びかけを頭に入れておきたいところです。
令和7年度の数字で見る、ジビエの流通
農林水産省の「令和7年度野生鳥獣資源利用実態調査結果」(令和8年9月30日公表)によると、食肉処理施設で処理された野生鳥獣のジビエ利用量は3,155トンで過去最大でした。前年度より17.8%増えています。解体された頭・羽数は20万3,574頭・羽です。
このうち食肉として販売された量は2,166トン(前年度比25.6%増)。シカが1,662トンで37.2%増、イノシシは459トンで5.4%減でした。食肉の卸売・小売販売数量は1,874トンで、うちシカが1,433トンです。クマは食肉の卸売・小売販売数量が18トンで、前年度比157.1%増でした。
| 項目(令和7年度) | 数量 |
|---|---|
| ジビエ利用量 | 3,155トン(過去最大、前年度比17.8%増) |
| 解体頭・羽数 | 20万3,574頭・羽 |
| 食肉として販売された量 | 2,166トン(前年度比25.6%増) |
| うちシカ | 1,662トン(37.2%増) |
| うちイノシシ | 459トン(5.4%減) |
| 食肉の卸売・小売販売数量 | 1,874トン(うちシカ1,433トン) |
| クマの食肉卸売・小売販売数量 | 18トン(前年度比157.1%増) |
シカが伸びて、イノシシは少し減った。流通の量だけ見れば、シカの肉が市場に多く出ていることになります。店で鹿の料理を見かけることが多いと感じるなら、この数字と無関係ではないのかもしれません。ただ、どの店に何が並ぶかは仕入れ先しだいなので、数字から店の品書きを決めつけないほうがいいと思います。
クマの数字は小さいながら伸び幅が大きく、目を引きます。品書きで見かけたとしても扱いは店ごとにまったく違うはずなので、産地と調理法を聞いてからにしたいところです。
生焼けは危ない、と国が言っていること
厚生労働省のウェブマガジンは、ジビエは牛や豚などの家畜と異なり、飼料や健康状態などの管理が行われていないため、どのような病原体を持っているか分からないとして、生や生焼けの状態で食べるのは大変危険だとしています。E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、寄生虫による食中毒の危険を挙げ、中心部までしっかり火を通すよう、中心温度75℃で1分間以上の加熱を呼びかけています。
中心温度75℃で1分間以上
これが厚生労働省の示す加熱の目安です。温度は客の目では確かめられないので、出てきた肉の中が赤くて不安なら、加熱の具合を聞いて、火を通し直してもらうよう頼んでかまいません。頼みにくい空気の店より、言えば応じてくれる店のほうが長く付き合えると思います。
鹿のローストは中が赤いと見た目は美しいものです。それでも野生の肉については、見た目の美しさより国の目安を優先する。ここは迷わなくていいところだと思っています。体調に関わることは医師に相談してください。
認証は店ではなく、処理する施設に付いている
農林水産省の国産ジビエ認証制度は、食肉処理施設を対象にした認証です。農林水産省のページには、平成30年(2018年)9月7日の第001号から令和8年(2026年)3月4日の第043号まで、33の施設が掲載されています。
認証が付いているのは肉を処理する施設であって、料理を出す店そのものではありません。店の品書きに処理施設の名前や産地が書いてあれば、その施設が認証を受けているかどうかを農林水産省の一覧で照らし合わせることはできます。書いていない店が悪いわけではなくて、書いてある店は聞きやすい、という程度の手がかりです。
産地や施設名を聞いて、答えが返ってくるかどうか。そこで店の姿勢はだいたい分かる気がします。
店の形で変わる、出会える食材
ジビエや珍味を出す店の形はいくつかに分かれます。実在の店の分類というより、品書きの組み立て方の違いとして見てください。
| 店の形 | 品書きの傾向 | 向いていそうな人 |
|---|---|---|
| ジビエを看板にする焼肉店やダイニング | 鹿や猪の肉が中心 | 初めてジビエを試す人 |
| 内臓の珍しい部位を扱う居酒屋 | 少量ずつの一品が中心 | 酒と一緒に少しずつ食べたい人 |
| 郷土色の強い和風居酒屋 | 馬刺しやくじらなど土地の一品 | 郷土料理に興味がある人 |
| フレンチやイタリアンの技法で出す店 | コースの中の一皿としてジビエ | 改まった日に一皿を味わいたい人 |
価格は店と部位でまるで違い、相場を示す公的な統計は確かめられていません。品書きで値段を確かめて、少量から頼むのが無難です。
人数でも店の選び方は変わります。何人かで行くなら、部位の違う皿を分け合える単品中心の店が楽しい。一人ならカウンターのある店で、食材の話を聞きながら一皿ずつ、という使い方が合います。
初めての店で聞くこと、頼む順番
- 単品で頼めるか、コースだけかを確かめる。初めてなら少量ずつ試せる形のほうが無理がない
- 産地や処理施設の名前を聞く。答えが返ってくれば、農林水産省の認証一覧と照らし合わせられる
- 加熱の具合を聞く。中が赤くて不安なら火を通し直してもらう
- 一皿目は流通量の多い鹿肉の、煮込みなどしっかり火の入った料理から
- 気に入ったら、次の皿で猪や別の部位に広げる
臭みが心配なら、下処理や調理法を店に聞いてしまうのが早いです。答え方は店によって違っていて、そこに店の力の入れどころが出ます。
酒は好みで
鹿に赤ワイン、馬刺しに日本酒、という組み合わせの話はよく聞きますが、決まりではありません。店が合わせ方を提案しているなら、それに乗ってみるのが一番簡単です。飲まない人は、料理そのものを主役にすれば十分楽しめます。
こういう日は後悔する
- 初めての食材を大きな皿で頼んで、口に合わなかった。少量の一品かコースで試す
- 目当ての食材が品切れだった。仕入れが限られる食材は、店に有無を聞いてから出かける
- 中が赤い肉を、不安なままそのまま食べてしまった。厚生労働省の目安は中心温度75℃で1分間以上。火を通し直してもらう
- 値段を見ずに頼んで会計に驚いた。部位ごとに値段が違うので、品書きで確かめる
- 人数が多いのに単品の少ない店で、分け合えなかった。人数と目的で、コースの店か単品の店かを選ぶ
ジビエの店で迷うこと
ジビエは臭みが強いというイメージがあるが本当か
臭みの感じ方は料理や部位によって違います。処理施設や産地を品書きに書いている店、調理法を聞けば答えてくれる店から試すと、不安は小さくなります。
ジビエにはどんな旬があるか
厚生労働省は、秋から冬の終わりにかけての時期が狩猟期間で、「ジビエ」という言葉をよく聞くようになったと紹介しています。店によって時期ごとに扱う食材が変わるので、目当てがあれば店に聞いてください。
初めて挑戦するならどの食材がおすすめか
令和7年度の統計では、食肉として販売された量のうちシカが1,662トンで最も多く、流通の量が多い肉です。煮込みなど、しっかり火の入った鹿肉の料理から始めると試しやすいです。
馬刺しやくじらはどこで楽しめることが多いか
郷土色の強い和風居酒屋の品書きで見かけることが多い一品です。産地や部位の種類は店ごとに違います。
コース料理と単品注文、どちらを選ぶべきか
初めてなら、少量ずつ数種類を試せるコース仕立てのほうが無理がありません。人数が多い日は、単品を分け合う形も合います。
価格帯はどのくらいを想定しておけばよいか
店や部位で大きく違い、相場を示す公的な統計は確かめられていません。品書きで値段を確かめ、少量から頼むと予算をつかみやすいです。
予約は必要か
仕入れの量が限られる食材は、行っても品切れのことがあります。目当ての食材があるなら、予約か電話で有無を聞いておくと確実です。
子ども連れでも利用できるか
独特の食材が中心の店なので、子ども向けの品があるかを先に店へ聞いてください。
お酒が飲めなくても楽しめるか
料理そのものを主役にすれば十分です。ソフトドリンクの用意は店ごとに違うので、品書きで確かめてください。
ジビエと家畜肉の味わいの違いはどこにあるか
厚生労働省は、ジビエは家畜と違って飼料や健康状態の管理が行われていないとしています。衛生の面では十分な加熱が前提です。味わいの違いは部位や調理で幅があるので、店に聞いてみるのが早いです。
皿が来る前に
流通の量はシカが大きく伸びていること。中心温度75℃で1分間以上の加熱を国が呼びかけていること。認証は店でなく処理施設に付いていること。この三つを持って店に入れば、品書きのどこを見て何を聞けばいいかが決まります。あとは一皿目を鹿にするか猪にするか、そこだけ迷えば十分です。
出典
- 農林水産省「令和7年度野生鳥獣資源利用実態調査結果(食肉処理業者)」(令和8年9月30日公表。ジビエ利用量、販売量、解体頭・羽数、クマの販売数量)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/jibie/pdf/jibie_25.pdf
- 農林水産省「国産ジビエ認証制度」(食肉処理施設を認証する制度であること、認証施設の一覧、第001号から第043号まで33施設)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/nousin/gibier/ninsyou.html
- 厚生労働省 WEBマガジン「厚生労働」「食中毒予防:ジビエは中心部までしっかり加熱して食べましょう! ~ジビエの生食は危険です~」(狩猟期間、ジビエの説明、家畜との違い、病原体、加熱の目安)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/33.html
食べるものに条件がある日の記事
グルテンフリー、ヴィーガン・ベジタリアン、ジェラートの記事です。ジビエとは方向が違いますが、同行者の条件で店を選ぶときや、食後に甘いもので締めたいときに。