業界・制度動向

飲食店の禁煙・分煙の現状とは?健康増進法と東京都条例の二重構造をわかりやすく解説

飲食店の入口の脇に貼ってある、小さな「禁煙」の標識。あれは店の好みで貼っているとは限りません。東京都のリーフレットは、飲食店は禁煙の場合も店頭に禁煙標識を掲示する義務があると案内しています。

飲食店の喫煙のきまりは、改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例の二つが重なってできています。どちらも2020年4月1日から全面施行されて、多くの人が使う施設は原則屋内禁煙になりました。東京の店は全国のきまりに都の上乗せが加わるので、ほかの地域より一段厳しいと思っておくと見当が合います。

全国のきまりには、小さな既存店の例外がある

健康増進法(平成14年法律第103号)は、飲食店を含む多くの施設を原則屋内禁煙にしています。ただし、この決まりを入れた平成30年の改正法(平成30年法律第78号)の附則第2条に、「既存特定飲食提供施設」という特例があります。

施行のときにすでにあった飲食店のうち、資本金または出資の総額が5,000万円を超える会社(大規模会社)などが営む店と、客席の床面積が100平方メートルを超える店を除いたものがこれにあたり、「別に法律で定める日」までの間、喫煙できる部屋(喫煙可能室)を置けます。期限が日付で切られていないので、いつまで続くかは今の条文からは読めません。

この例外には条件もついています。同じ附則第2条の第3項は、該当することを証明する書類(厚生労働省令で定めるもの)を備えて保存することを求めていて、備え付けず、または保存しなかった者は20万円以下の過料です(同条第8項第1号)。第4項では、喫煙可能室を置いた店が営業の広告や宣伝をするときは、喫煙可能室設置施設である旨を明らかにしなければならないとしています。店の広告に喫煙室の案内が出ているのは、こうした決まりがあるからでもあります。

東京都は「従業員がいるか」で線を引く

東京都受動喫煙防止条例が全国のきまりより厳しいのは、この例外の判定に従業員の有無を加えているところです。東京都のリーフレットの区分はこうなっています。

店の状況 取れる形
従業員がいる飲食店 店内禁煙、喫煙専用室の設置、指定たばこ専用喫煙室の設置のいずれか
従業員がいない飲食店 上の三つに加えて、要件を満たせば喫煙可能室の設置

従業員がいない店が喫煙可能室を置くには、2020年4月1日時点で既に営業していること、客席面積が100平方メートル以下であること、中小企業または個人経営であること。この三つをすべて満たす必要があります。

ここでいう従業員は、労働基準法第9条の労働者です。事業に使用されて賃金を支払われる人のことで、リーフレットは正社員、契約社員、アルバイト、パートなどを挙げています。同居の親族だけを使う場合は除かれます。アルバイトを一人でも雇えば、取れる形は店内禁煙か喫煙室の設置になる。都内の個人店は、この線のどちら側かで喫煙の扱いが変わります。

喫煙可能室を設けた店は管轄の保健所への届出が必要で、営業開始日がわかる営業許可書、客席面積がわかる図面、資本金がわかる書類、従業員がいないことがわかる書類といった保管書類の例もリーフレットに載っています。家族だけで営む小さな店で吸えるとしたら、こうした手続きを踏んだうえでの話です。

喫煙室は四種類あって、飲食できるかが違う

喫煙室の種類 飲食 吸えるたばこ 20歳未満の立入
喫煙専用室 不可 紙巻きを含む全般 禁止
指定たばこ専用喫煙室 可 加熱式たばこのみ 禁止
喫煙目的室(シガーバーなど) 可 全般 禁止
喫煙可能室(既存特定飲食提供施設) 可 全般 禁止

加熱式たばこ専用の喫煙室なら飲食しながら吸えますが、たばこ全般を吸える喫煙専用室は「吸うだけの部屋」で、室内での飲食はできません。喫煙目的室を置けるのは喫煙を主な目的とする施設で、リーフレットはシガーバーなどを例に挙げ、たばこの対面販売をしていること、主食を主として出していないことなどを要件としています。一般的なレストランや居酒屋はあたりません。

どの種類でも20歳未満は立入禁止です。健康増進法第33条第2項は、喫煙専用室の出入口の標識に「二十歳未満の者の立入りが禁止されている旨」を書くことを求めていて、同条第5項は立ち入らせること自体を禁じています。

入口の標識で、入る前に分かる

飲食店は禁煙の場合でも、店頭に禁煙標識を掲示する義務があります。喫煙室を設けた店は、喫煙室の出入口と店頭の両方に標識が要ります。入口を見れば、電話をかけなくても吸えるか吸えないかは分かる仕組みです。

ただし、標識を遠目に見ただけでは種類まで読み取れないこともあります。加熱式たばこ専用の喫煙室がある店で紙巻きを吸おうとして、入ってから気づく人はいそうです。紙巻きにこだわりがあるなら、予約のときに喫煙室の種類まで聞いておくのが確実です。

夜は標識を見落としやすいかもしれません。店のサイトや地図アプリの喫煙欄は、古い情報のまま残っていることもあるので、最後は入口の掲示で確かめるのが無難です。

違反したときの過料

健康増進法第76条は、第32条第3項などの命令に違反した場合や、第33条第3項(店頭の標識)などに違反した場合に50万円以下の過料を定めています。第77条は、第29条第2項の命令に違反した者に30万円以下の過料です。第29条第2項は、喫煙禁止場所で吸っている人に知事が喫煙の中止や退出を命じられるという条文で、店でなく吸う人の側にも関わります。既存特定飲食提供施設の書類を備え付けなかったときの20万円以下の過料は、先に書いた附則第2条第8項のほうです。

条番号を並べると硬い話になりますが、どの過料も対象が条文で細かく決まっています。店を営む側で気になることがあれば、所管の保健所に聞くのが早いです。都の相談窓口もリーフレットに載っています。

吸う人は少数派になっている

厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、現在習慣的に喫煙している20歳以上の人の割合は14.8%で、男性24.5%、女性6.5%。この12年間で見ると、令和4年調査と並んで最も低い値です。

十人のうち吸うのは一人か二人という割合です。店の側から見ると、喫煙室を維持する手間と、吸わない客が入りやすいこととを天秤にかける計算になります。禁煙を選ぶ店があるのは、法律のことに加えて、この数字も関係しているのだろうと思います。

喫煙にこだわる日の探し方
店頭か公式サイトの「禁煙」「喫煙室あり」の表示を見て、加熱式限定かどうかまで予約のときに聞く。個室で落ち着きたいなら個室のある店の探し方も合わせてどうぞ。個室であっても、喫煙室として設けた部屋でなければ屋内禁煙の原則がかかります。

こういう行き違いが起きやすい

  • 「前は吸えた店」の記憶で行ったら、禁煙になっていた。2020年4月に制度が変わっているので、入口の標識で確かめる
  • 喫煙室ありの表示を見て入ったら加熱式専用で、紙巻きは吸えなかった。種類は予約のときに聞く
  • 子ども連れで、喫煙室に一緒に入ろうとした。喫煙室は20歳未満が入れないので、席は喫煙室の外で相談する
  • 家族だけで営む小さな店で吸えるのを見て、同じ規模の別の店でも吸えると思い込んだ。従業員の有無で扱いが違う
  • 店のSNSに「喫煙可」とあるのを見て行ったが、投稿が古かった。日付を見て、迷ったら電話で聞く

喫煙まわりで聞かれやすいこと

中央線沿線の飲食店は基本的に禁煙なのか

2020年4月1日の全面施行以降、飲食店は原則屋内禁煙です。喫煙専用室などを設けた店を除き、屋内では吸えません。入口の標識で確かめられます。

加熱式たばこなら店内で吸えるのか

「指定たばこ専用喫煙室」を設けた店なら、加熱式たばこに限って飲食しながら吸えます。紙巻きたばこは対象外なので、店頭の表示や予約のときに種類を確かめてください。

個人経営の小さな店なら喫煙できるのか

東京都のリーフレットでは、従業員がいない店(同居の親族だけで営む店を含む)で、2020年4月1日時点で既に営業、客席面積100平方メートル以下、中小企業または個人経営の三つをすべて満たす場合に限って喫煙可能室を置けます。アルバイトやパートを一人でも雇っていれば、この例外は使えません。

喫煙室に子どもを連れて入ってもよいか

どの種類の喫煙室も20歳未満は立入禁止で、子どもを連れて入ることはできません。標識にもその旨が書かれています。

禁煙ルールに違反した店はどうなるか

健康増進法第76条は、第32条第3項などの命令違反や第33条第3項などの違反に50万円以下の過料を定めています。既存特定飲食提供施設の書類を備え付けなかった場合は、平成30年改正法の附則第2条第8項で20万円以下の過料です。個別の扱いは所管の保健所に確かめてください。

標識ひとつで足りること

全国のきまりに都の上乗せ。喫煙室は四種類で、20歳未満は入れない。従業員を一人でも雇えば小さな店でも屋内禁煙か喫煙室。覚えることは多そうに見えて、客の側がまずすることは入口の標識を見ることです。紙巻きか加熱式かにこだわる日だけ、予約のときに一言足してください。

ここに書いたのは法令と条例の要点で、法的な助言ではありません。個別の店の扱いは所管の保健所に確かめてください。

出典

  • e-Gov法令検索「健康増進法」(平成14年法律第103号)第29条、第33条、第35条、第76条、第77条、および同ページ収録の改正附則(平成30年法律第78号)第2条(既存特定飲食提供施設の定義、書類の備付けと保存、広告での表示、過料)(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/414AC0000000103
  • 東京都福祉保健局(現 保健医療局)リーフレット「2020年4月から喫煙のルールがかわりました」(従業員の有無による区分、喫煙可能室の要件と保管書類、喫煙室の種類、喫煙目的室の要件、店頭の標識)(2026年11月3日確認) https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/kensui/kitsuen/insyokutentaisaku/kitsuenkanoshitsu/04flyer.pdf
  • e-Gov法令検索「労働基準法」第9条(労働者の定義)、第116条第2項(同居の親族のみを使用する事業)(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査結果の概要」(現在習慣的に喫煙している者の割合。令和7年12月2日公表)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf

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