業界・制度動向

中央線沿線のサステナブル・地産地消レストランに見る取り組み

黒板に「東京産」「生産者直送」「オーガニック」と書いてある店の前で、少し立ち止まる。言葉はどれも気持ちのいいものですが、三つの言葉は重さが違います。東京都には東京産の食材を使う店の登録制度があり、「オーガニック」はメニューに書く分には有機表示の規制の対象外です。その違いを知ってから黒板を読むと、見え方が変わります。

地産地消とサステナブルは言葉の広さが違う

地産地消は、地域で生産された農林水産物をその地域で消費すること。六次産業化・地産地消法と呼ばれる法律の第25条は、これに近いものを「地域の農林水産物の利用」と定めていて、地域で足りないものを他の地域から補って消費する場合も含めています。

サステナブルはもっと広い言葉です。食材の産地に加えて、容器や食器の素材、食品ロスの減らし方、生産者との取引の仕方など、店の運営全体での環境や社会への配慮を含みます。範囲が広い分、店によって指しているものが違います。だから「サステナブル」と書いてある店では、何をしているのかを具体的に見るしかありません。

この法律の正式な名前は「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」で、「地産地消」の語は呼び名のほうに入っています。第41条は、都道府県と市町村に、地域の農林水産物の利用の促進についての計画を定めるよう努めることを求めています。店の心がけだけの話ではなく、自治体の計画の題材でもある、ということです。

東京都が登録している347の店

東京都は、東京産の食材を積極的に使う都内の飲食店を「とうきょう特産食材使用店」として登録しています。令和8年5月25日の東京都の発表によると、登録店舗数は令和8年3月時点で347店舗でした。

主な登録条件は三つです。

  • 東京産農林水産物を概ね年間を通じて使用している
  • 使用する東京産農林水産物をメニュー等で表示している
  • 生産地、流通方法などの情報を来店者に提供している

対象は都内(区部と多摩地域)で営業する飲食店等で、令和8年度の申請期間は5月25日から6月30日まで(必着)でした。登録は外部審査委員の審査で決まり、この回は9月に登録予定とされていました。登録店には、ロゴ入りのPR用ボード(多摩産材製)と登録証が提供されます。

この条件、客の側から読むと便利です。年間を通じて使っているか、メニューに書いてあるか、産地や流通の情報を出しているか。登録店でなくても、この三つを満たしているかどうかで、地産地消の看板の中身をだいたい測れます。登録店は専用のサイトに区市町村別の検索があるので、沿線の店を探す入口になります。ロゴ入りボードを店先に掲げている店なら、それも目印の一つです。

店の取り組みは四つに分けると見やすい

型 主な内容 確かめたい点
食材の産地重視 東京産や近隣県の農産物を仕入れる メニューに産地や生産者名があるか
生産者と直接取引 生産者と直接やり取りして仕入れる 生産者の名前や畑の紹介があるか
資源の循環 容器や食器の素材、食品ロスの削減に配慮する 何をどれだけ減らしたかが具体的か
交流の催し 生産者を招いた催しや収穫体験を行う 開催の頻度や申込方法が示されているか

複数を組み合わせる店もあります。四つのうちどれに力を入れているかは、店の掲示やサイトの書き方から、ある程度は読み取れそうです。「何をどれだけ」の数字がある店は、それだけ自分の取り組みを測っているということなので、信じる材料が一つ増えます。

メニューの「オーガニック」は有機の表示規制の外

農林水産省の「有機農産物及び有機加工食品のJAS規格のQ&A」(問24-7)は、外食や中食でも、持ち帰る商品など販売する食品に「有機」などの表示を貼れば規制がかかるとしたうえで、消費者への情報提供となるチラシ、メニュー、のぼりは規制の対象にならないと説明しています。同時に、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の規制の対象となる場合がある、とも書いています。

つまり、メニューの「オーガニック」の文字は、有機JASの認証で裏づけられているとは限りません。だからといって何を書いてもいいわけではなく、実際より著しく良いものと示す表示は景品表示法第5条の禁止に触れる場合があります。客の側としては、言葉の有無で店を選ぶより、どの農産物がどこから来たのかの記載を見るほうが確実です。

持ち帰りの商品に「有機」と貼ってあれば話は別で、こちらは規制の側に入ります。気になる人は、同じQ&Aを確かめてください。

地産地消をうたう店では、生産者名や産地を具体的に書いているかが判断材料になります。メニューの「オーガニック」は有機JASの表示規制の対象外なので、言葉の有無ではなく中身の記載を見ます。景品表示法の対象になる場合があることは、また別の話です。

食品ロスの数字を頭に入れておく

農林水産省の推計では、2024年度(令和6年度)の食品ロス量は461万トンです。そのうち食品関連事業者から出る事業系食品ロスは237万トンで、内訳は次のとおりです。

業種 2024年度の事業系食品ロス量
食品製造業 110万トン
食品卸売業 9万トン
食品小売業 48万トン
外食産業 70万トン
事業系の合計 237万トン

事業系の食品ロスは2000年度比で57%削減されていて、2030年度までに60%削減する目標が置かれています。農林水産省は「3分の1ルール」といった納品期限の緩和や、賞味期限の延長などを進めています。

外食産業の70万トンは、製造業の110万トンに次ぐ量です。店が「食品ロスを減らしている」と掲げる背景の一つには、この量があるのかもしれません。ただ、店ごとの数字を第三者が確かめているとは限らないので、どれだけ減らしたかの中身を読むのが、客にできる確かめ方です。

向く人、向かない人

その日に入った食材でメニューが決まる店は、献立が変わること自体を楽しめる人に向きます。決まった一品を目当てに行きたい人には、少し不向きかもしれません。産地や生産者の話を聞くのが好きな人には、黒板の文字が多い店ほど楽しいと思います。

逆に、早く食べて早く出たい日には、取り組みの説明が長い店は合わないこともあります。店の方針と自分の目的が合う日に行く。それだけの話です。

産地と表示について聞かれること

地産地消の店は価格が高いのか

一概には言えません。生産者から直接仕入れて流通の手間を減らせる場合もあれば、少量の仕入れで割高になる場合もあって、価格への影響は店ごとに違います。

本当に地元産かどうかはどう確認すればよいか

メニューや店頭に産地や生産者名が具体的に書かれているかが手がかりです。東京都の「とうきょう特産食材使用店」は、使う東京産食材をメニュー等で表示することと、生産地や流通方法の情報を来店者に提供することが登録の条件になっています。

サステナブルな取り組みは味に影響するのか

味は店の腕と食材しだいです。仕入れに合わせて献立を変える店では、時期によって食べられるものが違います。

子ども連れでも利用しやすいか

店ごとに対応が違います。子ども向けの量や椅子の有無を、先に確かめておくと安心です。

予約は必要か

仕入れた量に合わせて提供数を決めている店では、予約で席と料理を押さえておくと確実です。受け付け方は店の案内で確かめてください。

こうした店はどうやって探せばよいか

東京都の「とうきょう特産食材使用店」は、専用のサイトで区市町村別に探せます。登録店は令和8年3月時点で347店舗です。店先にロゴ入りのPR用ボードがあれば、それも目印になります。

環境への配慮はどの程度なされているのか

取り組みの範囲は店によって差があります。何をどれだけ減らしたのか、具体的な中身が書かれているかを見てください。

季節によってメニューが変わるのはなぜか

収穫の時期や量に合わせて仕入れる食材が変わると、通年で同じ献立を出しにくくなります。行くたびに献立が違うことを楽しむ見方もできます。

生産者を直接訪ねることはできるのか

農家の見学や収穫体験を企画する店もありますが、いつでも受け付けているわけではありません。農地は人の土地なので、店や生産者の案内なしに立ち入らないでください。

黒板の前で

「東京産」なら、登録店の条件に照らして産地の表示と情報提供があるかを見る。「オーガニック」なら、メニューの言葉は規制の外だと知ったうえで、農産物の出どころを見る。「食品ロス削減」なら、何をどれだけ減らしたかの数字が見どころです。三つの言葉の読み方が分かれば、黒板の前で立ち止まる時間は短くなります。

出典

  • 東京都「とうきょう特産食材使用店」の募集(令和8年5月25日発表。登録店舗数347店舗、登録条件、対象、申請期間、審査と登録時期、PR用ボードと登録証。2026年11月3日確認) https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2026/05/2026052519
  • 農林水産省「食品ロス量(令和6年度推計値)の公表」(2024年度の食品ロス量461万トン、事業系237万トンの内訳、2000年度比57%削減、2030年度60%削減目標、納品期限の緩和。2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/260630.html
  • 農林水産省「有機農産物及び有機加工食品のJAS規格のQ&A」問24-7(チラシ、メニュー、のぼりの扱いと景品表示法。2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/qa_nousan_kakou.pdf
  • 東京都「とうきょう特産食材使用店」専用サイト(登録店の区市町村別の検索。2026年11月3日確認) https://www.ouenten.metro.tokyo.lg.jp/
  • 地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(平成22年法律第67号)第25条(定義)、第41条(促進計画)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/422AC0000000067
  • 農林水産省「六次産業化・地産地消法について」(法律の呼び名。2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/nousin/inobe/6jika/horitsu.html
  • 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)第5条(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134

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