タパスの始まりには、虫が入らないようにパンと腸詰でグラスにふたをしたという言い伝えがあります。スペイン政府観光局の日本語サイトに載っている話で、同じページには、もともと昼食や夕食の前に食欲をそそるために考案されたものだとも書かれています。一杯に添える小さなものから育ってきたと思うと、何種類も頼んで少しずつつまむ楽しみ方にも納得がいきます。
日本でも、立ち飲みの店やカジュアルなワインの店にバルの看板を見かけます。仕事帰りに一杯とひと皿、気が向けばもう一軒。居酒屋と似ているようで、少し違う使い方ができる店です。
バルという店の使い方
バルは、スペインの酒場にあたる店です。観光局は「タパスをつまみに行く」ことを、バルに行って友だちと話しながらタパスを試すことだと説明していて、何軒かのバルをはしごする楽しみ方も紹介しています。
頼み方の基本は、タパスと呼ばれる少量の料理を何種類か頼んで、ワインやビールと一緒につまむ形です。一皿が小さければ、何種類か並べても食べきりやすくなります。一人で寄るなら少なめに頼んで、足りなければ足せばいいだけです。
立ち飲み中心の店なら、長居しない前提で入ると気が楽です。日本の店には、立ち飲みスペースとテーブル席の両方を用意しているところもあります。腰を落ち着けたい日はテーブル席のある店を、軽く一杯なら立ち飲みの店を選ぶ、という分け方で十分だと思います。
ふたの言い伝えと、ピンチョスの呼び名
タパスの起源について、スペイン政府観光局はさまざまな言い伝えがあると紹介しています。13世紀の王アルフォンソ10世が、ワインと一緒に少量の付け出しを出すよう命じたという話。虫が来ないようにパンと腸詰でふたをしたグラスに注ぐのが、以前の風習だったという話。どれが本当かは決めようがなく、観光局も言い伝えとして並べています。
同じページでは、グラナダ、サラマンカ、ログローニョ、レオンなどがタパスで有名な街として挙がっています。
呼び名の違いも覚えておくと便利です。バスク州ではタパスが「ピンチョス」と呼ばれていて、サン・セバスティアンやビルバオの旧市街が例に挙がっています。日本の店でもメニューにピンチョスと書いてあることがあり、名前が違うだけで戸惑う必要はありません。
小皿に何が並ぶか
よく見かけるのはオリーブ、生ハム、トルティージャ(スペイン風オムレツ)、ガーリックシュリンプあたりです。ここに店独自の小皿が加わるので、品書きは店ごとにかなり幅が出ます。少しずつ多くの種類を試せるのが、この形式の楽しいところです。

タブレットで注文する店なら、こんなふうにタパスとパエリアを同じ画面で見比べられます。小皿を眺めながら、締めに何を頼むかまで見当をつけられるのは便利です。

小皿の店でも、メニューにパスタのような皿が入っていることがあります。小皿だけで足りない日は、こういう一皿を加えると満腹の見当がつけやすくなります。
飲み物は、スペインワインやシェリーの品ぞろえに力を入れる店ならグラスで飲み比べができることもあります。生ビールだけで通す人も、もちろんいます。
居酒屋と並べてみると
| 項目 | バル | 一般的な居酒屋 |
|---|---|---|
| 料理 | 少量の小皿(タパス)が中心 | 一皿の量が比較的多い |
| 飲み物 | ワイン、シェリー、生ビール | ビール、日本酒、焼酎など |
| 利用スタイル | 立ち飲みの一杯から着席の長居まで | 着席が主流 |
表の違いは、あくまで傾向です。小皿中心の居酒屋もあれば、大皿を出すバルもあります。入ってから「思っていたのと違う」とならないように、メニューの写真を先に見ておくと確実です。
グラスワインの裏側にある数字
ワインの値段には酒税が含まれています。国税庁の資料によると、ワイン(果実酒)の酒税は2023年9月まで1キロリットルあたり9万円でしたが、2023年10月から清酒と同じ醸造酒類の区分として10万円になりました。酒税法の条文でも、2026年10月以降の醸造酒類は10万円のままです。
750mlのボトル1本に直すと、67.5円から75円になった計算です(筆者の計算)。1本あたり7.5円の違いなので、グラス1杯の値段を大きく動かす額とは言えません。店のグラスワインの値段は、税よりも仕入れや店の考え方で決まる部分が大きいのだろうと思います。
一方で2026年10月には、ビールの酒税が下がり、チューハイなどは上がりました。この話は立ち飲み文化の記事に書いてあります。グラスワインやビールの実際の価格は、各店の最新のメニューで確かめてください。
品ぞろえと席で候補を絞る
- タパスの種類がどれだけあるか
- スペインワインやシェリーの品ぞろえ(グラスで頼めるか)
- 立ち飲みとテーブル席の両方があるか
- 席料やお通しがあるか
仕事帰りに軽く寄るのか、何人かでじっくり飲むのかを先に決めてしまうと、候補がかなり絞れます。決めずに探すと、立ち飲みの店に四人で行って入れなかった、ということも起こります。
| 確認する点 | 見方 |
|---|---|
| チャージの有無 | 席料やお通しがあるかは会計に効く |
| 1皿の量 | 少量の皿を複数頼む形式か、大皿中心か |
| グラスワインの種類 | グラスで何種類頼めるか |
| 滞在の目安 | 立ち飲み中心の店は長居を前提にしていないことがある |
立ち飲みの値段の見方
席を減らせば同じ面積で受け入れられる人数が増え、滞在時間も短くなりやすいです。回転で値段を抑えやすい形と考えると、長居を前提にしないほうが店とも気持ちよく付き合えそうです。
チャージの話は、聞きにくいようで聞いてしまえば一言で済みます。入口のメニューや店先の案内に書いてあることもあるので、席につく前に目をやっておいてください。
はじめてのバルで出てくる疑問
バルと立ち飲み屋はどう違いますか
立ち飲み屋は立って飲む店の形を指し、バルはスペイン由来の料理と雰囲気を含めたスタイルを指すことが多いです。立ち飲み形式のバルもあります。
タパスの語源は何ですか
はっきりした答えは決まっていません。スペイン政府観光局は起源の言い伝えとして、パンと腸詰でふたをしたグラスの風習の話や、13世紀のアルフォンソ10世の注文の話などを紹介しています。
ピンチョスとタパスは違うものですか
スペイン政府観光局は、バスク州ではタパスがピンチョスと呼ばれていると紹介しています。サン・セバスティアンやビルバオの旧市街が例に挙がっています。
タパスはどれくらい頼めばよいですか
決まった数はありません。最初は控えめに頼んで、足りなければ追加すると頼みすぎを防げます。何人かなら分けながら種類を増やしていけます。
ワインが飲めなくても楽しめますか
生ビールやノンアルコールの飲み物を用意している店もあります。メニューの飲み物の欄を先に見ておいてください。
お通しは必ずありますか
店によって違います。会計に関わるので、気になる場合は入店時に確かめてください。
子ども連れでも利用できますか
立ち飲み中心の店は難しい場合がありますが、テーブル席のある店なら時間帯によって利用できることもあります。事前に確かめてください。
一杯とひと皿から
小皿の種類とグラスワインの品ぞろえ、立ち飲みと着席のどちらがあるか、お通しの扱い。ここを見ておけば、仕事帰りの一杯にも何人かの食事にも使えます。最初は一杯とひと皿だけ頼んで、店の空気を見てから足していくのが、たぶん失敗の少ない入り方です。
出典
- スペイン政府観光局 spain.info「タパス」のページ(タパスの起源の言い伝え、タパスで有名な街、バスク州の「ピンチョス」の呼び名。2026年11月3日確認) https://www.spain.info/ja/supein-tankyuu/supein-tapasu/
- 国税庁「発泡性酒類の段階的な税率変更に係る品目及び税率適用区分の表示方法の手引き」(令和5年8月。果実酒の旧税率9万円/kL、醸造酒類の税率10万円/kL。2026年11月3日確認) https://www.nta.go.jp/taxes/sake/pdf/0023008-027.pdf
- 酒税法 第23条(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認)
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ワインの話をもう少し
タパスとワインの組み合わせは、ワインバーの楽しみ方とも重なります。
- 中央線沿線のワインバー・自然派ワインの店の傾向(タパスとワインの組み合わせはバルとも重なる楽しみ方)