看板はごく小さく、入口は雑居ビルの階段の先。そういうバーを、ここでは隠れ家と呼ぶことにします。決まった定義があるわけではないので、あくまで呼び方の話です。
情報が少ない店ほど、入る前に確かめておきたいことがはっきりしてきます。入口はどこか、初めてでも入れるか、チャージはあるか。それからもう一つ、午前0時を過ぎて酒を出す店にはどんな決まりがかかっているか。ここは風営法の条文が手がかりになります。
入口、受け入れ方、チャージ
表通りの店より情報が少ないぶん、選び方に迷いやすいです。先に確かめておくと、初めての店でも落ち着いて座れます。
- 入口の場所(建物の名前、階数、看板の有無)
- 初めての客を受け付けているか、紹介制や会員制ではないか
- チャージやサービス料の有無と金額
- 予約の可否と席の数
店の公式SNSで営業日や入口の写真を案内していることがあります。口コミの点数より、店が自分で出している情報のほうが当てになると思っています。入口の写真が一枚あれば、階段の前で迷う時間はぐっと減るはずです。
| 確かめること | どこで | 分からないとどうなるか |
|---|---|---|
| 入口と階数 | 公式SNS、地図 | 建物の前で探し回る |
| 一見の客の受け入れ | 公式の案内 | 紹介制の店で引き返す |
| チャージ、サービス料 | 公式の案内、店頭、最初の注文の前 | 会計で戸惑う |
| 予約と席数 | 公式の案内、電話 | 満席で入れない |
| 営業時間 | 公式の案内 | 閉まっている、またはすぐ閉店 |
誰と行くかで変わること
- 初めて隠れ家バーに行くなら、公式の案内で一見の客を歓迎していると分かる店を選ぶ
- 一人で静かに飲みたいなら、カウンター中心の店を混みにくい時間に
- 何人かで行くなら、人数と予約の可否を先に確かめる。貸切の相談ができる店もある
- 記念日に使うなら、予約のときに用途を伝えておく
席の少ない店に何人かで押しかけるのは、店にも先客にも気をつかわせます。人数が三人を超えるなら電話一本入れておくほうが、お互い気持ちよく過ごせます。
一杯目の頼み方
何を飲めばいいか迷ったら、甘口か辛口か、度数は高いほうがいいか低いほうがいいか、好みの系統を伝えればバーテンダーが提案してくれます。初めての店では定番のカクテルから試すと、その店の作り方が分かりやすいです。
ボトルキープに対応する店もあります。通いたい店が見つかったら、聞いてみてください。
お酒は20歳から。二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律は二十歳未満の人の飲酒を禁じていて(第1条第1項)、営業者が二十歳未満の人の飲用と知りながら酒類を出すことも禁じています(第1条第3項)。風営法でも、飲食店営業を営む人は営業所で20歳未満の人に酒類を提供してはならないとされています(第32条第3項が準用する第22条第1項第6号)。車で来た日は飲めません。
午前0時を過ぎて酒を出す店の手続き
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、深夜を午前0時から午前6時までの時間と定めています(第13条第1項)。この法律の「酒類提供飲食店営業」は、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業で、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供するものは除かれます(第2条第13項第4号)。バーは条文に名前が出てくるわけです。これを深夜に営もうとする人は、営業所ごとに、所在地を管轄する公安委員会へ届出書を出さなければなりません(第33条第1項)。届出書には氏名または名称と住所、営業所の名称と所在地、営業所の構造と設備の概要を書き、深夜の営業を始める日の10日前までに出します(施行規則第103条第3項)。
| 営業の形 | かかる手続き |
|---|---|
| 飲食店全般 | 都道府県知事の営業許可(食品衛生法第55条第1項。飲食店営業は施行令第35条第1号) |
| バーなど酒類を提供する店で、午前0時以降も営むもの(主食を常態として出す店を除く) | 上に加えて、深夜における酒類提供飲食店営業の届出(風営法第33条第1項) |
都道府県は条例で地域を定めて、深夜の酒類提供飲食店営業を禁止できます(第33条第4項)。住宅の多い地域で深夜まで開いているバーが少ないとしたら、こういう決まりが背景にあることもあり得ます。
照度は20ルクス、客室は9.5平方メートル
深夜に飲食店営業をする人は、営業所の構造と設備を国家公安委員会規則の基準に合うように維持しなければなりません(第32条第1項)。基準は風営法の施行規則にあります。
| 項目 | 基準 | 条文 |
|---|---|---|
| 客室の床面積 | 一室9.5平方メートル以上(客室が一室だけの場合を除く) | 施行規則第99条第1号 |
| 見通し | 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けない | 施行規則第99条第2号 |
| 施錠 | 客室の出入口に施錠の設備を設けない(営業所の外へ直接通じる出入口を除く) | 施行規則第99条第4号 |
| 照度 | 営業所内の照度が20ルクス以下にならないよう維持できる構造と設備 | 施行規則第99条第5号、計り方は第100条、数値は第101条 |
照度の数値は第99条には書かれておらず、第101条で20ルクスと定められています。暗めの照明は隠れ家の雰囲気の一部ですが、下限はあるわけです。
もう一つ。飲食店営業を営む人は、午後10時から翌日午前6時までの時間に18歳未満の人を客として立ち入らせてはなりません。保護者が同伴する場合は除かれます(第32条第3項が読み替えて準用する第22条第1項第5号)。主食を常態として出す店や、酒類を出さず茶菓類以外の飲食物を常態として出す店はこの制限の対象外ですが(施行規則第102条)、主食を出さずに酒を出すバーは、条文を読むかぎり対象になります。
深夜に営業する飲食店には、構造や照明の基準がかかります。看板を出さないバーでも、午前0時以降に営むなら届出が要るのは同じです。表に情報が出ていないことと、手続きをしていないことは別の話です。ここでは個々の店の届出の有無までは確かめていません。
法律の話はここまでで、どれも制度の概要です。法的な助言ではありません。細かい扱いは所轄の警察署や公安委員会に確かめてください。
残念なパターン
- チャージやサービス料を確かめずに入り、会計で想定より高くなる
- 紹介制の店だと知らずに訪ねて、引き返す
- 看板が控えめで入口が分からず、建物の前で時間を使う
- 予約制と知らずに訪ねて、満席で入れない
- 閉店の時間を見ずに遅く行って、一杯で追い出される形になる
隣の客との距離が近い店では、声の大きさに気を配りたいところです。何人かで行くときは、人数と滞在時間の目安を先に伝えておくと案内してもらいやすくなります。
初めての隠れ家バーで迷うこと
隠れ家バーと一般的なバーの違いは何ですか。
決まった定義はありません。ここでは、外に大きな看板を出さず、入口が分かりにくいバーをそう呼んでいます。手続きの決まりは一般的なバーと同じで、午前0時以降に営むなら公安委員会への届出が要ります(風営法第33条第1項。主食を常態として出す店を除く)。
初めての客でも入りやすいですか。
店によって違います。紹介制や会員制の店もあるので、公式の案内やSNSで初めての客を受け付けているかを確かめておくと安心です。入れたら、好みの系統をバーテンダーに伝えると一杯を選びやすくなります。
予約は必要ですか。
店によって違います。席の少ない店は満席で入れないこともあるので、予約の可否を先に確かめておくと無駄足を防げます。
チャージ料金はどのくらいかかりますか。
金額は店ごとに違うので、目安の金額はここでは示しません。チャージやサービス料の有無と金額は、入る前か最初の注文の前に確かめておくと会計で戸惑わずに済みます。
どうやって隠れ家バーを見つければよいですか。
口コミや知人の紹介のほか、店の公式SNSで営業日や入口の場所を案内していることがあります。入口が分かりにくい店が多いので、地図とあわせて建物の名前や階数を確かめておいてください。
服装に決まりはありますか。
ドレスコードの有無は店ごとに違います。案内に書かれていなければ、店の雰囲気に合わせた服装で十分です。
一人で訪れても浮いてしまいませんか。
カウンター席のある店なら一人でも過ごしやすいです。静かに飲みたいときは、混みやすい時間を外すと落ち着けます。
苦手なお酒がある場合はどうすればよいですか。
苦手な味やアルコールの強さを伝えて相談してください。ノンアルコールのカクテルを用意している店もあります。飲めない日は無理に頼まなくてかまいません。
出典
- 深夜の定義(第13条第1項)、酒類提供飲食店営業の定義(第2条第13項第4号)、届出と記載事項(第33条第1項)、条例による地域の禁止(第33条第4項)、構造設備の維持(第32条第1項)、18歳未満の立入制限と20歳未満への酒類提供の禁止(第32条第3項が準用する第22条第1項第5号、第6号):風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号) https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000122 (e-Gov法令検索、確認日2026-11-03)
- 客室の床面積・見通し・施錠・照度の基準(第99条)、照度の計り方(第100条)、照度の数値20ルクス(第101条)、18歳未満の立入制限の対象外となる営業(第102条)、届出の期限(第103条第3項):風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(昭和60年国家公安委員会規則第1号) https://laws.e-gov.go.jp/law/360M50400000001 (e-Gov法令検索、確認日2026-11-03)
- 営業の許可(第55条第1項):食品衛生法 https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233 、飲食店営業(第35条第1号):食品衛生法施行令 https://laws.e-gov.go.jp/law/328CO0000000229 (e-Gov法令検索、確認日2026-11-03)
- 飲酒の禁止(第1条第1項)、営業者の提供の禁止(第1条第3項):二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC1000000020 (e-Gov法令検索、確認日2026-11-03)
夜の店をもう少し
立ち飲み、深夜の食事、酒屋の一角。夜の過ごし方が違う記事です。