業界・制度動向

中央線沿線の飲食店経営の今|外食売上107.3%と倒産1,002件を公表データで読む

107.3%と1,002件。どちらも2025年の外食について公表された数字で、片方は売上が伸びたことを、もう片方は倒産が増えたことを示しています。沿線で値上げの張り紙やシャッターの下りた店を見かけたとき、この二つを一緒に思い出すと、見え方が少し変わります。

ここに並べるのは業界団体と信用調査会社が公表している数字で、店主に話を聞いたものではありません。沿線の個人店がそのまま映っているわけでもないので、出どころと範囲に気をつけて読む必要があります。

売上107.3%を押し上げたのは客単価

日本フードサービス協会が会員社を対象に、新規店を含めた全店データで集計した2025年の年間の結果では、外食全体の売上は前年比107.3%でした。店舗数は100.7%、客数は102.9%、客単価は104.3%。協会は、物価高と原材料高を背景にメニュー価格の改定が断続的に行われ、客単価の上昇が売上を押し上げたと説明しています。

業態(協会の分類) 売上 客数 客単価
外食全体 107.3% 102.9% 104.3%
ファストフード 107.5% 103.0% 104.4%
ファミリーレストラン 107.2% 103.1% 103.9%
パブレストラン/居酒屋 104.0% 101.3% 102.6%
ディナーレストラン 106.6% 106.0% 100.6%
喫茶 109.8% 101.1% 108.6%

業態ごとに見ると、伸び方の形が違います。喫茶は売上109.8%で客単価108.6%、客数は101.1%ですから、ほとんど客単価で伸びた形です。ディナーレストランは逆で、客単価100.6%とほぼ据え置きのまま、客数106.0%で伸びています。同じ「売上増」でも、お客が増えたのか一人あたりの支払いが増えたのかで、店の手応えはだいぶ違うはずです。

この集計は協会の会員社によるものです。沿線の個人経営の店が、そのまま含まれているわけではありません。全国の傾向を知る数字として読んでください。

客数は増えたのに「頭打ち感」

客数102.9%という数字だけ見れば悪くありません。ただ協会は同じ報告で、消費者の節約志向が強まって、日常は節約してハレの日にお金を使う「消費の選別」が進んでいること、客単価の上昇などで客数の頭打ち感も少しずつ進んでいることを指摘しています。

ファーストフードの持ち帰り米飯・回転寿司は客数が96.0%、ファミリーレストランの焼き肉も98.2%で、前年を下回りました。一方で、パブレストラン/居酒屋とディナーレストランの店舗数は前年を上回り始め、下げ止まりの傾向が見られたとしています。

値上げで売上を保ちながら、客足が細り始めているところもある。平均の数字の下には、そういうばらつきがあります。

倒産1,002件、30年で初めての大台

東京商工リサーチの集計(負債1,000万円以上)では、2025年の「飲食業」の倒産は1,002件(前年比1.0%増)で、1996年以降の30年間で初めて年間1,000件を超えました。

項目 2025年 前年比など
飲食業の倒産件数 1,002件 1.0%増。30年で初の1,000件超
うち資本金1千万円未満の小・零細規模 886件 0.1%減。全体の88.4%
「物価高」倒産 136件 126.6%増
「人手不足」倒産(後継者難を除く) 55件 161.9%増

件数そのものは前年から1.0%増で、急に跳ね上がったわけではありません。目を引くのは原因の内訳です。物価高が原因の倒産は136件で前年の2倍を超え、人手不足が原因のものは55件で2.5倍を超えています。

業種別では、日本料理店の68件が過去30年間で最多、焼肉店の59件、ハンバーガー店の8件、お好み焼き・焼きそば・たこ焼店(粉もん店)の28件は、集計を始めた2009年以降で最多でした。

東京商工リサーチは、2025年11月まで11か月連続で実質賃金がマイナスという状況の下で、物価高に賃上げが追いつかず、値上げは来店客の減少につながりかねないと指摘しています。小・零細規模の飲食業の経営に大きなダメージがある、という見方です。

倒産の9割近くが小・零細規模
資本金1千万円未満の事業者が886件で、全体の88.4%を占めます。東京商工リサーチは、小規模な飲食店ほど価格転嫁が難しく、費用の上昇を吸収できないと見ています。

二つの数字は食い違っていない

売上が伸びているのに、倒産は30年で初めて1,000件を超えた。並べると矛盾して見えますが、集計の範囲が違います。107.3%は協会の会員社の売上で、1,002件は全国の飲食業の倒産です。同じ店を数えた数字ではありません。

そのうえで、二つをつなぐ線は引けます。値上げで客単価を上げるには、品書きの組み直しや価格の見直しに手を回す余裕が要ります。東京商工リサーチの見方では、小規模な店ほどそれが難しく、費用の上昇を吸収しにくいとのことです。倒産の9割近くが小・零細規模だったことは、その見方と矛盾しません。もっとも、飲食業にはもともと小さな事業者が多いはずなので、割合だけで決めつけることもできません。

ただ、これは数字から読める構図であって、沿線の個々の店がどうかは別の話です。同じ駅前でも、常連で持っている店と、新しい客を呼び続けなければならない店とでは、値上げの効き方が違います。

客の側にできる小さなこと

値上げや営業時間の短縮を、店が続けるための調整として受け止める見方もできます。好きな店が開いている時間に通うこと、予約したら守ること。地味ですが、これ以上に効く応援を思いつきません。

個人店を応援したい気持ちと、財布の事情は別です。実質賃金のマイナスが続くような時期に、外食の回数を増やし続けるのは無理があります。回数を増やせないなら、行く店を絞って同じ店に通うほうが、店の側には読みやすい客になります。

数字と店について聞かれそうなこと

外食の売上は増えているのですか

日本フードサービス協会の会員社の集計では、2025年の売上は前年比107.3%でした。客数は102.9%、客単価は104.3%で、伸びの中心は客単価の上昇です。

なぜ倒産が増えているのですか

東京商工リサーチの集計では、2025年の飲食業の倒産は1,002件で、物価高が原因のものが136件(前年比126.6%増)、人手不足が原因のものが55件(同161.9%増)と、前年より大きく増えました。東京商工リサーチは、小規模な店ほど価格転嫁が難しく、費用の上昇を吸収できないと指摘しています。

居酒屋の状況はどうですか

協会の調査で「パブレストラン/居酒屋」の売上は前年比104.0%で、外食全体の107.3%を下回りました。店舗数は前年を上回り始めていて、下げ止まりの傾向が見られたとされています。

ここに出てくる数字は中央線沿線の店のものですか

いいえ。協会の会員社の集計と、全国の飲食業の倒産の集計です。沿線の個人店の実態を直接表すものではありません。

個人経営店とチェーン店では何が違いますか

個人経営の店は店主の裁量が大きく、品書きや接客に個性が出やすいです。チェーン店は品質と価格が安定しやすい反面、店ごとの違いは小さくなります。

老舗と新規開業店はどちらを選べばよいですか

その日の目的しだいです。安定した味を求める日は老舗、新しい体験を求める日は開業して間もない店、という選び分けがしやすいです。

代替わりした店は味が変わりますか

店によります。先代の味を守る方針の店もあれば、少しずつ変えていく店もあります。変わったかどうかは、通っていた人がいちばんよく知っているはずです。

経営者の情報はどこで確認できますか

公式サイトやSNS、地域の情報誌で紹介されている場合があります。店頭の沿革の表示も手がかりになります。

異業種から参入した店にはどんな特徴がありますか

内装やサービスに、飲食店の外で培った発想が見えることがあります。運営の安定ぶりは店によって差があるので、一括りには言えません。

個人経営店を長く応援するにはどうすればよいですか

続けて通うのがいちばんです。店の発信を見ること、予約を守ること、口コミを残すことも、店の助けになります。

後継者がいない店はどうなりますか

後継者がいないことを理由に閉める店もあれば、従業員や別の経営者が引き継いで続く店もあります。事業承継の相談先については飲食店の事業承継の記事に書いてあります。

新規開業店を見分けるにはどうすればよいですか

店の案内に開業の年が書いてあれば、それがいちばん確かです。SNSの投稿をさかのぼったり、内装や看板の新しさを見たりするのも一つの目安です。

経営者インタビューはどこで読めますか

地域の情報誌やグルメメディア、店の公式SNSに載ることがあります。開業の経緯やこだわりが書いてあれば、店選びの参考になります。

値上げの張り紙を見たら

2025年の外食は、値上げで客単価が上がって売上は伸び、倒産は30年で初めて1,000件を超えました。伸びの中心は客単価で、費用の上昇を吸収しきれない小さな店が苦しい、という見立てです。この構図を頭の隅に置いておくと、なじみの店の張り紙が、値上げの知らせというより「まだ続けます」の知らせに見えてきます。

出典

  • 日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和7年(2025年)年間結果報告」(2026年1月26日。全体と業態別の売上・店舗数・客数・客単価、価格改定、消費の選別、客数の頭打ち感、店舗数の下げ止まり傾向)(2026年11月3日確認) https://www.jfnet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2026/01/nenkandata-2025.pdf
  • 東京商工リサーチ「2025年 飲食業倒産 初の1,000件超」(件数、規模別、原因別、業種別、実質賃金についての指摘)(2026年11月3日確認) https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1202301_1527.html
  • 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年11月分結果速報」(実質賃金の前年同月比)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r07/2511p/dl/pdf2511p.pdf

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