業界・制度動向

中央線沿線の飲食店における求人事情の傾向

求人票の時給の欄に1,280円と書いてあったら、それは東京都の最低賃金そのものです。2026年10月1日からこの額になりました。引き上げの幅は54円です。

この線を知っているだけで、時給の欄が目盛りつきで読めるようになります。下限ぴったりなのか、少し上なのか。

ただ、時給の数字だけでは分からないことが多すぎます。午後10時を回ると何が変わるのか、高校生や留学生には先に決まっている枠があるのか、採用のときに何が示されるのか。そのあたりは労働基準法の条文と出入国在留管理庁の案内に書いてあります。

午後10時を境に変わること

決まり 中身 条文
深夜の割増 午後10時から午前5時までの間に働かせた場合、2割5分以上の率で計算した割増賃金を払う 労働基準法第37条第4項
18歳未満の深夜業 満18歳未満の人を午後10時から午前5時までの間に働かせてはならない。交替制の満16歳以上の男性などの例外がある 第61条第1項
時刻の例外 厚生労働大臣が必要と認めるときは、地域または期間を限って、この時刻を午後11時と午前6時にできる 第61条第2項
交替制の例外 交替制で働かせる事業は、行政官庁の許可を受けて、午後10時30分まで働かせ、または午前5時30分から働かせることができる 第61条第3項

深夜の時給が昼より高くなるのは、第37条第4項の割増が乗るからです。だから夜の時給が高く見えても、それだけで待遇のよい店とは限らない、と見ておくほうが冷静に比べられます。割増のない昼の時給で店どうしを比べると、差が見えやすくなります。

18歳未満の制限は、応募する側にとっては探し方の問題です。午後10時を回るシフトには原則として入れないので、高校生なら閉店が午後10時より前の店や、昼の時間帯の募集から探すほうが早く見つかります。第61条第3項の例外は交替制の事業の話で、その店に行政官庁の許可があるかどうかは外からは分かりません。

18歳未満の時刻が午後11時と午前6時に動く第2項の例外もありますが、これは厚生労働大臣が地域や期間を限って定めるものです。自分の働く店に当てはまるかどうかは、店か労働基準監督署に聞いてください。

留学生に先に決まっている枠

「留学」の在留資格で資格外活動の包括許可を受けた場合、働けるのは1週間について28時間以内です。在籍する教育機関の長期休業期間は、1日について8時間以内になります。出入国在留管理庁の案内にそう書いてあります。

働く場所にも決まりがあって、風俗営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業が営まれている営業所で行う活動は、許可の対象外です。応募する店がどの営業に当たるかは、店に聞くのが早いです。

週28時間は意外と短くて、1日5時間を5日でもう25時間です。シフトを組むときに、この枠を先に店へ伝えておくと話が早いです。

採用のときに示されるもの

労働基準法第15条第1項は、使用者が労働契約を結ぶときに、賃金、労働時間その他の労働条件を労働者に明示しなければならない、と定めています。賃金や労働時間などは厚生労働省令で定める方法で明示する決まりです。面接で聞いた話と、採用のときに示された条件が食い違っていたら、ここを手がかりに聞き直してみてください。第2項には、明示された条件が事実と違う場合に労働者は即時に契約を解除できる、ともあります。示されたものは手元に残しておくと安心です。

研修期間の時給は別に聞く
求人票の時給が研修中も同じかどうかは、求人票だけでは分からないことがあります。研修期間の長さと、その間の時給は面接で聞いて、採用時の明示でもう一度確かめると漏れがありません。

求人をどこで探すか

探し方 使いどころ 別に聞いておくこと
求人サイト・アプリ 時給や時間帯で絞って見比べたいとき 研修中の時給、交通費の上限
店頭の張り紙 店の雰囲気や混み具合を見てから決めたいとき 紙に書いていない条件(まかない、制服)
店のSNS 普段の営業の様子を知りたいとき 正式な労働条件は採用時の明示で
知り合いの紹介 シフトの実情を先に聞きたいとき 紹介者を通さず店に直接聞きたい条件

どれか一つに絞る必要はなくて、サイトで見つけた店の前を通ってみる、という組み合わせがいちばん失敗が少ないと思います。張り紙の店は、応募の前に客として一度入ってみるのも手です。混む時間に店がどう回っているかは、働く側になってから知るより先に見ておくほうがいい。

面接で聞く順番

  1. シフトの決め方(固定か、希望を出す方式か)と希望休の出し方
  2. 研修期間の長さと、その間の時給
  3. 交通費の上限と、まかないの有無
  4. 閉店時刻と、閉店作業を含めて何時に帰れるか。終電に間に合うか
  5. 制服や靴が貸与か自前か

まかないは店ごとに違います。求人票に書いていなければ面接で聞いてください。聞きにくく感じるかもしれませんが、働く側としては当然の確認です。

この順番にしているのは、断る理由になりやすいものから聞くためです。シフトが合わなければ、あとの項目を聞いても意味がありません。

入ってから気づきやすいこと

  • 求人票の時給は研修後の額で、研修中は別の額だった。研修中の時給を面接で聞く
  • 閉店作業が長くて、終電に間に合わない日があった。閉店作業を含めた退勤時刻を聞く
  • 夜の時給が高いと思って入ったら、昼の時給は下限ぴったりだった。割増のない時給で比べる
  • 高校生が夜の求人に応募して、午後10時以降に入れないと分かった。第61条の時間帯を先に知っておく
  • 留学生が週28時間の枠を伝えずにシフトを組んで、枠を超えそうになった。最初に枠を伝える
  • 面接で聞いた条件と、採用時の明示が違っていた。第15条の明示を根拠に聞き直す

応募ボタンを押す前の疑問

高校生でも夜の時間帯に働けるか

働けない時間帯があります。労働基準法第61条第1項で、満18歳未満の人を午後10時から午前5時までの間に働かせることは禁じられています(交替制の満16歳以上の男性などの例外があります)。閉店が午後10時より前の店や、昼の時間帯の募集から探してください。

留学生は週に何時間まで働けるか

出入国在留管理庁の案内では、「留学」の在留資格で資格外活動の包括許可を受けた場合、1週間について28時間以内(在籍する教育機関の長期休業期間は1日について8時間以内)です。風俗営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業が営まれている営業所での活動は許可の対象外です。

採用されたら労働条件はどう示されるか

労働基準法第15条第1項で、使用者は労働契約を結ぶときに賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定められています。示された内容は手元に残して、面接で聞いた話と照らし合わせてください。

深夜の時給が高いのはなぜか

労働基準法第37条第4項で、午後10時から午前5時までの労働には2割5分以上の率で計算した割増賃金を払うことになっているからです。深夜の時給は割増が乗った額と考えると、店どうしを比べやすくなります。

まかないはどの店舗にもあるか

あるかないか、内容も店ごとに違います。求人票に書かれていなければ、面接で聞くのが確実です。

求人票に書かれていない条件はどう確認すればよいか

面接で、シフトの決め方、研修中の時給、交通費の上限、まかない、閉店作業を含めた退勤時刻、制服の貸与を順に聞くと漏れが少ないです。採用が決まったら、第15条の明示を受けて内容を照らし合わせてください。

深夜の時刻はどこでも午後10時からか

原則は午後10時からです。18歳未満の時刻については、労働基準法第61条第2項で、厚生労働大臣が必要と認めるときは、地域または期間を限って午後11時と午前6時にできることになっています。割増賃金の第37条第4項にも同じような定めがあり、交替制の事業は第61条第3項で、行政官庁の許可を受けて午後10時30分まで働かせることができます。自分の店に当てはまるかは、店か労働基準監督署に聞いてください。

時給の欄を読み直す

1,280円という下限、午後10時からの割増、18歳未満と留学生の枠、採用時の明示。この四つを知ってから求人票を見ると、同じ数字が違って見えます。

条件は面接で聞いて、採用のときに示されたものと照らし合わせる。それだけで、入ってから驚くことはだいぶ減ります。

出典

  • 東京労働局「東京都最低賃金」(2026年10月1日から時間額1,280円、54円の引き上げ)(2026年11月3日確認) https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第15条第1項、第2項(労働条件の明示)、第37条第4項(深夜の割増賃金)、第61条第1項〜第3項(深夜業、時刻の例外、交替制の例外)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049
  • 出入国在留管理庁「『留学』の在留資格に係る資格外活動許可について」(1週間について28時間以内、長期休業期間は1日について8時間以内)(2026年11月3日確認) https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00003.html
  • 出入国在留管理庁「資格外活動許可」(風俗営業、店舗型性風俗特殊営業、特定遊興飲食店営業が営まれている営業所での活動は対象外)(2026年11月3日確認) https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/16-8.html

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