業界・制度動向

中央線沿線でシニア向けメニューを用意する店の広がり

品書きの隅に「小盛りできます」と一行あるだけで、親と一緒に入れる店かどうかの見当がつく。そういう一行を目で探してしまう人は、きっと少なくないはずです。

ただ、シニア向けと掲げた献立の中身は店ごとに違います。量を減らす店、やわらかく煮る店、入口の段差をなくす店。同じ言葉を使っていても、力の入れどころは一つではありません。だから店を選ぶときは、言葉より中身を見たほうが早いです。

65歳以上が3,624万人という前提

総務省統計局が敬老の日に合わせて出した統計トピックスNo.149(令和8年9月20日)によると、2026年9月15日現在の推計で65歳以上の人口は3,624万人で、前の年より2万人増えました。総人口に占める割合は29.6%。過去最高です。

およそ10人に3人。

全国の数字ですが、店の側から見ても、少数の特別なお客さんとは言いにくい数です。小盛りや椅子の高さに気を配る店があるのも、この数字を見ればうなずける話だと思います。

項目 数字
65歳以上の人口 3,624万人
前年との差 2万人の増加
総人口に占める割合 29.6%(過去最高)

工夫は四つに分けると比べやすい

店の取り組みを見比べるときは、量、やわらかさ、味付け、設備の四つに分けて見ると、どこに力を入れている店なのかが見えてきます。

見るところ 店の工夫の例 こんな日に効く
量 小盛り、ハーフサイズ、量を選べる定食 少しずつゆっくり食べたい日
やわらかさ 長く煮込む、刻む、骨を抜く 噛む力や飲み込む力に不安があるとき
味付け 薄味の献立、たれの別添え、汁物の量の調整 塩分を控えたい日
設備 入口の段差、椅子の高さ、店内の明るさ、トイレの位置 体の負担を減らしたい日

一つの店が二つ三つを兼ねていることもあります。きっちり仕分けるより「この店はどれが得意か」くらいの見方で十分です。

四つのうち、いちばん見落とされやすいのは設備だと思っています。小盛りは品書きを見れば分かりますが、入口の段差や椅子の高さは店に着くまで分からない。電話で聞いておく値打ちがあるのは、むしろこちらのほうです。

やわらかさは言葉で伝える

店で「やわらかめに」と頼むとき、店とこちらで思い浮かべるかたさが同じとは限りません。箸でほぐれるくらいなのか、歯ぐきでつぶせるくらいなのか。言葉にしないと厨房には届きません。

市販の介護食品には目安があります。日本介護食品協議会が「ユニバーサルデザインフード」という自主規格を設けていて、かたさや粘度で分けた4つの区分がロゴマークと一緒にパッケージに表示されています。家で使っている食品の区分を覚えておいて、店で「これくらいのかたさなら食べられます」と伝える手もあります。店が同じ物差しで答えられるとは限らないので、箸でほぐれるか、といった言葉も添えておくと通じやすいはずです。

飲み込みに不安がある人の食事は、主治医や管理栄養士の指示が先です。ここに書いているのは店選びの目安で、医学の助言ではありません。

味付けは数字より頼み方

塩分を控えたいとき、店に数字で頼んでも厨房は困るかもしれません。定食なら汁物を残す、漬物を外してもらう、たれを別添えにしてもらう。こういう頼み方なら、店も応じやすそうです。

国の健康づくりの方針(健康日本21(第三次))にも食塩摂取量の目標は掲げられていますが、それは一日の平均の話で、外食の一食にそのまま当てはめる物差しではありません。持病で塩分の制限がある人の量は、医師の指示に従ってください。

個人的には、塩分の相談は「薄味で」の一言より「汁は少なめで、たれは別で」のように、何をどうするかで言うほうが通りやすいと思います。

頼みごとと法律の関係

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)の第8条第2項は、事業者に対して、障害のある人から社会的障壁を取り除く必要がある旨の意思の表明があった場合、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならない、と定めています。事業者の定義は「商業その他の事業を行う者」で(第2条第7号)、飲食店を営む人も入ると読めます。この条文が話しているのは障害のある人のことで、年齢そのものではありません。

段差で手を借りる、品書きを読み上げてもらう。こうした頼みごとが条文の言う配慮に当たるかどうかは場面によって違い、負担が過重なときまで求める決まりではありません。できないと言われたら、代わりの方法がないか店と話してみる余地はあります。ここに書いたのは条文の要点で、個別の事案への法的助言ではありません。

法律を持ち出すまでもなく、電話で一言頼めば済むことも多いと思います。高齢の人すべてに当てはまる条文ではありませんが、こういう決まりがあると知っていると、電話の声は少し出しやすくなります。

電話で聞いておくこと

  1. 小盛りやハーフサイズがあるか。品書きに書いていなくても応じる店があるので、聞くだけ聞く
  2. やわらかめの調理を頼めるか。頼めるなら、どのくらいのかたさかを具体的に
  3. 入口の段差、席が椅子か座敷か、トイレの場所
  4. 混む時間帯。空いている時間のほうが、個別の頼みに応じてもらいやすい
  5. テイクアウトや宅配の有無。店で食べにくい日の代わりになる

全部を聞く必要はありません。一緒に行く人に合わせて二つか三つで足ります。

量より座りやすさ
シニア向けというと小盛りを思い浮かべがちですが、席の高さ、店内の明るさ、噛み切りやすさのほうが当日の居心地を決めることが多い気がします。小盛りだけを掲げる店と、席や通路まで整えている店では、使い勝手がかなり違います。

こういうときに困る

  • 小盛りがあると思って入ったら、その日は通常の量だけだった。品書きの記載も電話で念のため聞く
  • 座敷しかなく、立ち座りがつらかった。椅子席の有無は先に聞く
  • 入口の段差を見落として、車椅子で入れなかった。古い建物は段差があることがあるので、幅と段の有無を聞く
  • 混む時間に行って、個別の頼みを言い出しにくかった。時間をずらす
  • 汁物も漬物も付く定食で、塩分が気になった。汁を残す、漬物を外してもらうと頼む

出かける前に家族から聞かれること

シニア向けメニューは高齢者しか注文できないのか

誰が頼めるかは店ごとの設定です。小盛りややわらかい料理を年齢に関係なく選べるようにしている店もあるので、品書きに条件が書いていなければ聞いてみてください。

介助が必要な場合でも利用できるか

店の構造や人手で応じられる範囲が違うので、電話で先に相談しておくのが確実です。障害のある人が配慮を求めたとき、事業者は負担が過重でない範囲で必要かつ合理的な配慮をしなければならないと、障害者差別解消法第8条第2項に定められています。

車椅子でも入店できる店は多いのか

建物によって入口の段差や通路の幅が違います。出かける前に段差の有無とトイレの広さを聞いておくと、当日に引き返さずに済みます。

価格は通常メニューと変わるのか

小盛りを少し安くする店もあれば、量に関係なく同じ価格の店もあります。設定は店ごとなので、品書きか電話で見てください。

予約は必要か

混む時間を避けたいときや、味付けや席について相談したいときは、先に予約か電話をしておくと当日が楽です。頼みごとがある日ほど、予約の値打ちが出ます。

こうした店はどうやって探せばよいか

店の公式サイトや品書きで小盛りなどの記載を見て、書いていないことは電話で聞くのが確実です。

子どもや家族連れと一緒に利用できるか

小盛りややわらかい料理は子どもにも合うことがあり、三世代の食事にも使いやすいと思います。座敷か椅子席か、席の形は先に聞いておいてください。

アレルギーや持病がある場合も相談できるか

個別の制限にどこまで応じられるかは店によります。材料や調理法は先に店に聞いてください。塩分や食事の量の制限は、医師の指示が優先です。

宅配やテイクアウトにも対応しているのか

テイクアウトや宅配をしている店もありますが、有無も範囲も店ごとに違います。店で食べにくい日の代わりに使うなら、電話で聞いておくのが早いです。

席に着くまでに

65歳以上が3,624万人、総人口の29.6%。量、やわらかさ、味付け、設備の四つで店を見て、頼みたいことは電話で具体的に。障害のある人への配慮には法律の定めもある。それだけ覚えておけば、親と出かける日の店選びはだいぶ気が楽になるはずです。

出典

  • 総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」統計トピックスNo.149(令和8年9月20日。2026年9月15日現在の推計で65歳以上人口3,624万人、前年に比べ2万人増、総人口に占める割合29.6%で過去最高)(2026年11月3日確認) https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1490.html 本文 https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topi149_01.pdf
  • e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(平成25年法律第65号)第2条第7号(事業者の定義)、第8条第2項(事業者の合理的配慮の提供)(2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000065
  • 内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」(合理的配慮の案内。令和6年4月1日から事業者にも義務化のパンフレット)(2026年11月3日確認) https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
  • 厚生労働省「健康日本21(第三次)」(令和5年厚生労働省告示第207号。目標項目の一つが食塩摂取量の平均値)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21_00006.html
  • 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフード」(自主規格、かたさや粘度による4つの区分とロゴマーク。区分の詳しい値は協議会の案内で確かめてください)(2026年11月3日確認) https://www.udf.jp/ 説明のページ https://www.udf.jp/outline/udf.html

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