持って行った瓶に豆を入れてもらって、はかりの数字で値段が決まる。量り売りの会計はそれだけのことのようでいて、はかりの側にはかなりきっちりした決まりがあります。包装しない食品を扱う店には衛生管理の義務もありますし、袋に印刷されていたはずの表示が付かないこともあります。
ごみが減る、使い切れる量で買える。量り売りのよさはそこにあると思いますが、店を選ぶ目安は少し別のところにもあります。計量法と食品衛生法、食品表示基準の条文を手がかりに、どこを見れば安心して買えるかの話です。
どんな買い方なのか
量り売りは、商品をあらかじめ包装せず、買う人が欲しい量を量ってもらって買う売り方です。バルク購入は、大きな単位で仕入れた商品を小分けにして売る形まで含めて、そう呼ばれることがあります。
容器は店によって違います。持参した瓶や袋に入れてくれる店もあれば、店が用意した紙袋や瓶で渡す店もあります。初めての店なら、持って行く前に確かめておくほうが無駄足になりません。
向く商品と、そうでもない商品
| 商品の種類 | 特徴 | 量り売りとの相性 |
|---|---|---|
| 乾物・穀類・豆 | 常温で保存でき、傷みにくい | とても高い |
| 香辛料・茶葉・コーヒー豆 | 少しずつ使い切りたい、鮮度が味に出る | 高い |
| 油・液体調味料 | 専用の容器と計量の設備が要る | 中くらい |
| 洗剤などの日用品 | 詰め替えと同じ考え方で使える | 高い |
| 生鮮食品・惣菜 | 温度管理と期限の管理が要る | 限られる |
生鮮や惣菜が「限られる」なのは、温度と期限の管理が要るからです。乾物やスパイスのように常温で日持ちするものから始めると、量り売りのよさが分かりやすいと思います。
はかりに検定証印があるか
重さが値段になる以上、はかりの正確さがそのまま公正さです。計量法第16条は、検定証印か、経済産業大臣の指定を受けた製造者が付ける表示(法律はこの二つを合わせて検定証印等と呼びます)のない特定計量器を、取引や証明に使ってはならないと定めています。使うために持っておくことも対象です。検定証印等に有効期間が定められた計量器では、期間を過ぎたものも同じ扱いになります。店で使うはかり(非自動はかり)の多くは、施行令第2条でこの特定計量器に入ります。
家にあるキッチンスケールで会計をしてもいいのか、と考えると分かりやすくて、検定証印等のないはかりは会計に使えません。第19条には、政令で定める特定計量器を取引や証明の計量に使う人は定期検査を受けなければならない、ともあります。非自動はかりはこの政令の対象で(施行令第10条)、合格したものには定期検査を行った年月入りの定期検査済証印が付きます(第24条)。
計量する側の心構えも書いてあります。第10条は正確に計量するよう努める義務を定めていて、第3項では、都道府県知事などの勧告を受けた人がそれに従わなかったときは、その旨を公表できるとしています。努力義務にしては、なかなか厳しい後ろ盾です。
店頭のはかりに検定証印等や定期検査済証印が付いているかは、量り売りの店を選ぶときの分かりやすい目印の一つです。見えにくい位置にあることもあるので、気になったら聞いてしまうのが早いです。
包装しない食品の衛生管理
包装されていない商品は、店の管理がそのまま品質に出ます。厚生労働省によると、令和3年(2021年)6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組むことになりました。法律の根拠は食品衛生法第51条で、小規模な営業者などは取り扱う食品の特性に応じた取組とされています。原材料の入荷から出荷までの中で危害の要因を把握して、特に重要な工程を管理し、記録を残していく手法です。
とはいえ、買う側が店の記録を見るわけにはいきません。見られるのは店先の様子だけです。
店先で見ておきたいこと
量り売りの什器にふたやカバーがあるか、容器の消毒について掲示があるか、店の人が手袋や器具を使い分けているか。持参容器を受け付けるかどうかも、衛生管理の方針が表れるところだと思います。受け付けない店が悪いということはなく、そういう線の引き方をしている店だと分かります。
袋に書いてあったことが、ここには書いていない
スーパーの袋入りの商品には、名称、原材料名、内容量、期限、保存方法などの表示が付いています。食品表示基準第3条第1項が、食品関連事業者が容器包装に入れられた加工食品を販売するとき(設備を設けて飲食させる場合を除く)に、表示を義務づけているからです。
量り売りで容器包装に入れずに売る場合は、この規定の対象になりません。袋入りの商品と同じ表示が付いていないことがあるのは、そのためです。ほかの決まりや店の扱いまでは、この条文からは分かりません。
そのぶん、原材料や産地、アレルギーに関わることは、店の掲示や店の人の説明で確かめることになります。食物アレルギーがある人は、原材料と、同じ什器でほかの商品を扱っていないかを買う前に聞いておくと安心です。
家に帰ってからの保存
| 商品 | 保存のしかた |
|---|---|
| コーヒー豆・茶葉 | 光と湿気を避け、密閉容器で。香りが落ちやすいので少量ずつ買う |
| 香辛料 | 密閉して冷暗所に。湿気るとかたまりやすい |
| 乾物・穀類・豆 | 密閉容器に移し、虫が入らないようにする |
| 油・液体調味料 | 容器の口を清潔に保ち、直射日光を避ける |
どれも、買った量を早めに使い切るのが基本です。保存の目安を教えてくれる店なら、初めての回で聞いておくと次から迷いません。少なめに買って、足りなければまた行く。そのくらいの買い方が、この売り方には合っていると思います。
プラスチックの法律が目指していること
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」の第1条には、プラスチック使用製品の使用の合理化、市町村による再商品化、事業者による自主回収と再資源化を進めることが目的として書かれています。
容器を持って行って必要な分だけ買う買い方は、使い捨ての包装を家に持ち込まない買い方です。法律が量り売りそのものを勧めているわけではありませんが、向いている方向は近いように思います。
初めての店での順番
- 店の発信で、持参容器を受け付けるか、容器の洗浄や消毒の決まりがあるかを確かめる
- 容器を持って行く場合は、会計の前に容器だけの重さ(風袋)を量ってもらう
- 欲しい量を「グラム」か「金額」で伝える
- 保存のしかたと、いつまでに使い切るとよいかを聞いておく(包装されていないため、期限の表示が付かないことがある)
風袋を量ってもらう一手間を忘れると、容器の重さまで買うことになります。小さな瓶でも、積み重なると気になる差です。
買う前に引っかかりそうなこと
持参する容器に決まりはありますか
店ごとに違います。清潔で乾いた、ふたのできる容器が基本です。受け付けない店もあるので、初めての店では先に確かめてください。
量り売りの値段は正確ですか
取引に使う特定計量器のはかりは、計量法第16条により検定証印等のあるものに限られ、政令で定めるものは第19条の定期検査も受けることになっています。店頭のはかりに検定証印等や定期検査済証印が付いているかが目安の一つです。
価格は包装された商品より安くなりますか
包装の費用はかかりませんが、量って渡す手間がかかるので、必ず安くなるとは限りません。必要な分だけ買えて使い残しを減らしやすいことが、いちばんの利点だと思います。
期限はどう確かめればよいですか
包装されていない食品には期限の表示が付かないことがあるので、買うときに店の人に保存のしかたとあわせて聞いておくと確実です。
瓶を持って出かける前に
検定証印等のあるはかり、ふたのある什器、聞けば答えてくれる店の人。この三つがそろっていれば、表示が付いていなくても心細くありません。持参容器の可否と風袋の扱いを先に聞いておけば、初めての店でもレジの前で慌てずに済みます。
出典
- 計量法(平成4年法律第51号)第10条(正確な計量、勧告と公表)、第16条(使用の制限)、第19条(定期検査)、第24条(定期検査済証印)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/404AC0000000051
- 計量法施行令(平成5年政令第329号)第2条(特定計量器)、第10条(定期検査の対象)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/405CO0000000329
- 食品衛生法(昭和22年法律第233号)第51条(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000233
- 厚生労働省「HACCP(ハサップ)」(令和3年6月1日から原則すべての食品等事業者がHACCPに沿った衛生管理に取り組む旨の案内)(2026年11月3日確認) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html
- 食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第3条第1項(容器包装に入れられた加工食品の横断的義務表示)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/427M60000002010
- プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和3年法律第60号)第1条(目的)(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000060
惣菜の量り売りの話は中央線沿線の量り売り惣菜店、賢い使い方とおすすめの選び方に書いてあります。
店と環境の話をもう少し
食べ残しや包装ごみをめぐる店の工夫を書いた記事です。