業界・制度動向

中央線沿線で使える食品ロス削減アプリの仕組みと活用

461万トン。農林水産省が出した2024年度(令和6年度)の推計で、日本で1年に出た食品ロスの量です。家庭から224万トン、事業者から237万トン。事業者の分のうち、外食産業からは70万トンが出ています。

閉店前に残りそうなパンや惣菜を、割引で予約して受け取りに行く。食品ロス削減アプリと呼ばれるものは、大まかに言えばそういう仕組みです。利用する側はスマホで予約して店に寄るだけで、この461万トンのほんの一部に手を貸せることになります。

仕組みは一つ、細かい決まりは店とアプリごと

流れを言葉にすると三段階です。店が残りそうな商品を出品する。利用者がアプリで予約する。決められた時間に店へ行って受け取る。

ただ、この三段階の中身はアプリと店によって違います。中身を選べるのか詰め合わせなのか、支払いはどこで済ませるのか、受け取りの時間にどれだけ幅があるのか。どれも登録の前に、そのアプリの案内と店ごとの出品の説明で確かめるところです。

店の側から見れば、捨てる前に売り切る機会になります。利用者の側から見れば、定価では手が出なかった店の商品を試す入口になる。どちらが主役というより、両方が得をするときだけ回る仕組みだと思います。片方だけが我慢していると、出品も予約も続きません。

中身が決まっていない商品は、決まっていないまま受け取る
詰め合わせ形式の商品は、受け取るまで中身が分からないことがあります。アレルギーのある人は、受け取りのときに店の人へ直接聞くのがいちばん確かです。アプリの画面にある情報だけで判断しないほうが安全です。

何のために使うかで、向く使い方が変わる

同じアプリでも、節約のために使うのか、新しい店を知るために使うのかで、選ぶ商品も見る時間帯も変わります。

使い方 向いている人 先に考えておくこと
日常の節約 帰宅の途中に店へ寄れる人 受け取り時間に間に合う日かどうか
新しい店の開拓 普段入らない店を試したい人 好みに合わない商品が入ることもある
何品か一度に買う 一回の受け取りで何品か持ち帰りたい人 詰め合わせは中身を選べないことがある
休日の散歩のついで 時間に余裕のある日に使う人 出品があるかどうかはその日まで分からない

節約が目的なら、受け取り時間に合わせて動ける日に使うのが前提です。間に合わなくて受け取れなかった、では割引の意味がなくなります。開拓が目的なら、外れても笑える金額のものから始めるのが気楽だと思います。

休日に散歩がてら、という使い方は、出品がなければ散歩だけで終わります。それでも構わない日に向いています。

予約してから受け取るまでに起きがちなこと

  • 出品に気づいたときには売り切れている。通知を入れておくか、見る時間を決めておく
  • 受け取り時間を過ぎてしまう。遅れそうなときに店へ連絡できるかどうか、アプリの案内で確かめておく
  • 詰め合わせの中身が想像と違う。通常の品書きと同じものが入るとは限らない
  • キャンセルの決まりを読まずに予約する。規約はアプリごとに違う
  • 持ち帰ってから食べるのが遅くなる。閉店間際の商品は、その日のうちに食べる前提で予約する

どれも大きな失敗ではありません。ただ、最初の一回でつまずくと、そのまま使わなくなりがちです。一回目は受け取りやすい店で、持ち帰ってすぐ食べられるものを選んでおくと続きやすいです。

10月は法律で決まった削減月間

食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)は、2019年10月1日に施行されました。目的は第1条にあって、国や地方公共団体などの責務を明らかにし、基本方針を定めることなどによって、食品ロスの削減を総合的に推進することとされています。

この法律は「食品ロスの削減」を、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組と定義しています(第2条第2項)。ここでいう「食品」は、飲食料品のうち医薬品、医薬部外品、再生医療等製品以外のもの(第2条第1項)。パンも惣菜も当然この中に入ります。

第9条は、国民の理解と関心を深めるため、10月を食品ロス削減月間、10月30日を食品ロス削減の日と定めています。国と地方公共団体は、この期間に趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとされています(第9条第3項)。

アプリで残りそうな商品を引き取るのは、この法律がいう「社会的な取組」に、いちばん軽い形で加わることだと思います。10月に限る必要はありませんが、削減月間は始めるきっかけとしてちょうどいい時期です。

事業者から出る食品ロスを数字で見る

家庭からの分と事業者からの分は、ほぼ半々です。事業者の分をさらに分けると、こうなります。

区分 2024年度(令和6年度)推計
食品ロスの総量 約461万トン
家庭系 約224万トン
事業系 約237万トン
事業系のうち食品製造業 約110万トン
事業系のうち食品卸売業 約9万トン
事業系のうち食品小売業 約48万トン
事業系のうち外食産業 約70万トン

アプリが主に関わりそうなのは、小売業の48万トンと外食産業の70万トンのうち、閉店前に残る部分だと思います。製造業の110万トンは、店先の客からは遠い数字です。数字の大きさに比べると、一人が受け取るパン一袋はほとんど誤差でしょう。それでも店が出品を続けるかどうかには予約の入り方も関わるはずで、誤差の積み重ねが棚の商品の行き先を変えることはあります。

農林水産省の報道発表(2026年6月30日)によると、事業系の食品ロスは2000年度と比べて57パーセント減っていて、国は基本方針を見直し、2030年度までに60パーセント削減する目標を新たに置きました。見直す前の目標は50パーセント削減でした。同じ発表によると、2024年度の事業系は前年度より6万トン増えています。目標まであと3パーセント分でも、一直線に減っているわけではないようです。閉店前の棚に残った商品をどう動かすかも、その残りの分に関わる話です。

使う前に気になること

アプリで何が届くか事前にわかるのか

店の出品の書き方によります。中身を明かさない詰め合わせ形式の商品もあるので、画面の説明を読んで、分からなければ予約の前に店へ聞くのが確かです。

キャンセルはできるのか

規約はアプリごとに違います。予約する前に、そのアプリのキャンセルの決まりを読んでおいてください。

支払いはどのように行うのか

アプリの中で先にカード決済を済ませて、受け取りのときは画面を見せるだけ、という形があります。払い方はアプリごとに違うこともあるので、登録のときの案内で確かめてください。

受け取り時間に遅れたらどうなるのか

指定の時間を過ぎると受け取れない場合があります。遅れそうなときに店へ連絡できるかどうかは、アプリの案内で先に見ておくと落ち着いて動けます。

登録している店の見つけ方は

アプリの中の地図や検索で、今いる場所の近くの出品を探せるものがあります。どの店が出品しているかは日によって変わるので、使う駅を決めて何日か眺めてみると様子がつかめます。

品質に問題はないのか

閉店間際の商品なので、持ち帰ったらその日のうちに食べる前提で予約するのが安心です。期限の表示があれば受け取りのときに見ておいてください。

アレルギー表示はされているのか

画面の表示だけで判断せず、受け取りのときに店の人へ直接聞いてください。詰め合わせは中身が受け取るまで分からないことがあります。

複数のアプリを併用する意味はあるのか

登録している店はアプリごとに違うことがあるので、二つ入れておくと見つかる範囲は広がります。通知が増えて煩わしく感じるなら、一つに絞っても困りません。

初めて利用するときに気をつけることは

少量のもの、受け取りやすい店から始めるのが無理がありません。受け取りの時間と場所を予約のときに確かめておけば、一回目のつまずきはだいぶ減ります。

次に閉店前の棚を見るとき

家庭から224万トン、事業者から237万トン。この数字を知ってから閉店前の棚を見ると、値引きのシールが少し違って見えます。アプリはその棚の商品を、捨てられる前に誰かの夕食にする道具です。

店の側の工夫は、中央線沿線でフードロス削減に取り組む飲食店の工夫に書いてあります。受け取る側と出す側、両方の事情を知っておくと、アプリの画面の向こうにいる人が見えてきます。

出典

  • 農林水産省「食品ロスとは」(令和6年度推計値。食品ロス量461万トン、事業系237万トン、家庭系224万トン、事業系の内訳として食品製造業110万トン、食品卸売業9万トン、食品小売業48万トン、外食産業70万トン)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/161227_4.html
  • 農林水産省 報道発表(2026年6月30日付。事業系食品ロスの2000年度比57パーセント削減、前年度比6万トン増、2030年度までに60パーセント削減の目標と見直し前の50パーセント)(2026年11月3日確認) https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/260630.html
  • 食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)第1条(目的)、第2条第1項(食品の定義)、第2条第2項(食品ロスの削減の定義)、第9条(食品ロス削減月間、食品ロス削減の日)、施行日2019年10月1日(e-Gov法令検索、2026年11月3日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/501AC1000000019
  • TABETE公式サイト(アプリの仕組みの一例として。アプリ内の決済、引き取りの時間の設定、受け取り時に画面を見せる流れ)(2026年11月3日確認) https://tabete.me/

店の選び方の記事

沿線の店の変化や、持ち帰りと出前の記事です。

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